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THE JOLT EFFECT ~営業プロセスにおいて顧客が”決断できない”という人間の本質とどう向き合うか~

こんにちは。Magic MomentでAccount Executiveとマーケティング担当をしています、渡邊(@Yusuke_W8)と申します。2023年明けましておめでとうございます。22年はQ4は社内の膨大なオンボーディングコンテンツの作成に勤しんでいたため、noteはお休みしていました。この話はまたどこかでできたらと思うのですが、やっぱり対外的な発信によって得られる気づきとかが少し減ってしまっていたので、続けていかなくちゃ、ということで23年は週1投稿を目標に頑張っていきたいと思います!今年も皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

新年一発目は、以前からnoteに投稿させていただいている洋書の解説シリーズをやっていこうと思います。もしよければ過去のnoteのリンクも貼らせていただきますのでお読みいただけたら嬉しいです。

今回解説するのは「The Challenger Sale」(邦題:チャレンジャーセールス)や、「The Challenger Customer」(邦題:隠れたキーマンを探せ)でおなじみ、マシュー・ディクソン「THE JOLT EFFECT」です。22年9月に出版されたので、まだ邦訳はないと思います。

本書を読んでの所感を先にお伝えすると、タイトル通り、爆発的な成果に繋がりうる考え方だなという感想を持ちました。Challenger Salesが比較的受注確度が高い案件に対しての話だったのに対して、本書の内容は全案件に対してインパクトできるものであり、実行できた時の影響度合いがとても大きいのではないかとワクワクしました。営業オタクとしてはかなりわくわくする内容ですね。

では早速、解説していきましょう!

THE JOLT EFFECTとは何か?

本書は、他のマシューの本と同じく、営業について書かれた本になりますが、これまでの著書と違うことは、コロナ以降営業現場においても一般的になった、ZoomやTeams、Webexといったオンライン会議ツールに残された会話ログを数十社分集めて分析した結果が書かれているということです。セールステックは近年目覚ましい成長を遂げていますが、こうしたデジタル化により、”営業”という仕事の再定義・進化がこれまでとは次元の違うスピードで起こっていくことを予期させる本でした。

さて、本題に入っていきましょう。
一般的に、営業の結果は案件化して以降、”受注”と”失注”に分けられると思います。

”顧客が決断できないこと”を解決することのインパクトは大きい

実は、これまで失注扱いにされてきた多くの案件が”顧客が決断できない”ことによって起きているということ、そしてこの状態をいかに解消していくか、その方法論を、”JOLT EFFECT”と銘打って解説していくのが本書の大筋になります。

なお、JOLTとは本書の各章に合わせた造語です。

J:Judge the Level of Indicision
O:Offer Your Recommendation
L:Limit the Exploration
T:Take Risk Off the Table
THE JOLT EFFECT

みなさんも商談をする中で、こんな経験はありませんか?

顧客の担当者が現状に課題認識を持っており、その解決策として自社のソリューションを提案したところ、"いいね"、という合意をもらったにも関わらず、その後案件がスタックしたり、なぜか音信不通になってしまった。
案件がスタックしてしまう、あるある

こうした状況の背景には、”顧客が決断できない”という状態があると言います。そしてこの状態の案件の割合はとても多く、顧客が何もアクションをしなかった案件のうち、44%が現状満足が理由だったのに対し、56%が決断できなかったことに起因しているということがわかりました。過半数以上ですね。ここを改善できれば業績に大きくインパクトするということはお分かりいただけると思います。

なぜ顧客は決断することができないのか

では、そもそも顧客はなぜ決断することができないのでしょうか。マシューはバイヤー担当者の恐れが引き起こしていると考え、3つの要因を挙げています。

Valuation problems(評価するのに問題がある)
Lack of information(情報の不足)
Outcome uncertainty(成果の不確実性)
THE JOLT EFFECT:P19

評価するのに問題がある

一つ目の恐れは、本当に自分の判断や評価の仕方は正しいのか?という不安です。序列がつけづらい判断軸を複数並べた場合はこれに該当するでしょう。例えば、コストが安い方を選ぶべきなのか、導入のリードタイムが短い方を選ぶべきなのかといった複数の評価軸がある際に、どちらを優先すべきなのかという問題や、いくつものソリューションを同時に使うのであれば、どういった組み合わせが良いのかわからない、といった問題です。また、契約プロセスに3年もかかるようなものであれば、その前の2年で柔軟性高くなにかできなかったか?といった類の選択肢についてどう評価するか、といったものも含まれます。

情報の不足

二つ目の恐れは、判断に足る情報を得ているのか?という不安です。営業はたくさんの時間を使い、情報をどんどん送りつけてきます。購買担当者は、第三者の意見としてコンサルタントを雇ったりもします。彼らとの会話の中で、情報の空白に気づき、それを埋めようとして、リサーチやデモを要求していくでしょう。どこまでいってもこの不安が尽きることはありません。

成果の不確実性

そして最後の恐れは、本当にその成果がでるのか?という不安です。営業担当者がプロダクトやソリューションでできることを述べたところで、実際にそれが実現できる自信を持てるかというと、そうではありませんね。必ずそこにはギャップが発生します。


そしてこれらの恐れの厄介なところは、10%の改善可能性より、10%の失敗可能性のほうを人は大きく感じてしまい、前に進むことができなくなってしまうのですね。まさに、現状維持バイアスそのもののようなお話でした。

現状維持バイアス
現状維持バイアス(status quo bias)とは、 未知のものや変化を受け入れず、現状維持を望む心理作用 です。 この理論は、1988年にリチャード・ゼックハウザーとウィリアム・サミュエルソンによって提唱されました。未知のものや変化を受け入れると、現状の安定した状態を「損失」するリスクがあるため、それを回避しようとする心理が働いているというものです。
SPROCKET 現状維持バイアスに陥る心理とは?対策やマーケティングとの関係を解説 より

実際に、現状維持バイアスは84%が商談においてネガティブな影響を与えるそうです。そう考えると、もはやこれは”人間の本質”として一般的に人間に備わっている性質であり、どんな業界、どんな商材、どんな営業プロセスにおいても向き合わなければならない問題であるということがわかると思います。

では、具体的にどうやってこの問題と向き合うべきなのでしょうか。

決断できない状態をどう克服するか

本書では、6つの具体的な方法を挙げていました。

決断できない状態であるかをジャッジしよう
あなたのおすすめを提案しよう
顧客が情報の海に溺れることのないようにしよう
リスクを減らす提案をしよう
エージェンシー問題を乗り越えよう
JOLT-ingなカスタマーのロイヤリティを獲得しよう
THE JOLT EFFECTで述べられた6つの方法

それぞれ、解説していきましょう。

決断できない状態であるかをジャッジしよう

意思決定できない幅と深さを捉え、顧客が意思決定できるかで案件の選別をしましょう。

先に述べたように、決められないというのはごくごく一般的な人の性質になります。ですから、これをなんとか決めさせられるように労力を使う前に、案件を見極め取捨選択をし、決断できない状態にある場合は、優先順位を下げるようにしましょう。

まずは、購買担当者が決断できる人なのかどうかを見極めましょう。営業担当は決断を迫るような表現を使い、決断とともに共に不確実性の中に飛び込める人なのか?というのを確認していきます。例えば、

「弊社のソリューションは御社の課題解決にお役立てできると思います。ですが、インパクトを得るためにはかなり大きなプロジェクトとして1年がかりで取り組んでいく必要があると思います。もちろん簡単にとはいかないでしょう。それでもご一緒できるのであれば全力でお答えしますがご決断できますか?」

といった表現で、大変さも理解した上で決められるか?をしっかりと確認していきます。

また、構造的に決められないという状況もあるでしょう。例えば並行するプロジェクトの結果次第で判断になるケースなどです。こういった状況はいつ・どういう材料が揃ったら検討できるのかを正確に把握し、無理矢理案件を進めることのないようにしましょう。

重要なのは、毎回の商談、案件の進捗状況を振り返るときに、”なぜ決断させることができなかったのか”を反省していくことです。この積み重ねが、取捨選択の精度、そして商談でのアプローチを改善していくことにつながります。

あなたのおすすめを提案しよう

プロアクティブに顧客を導き、顧客の判断を支持するようにしましょう。

決断できない理由の一つとして、先にValuation problems(評価するのに問題がある)というものを挙げました。これを解消するために、あなたのおすすめを提案することをしてください。

営業担当は、”あなたのニーズを理解させてください”というような受け身の態度ではなく、”こちらがあなたが求めているものです”と、なんらかの選択肢に導いていくようなプロアクティブな姿勢でのぞみましょう。この姿勢は、商談の勝率を受け身であったときの18%から、44%まで引き上げます。ハイパフォーマーは、顧客が評価方法に対しての困惑を表明する前に、何度かおすすめを提案することをしていました。

また、トップパフォーマーは”私があなただったらこの選択肢をとります”や、”こうすれば道をあやまることはない”といった表現をよく使います。
顧客の状態を正確に把握し、信頼できる専門家としての立場から個人的なおすすめとして提案を行い、顧客の選択を擁護する立場をとるのです。この顧客の選択を擁護するアプローチにより、商談の勝率は19%から33%へと大きく改善します。

何が欲しいのか?を顧客へ聞いたり、複数の選択肢について延々とどちらがよいかということを話すのはやめて、まずは顧客の状態を診断することに集中しましょう。おすすめを提案せずに診断に終始している場合では勝率は14%であったのに対し、しっかりとおすすめを提案している場合では36%にもなりました。きちんと提案につながる診断を早期に行うことで、顧客が決断できるように導くことができるのです。


顧客が情報の海に溺れることのないようにしよう

情報の総量をコントロールし、反論を予測し、率直で過激な意見も言えるように訓練しましょう。

従来から、営業は傾聴の姿勢が重要であると言われ、営業と顧客の会話量は3:7ということはよく言われていますが、本書によると実際は会話量自体の差ではそこまで勝率は変わらないようです。

営業担当者の会話量
受注・・・58%
失注・・・52%
THE JOLT EFFECT 104

むしろ、話を遮ったり、1ラリーの中で話しすぎてしまうくらいの商談のほうが勝率が高いというデータも出ていました。これは、重要なのは会話量ではなく、どういったコミュニケーションをしているかという質のほうがよっぽど重要だということを示しています。話を遮ることが多いということは、冗長に説明を長々としているわけではなく、対話の中で反論や異論を行っているということで、顧客の検討に必要な情報のみに絞ってやりとりがされている状態です。

みなさんも何か買い物をする時に、時間があって無限に重箱の隅をつつくようにいろいろな情報をネットで調べて比較し、結局買えなかったみたいな経験はないでしょうか?判断に重要でない情報は、多すぎるとかえって判断ができなくなってしまうのです。

意思決定フェーズで結論を出すための論拠を組み立てている段階において、情報量が40-70%の段階では勝率が42%であるのに対して、情報量が70%を超えると、勝率は16%にがくっと下がります。ですから、冗長に説明をすることはやめて、顧客が評価し判断するのに必要な範囲に情報を止めるようにしましょう。

また、先日ご紹介したThe Qualified Sales的な観点だと、意思決定に際して無限に時間を使って情報を収集しようとするタイプの顧客担当者は、いってしまえば”ヒマ”な状態なので、忙しくさまざまなプロジェクトを力強く推進するChampionタイプの担当者ではない、ということもできます。

顧客の購買担当者、営業担当者双方に判断に必要な情報をピンポイントで理解し、その点について議論を重ねられるかが非常に重要です。


リスクを減らす提案をしよう

期待値を設定し、リスクを軽減する提案をします。

営業から提案されたサービスを導入した際に、効果が得られないかもしれないという不安は常に顧客の担当者につきまといますが、この不安は”リスクへを減らす提案”をし、うまくマネージすることで、導入への自信をより高めることができます。

導入後に効果が出なかった時のことを考えて、期待効果を設定せずふわっとさせたままクローズする営業もいるでしょうが、これは勝率が大きく下がるのでやめた方が良いです。

効果の期待値を設定することでの勝率の違い
期待値を設定しなかった場合の勝率・・・20%
期待値を設定した場合の勝率・・・51%
THE JOLT EFFECT P120

そしてここで設定した期待値を達成できないとしたらどんな要因が挙げられるのか、それを事前に防ぐ方法を提案するようにします。

ダウンサイドリスクを防ぐ方法を提案した場合の勝率の違い
提案しなかった場合・・・22%
提案した場合・・・46%
THE JOLT EFFECT P125

これにより、さらに顧客の担当者は成功確率が高いと感じるようになり、自信を持って案件を進めてくれるようになります。


エージェンシー問題を乗り越えよう

顧客と営業担当者では利害が異なります。情報の非対称性が必ず存在する故に、営業担当が非効率な提案をしてくるのではないか?と顧客は不安を抱きます。例えば、不要なオプションやIDを売りつけてくるのではないか、といった不安です。これは、顧客が決断できない大きな一つの要因となります。

エージェンシー問題
エージェンシー問題(Agency Problem)とは、依頼人(Principal、プリンシプル)と代理人(Agent、エージェント)の間に生じる利害対立問題のことをいう。 代理人が依頼人の意向通りに業務を遂行するとは限らないことから生じる非効率性を、エージェンシーコストと呼ぶ。
みずほ証券 ファイナンス用語集

エージェンシー問題については瀧田さんのnoteがとてもわかりやすかったので、ぜひよく理解されたい方はこちらをお読みください。

どこまでいってもこの情報の非対称性は消えないため、エージェンシー問題は消えないと思います。ただ、SaaSというビジネスモデルが一般になった現在では、この問題は以前よりはだいぶ良くなりつつあるのではないかと感じています。顧客、営業双方のマインドとして、同じ目指す成果を達成できなければチャーンになるという考えが一般になりつつあるため、利害のベクトルが限りなく近い方向を向け流ようになってきているからです。

とはいえこの問題を乗り越えるのは営業の力。本書では、エージェンシー問題を乗り越えるための営業の振る舞いについて書かれています。

・競合の提案にもポジティブなフィードバックをする
・なんだったら競合を紹介する
・わからないことは素直に聞き、同時にミスリードしたくないのでということを伝える
THE JOLT EFFECT Chapter7

これらの振る舞いは、情報の非対称性をできるだけ少なくし、決断しやすくなるようサポートしているという安心感を顧客が抱くことにつながります。

自社のプロダクトやサービス、営業担当自身の力量を正しく認知し、価値創出できる範囲と、そうでない範囲を率直に顧客に伝えられること。こういったマインドがとても重要になります。


卓越した勝率:JOLT-ingなカスタマーのロイヤリティを獲得しよう

営業が最も”決断できない状態”をなんとかするために有効な手段は、現状維持でよいのか?とほじくり返すような問いかけを行うことです。これにより、顧客の購買担当者の努力を3倍まで引き出すことができます。

過去決めることができずにずるずるきてしまったことが、現状の機能不全を起こしていることを伝えてみましょう。顧客は、過去の過ちを繰り返すまいと、幅広く情報を営業担当者に要求し、営業担当がだらだらと説明することをさせなくします。明確に個人的なおすすめを聞き、リスクを減らす有効な方法を聞くでしょう。こうした問いかけは、顧客が決断しやすい状況をつくり、結果的に、顧客がサービスを導入した際の努力を減らすことでしょう。最終的には、顧客のこうした振る舞いによって、顧客体験が改善し、顧客との中長期での関係性を向上させる確率を劇的に上げてくれるのです。

本章の内容は、コーチングを経験した私が個人的に感じている、”トップクラスの営業は優秀なコーチングスキルを持っている”という仮説にもとても合致しており、納得感のある内容でした。

営業担当はできるだけ、顧客のすべての情報を網羅しハンドリングしなければならないように感じますが、実際問題それを行うには多大な労力が必要になります。情報を持っている顧客のChampionが動いてくれる方が何倍も早く案件は進んでいきます。

想像してみてください。顧客のChampionにあまり主体性がなければ、たとえ起案までしてくれたとしても、Economic Buyerから言われた懸念点を解消するためだけに都度営業に質問をしてくるような動きになるでしょう。伝書鳩的な動きですね。そんなことをしていたら、どこかで検討はストップしてしまうと思いませんか。

一方、コーチングで主体性を持ったChampionは、1秒でも早く改革を進めるためにEconomic Buyerやその他のステークホルダーの意向を汲みながら、意思決定を早め、成功確率を上げるための質問を営業にしてくるでしょう。こうした立ち回りこそ、真のChampionの振る舞いであり、この振る舞いを加速できる問いかけをできるコーチングスキルこそが、最も営業の生産性をあげる武器になりうると考えています。

JOLTな営業組織にするために

ここまでどう決断できない状態を克服するかの手段について解説してきました。ここからは、皆さんの組織にこのスキルを実装するための考え方について解説していきましょう。

顧客が”決断できない状態”がどれだけのコストを発生させるか?

まずは、顧客が決断できない状態が商談を前に進めるのにどれだけの影響を与えるのかを理解すること、それぞれの営業にどのエリアのスキルを改善するようコーチングするかを見定めることです。

CRMでその影響をはかるのがまずは良いでしょう。ほとんどの組織で40-60%の商談が”決断できない状態”によって失注となっていました。客観的にみると、生産性の高い組織とそうでない組織で異なるかと思いきや、業界やマーケットによってこの値は異なることがわかりました。セールスサイクルが長くなるエンタープライズセールスや行政向けの営業ではより決断できないことによる影響が大きくなり、ミッドマーケットからSMBや個人向けの商材では価格や契約書の長さといったその他の要素のほうが重要な要素になります。

基準が決まったら、営業マネージャーはメンバーの成果分布をどう変えていくかを考えます。いわゆる2-6-2といったパーフォーマンスの分布があるとき、多くのマネージャーはローパフォーマーの2に対してのコーチングを行いますが、もっとも効果を発揮するのはミドルパフォーマーの6に対してコーチングをすることです。このゾーンに質の高いコーチングを行うことで19%もパフォーマンスが改善するという結果になりました。

では、それぞれの営業のスキルを評価するにはどうしたらいいのでしょうか。多くの企業は手作業を避け、Call Intelligenceのような会話分析ツールを導入したがりますが、8割の企業は失敗に終わっています。本書では以下のような理由を挙げています。

会話分析ツールの導入が失敗した理由
・インサイトを抽出するのが難しい
・インサイトに対して効果的な打ち手を打てない
・オーナーシップを持つのに非常にコストがかかる
THE JOLT EFFECT P168

本書では、Win-Loss interview(受注理由、失注理由に対してのインタビュー)を顧客に行うことで、営業担当を評価ができるといいます。失注理由の詳細を理解できなければ、なぜ決断できないかを理解するのはより難しいからです。

具体的には、下記のようなインタビューをしてみると良いです。

1,あなたの意思決定プロセスを表現するとどれが一番当てはまりますか?
 a.我々から購入した
 b.競合から購入した
 c.我々がそのプロダクト/ソリューションが必要であると納得させられなかった
 d.他の理由でスタックしてしまった
2,その意思決定をすることはどれくらい簡単(難しかった)でしたか?
3,あなたの状況に対して、どのプロダクトやサービスの選択肢がベストだと明確になっていましたか
4,購買プロセスの中で、得られた情報量に満足していましたか?
5,プレゼンした期待成果に対してどれくらい自信を持っていますか?
6,我々とご一緒した期間、我々が最大の関心事となれていましたか?
7,あなたの意思決定に関して、まだ議論しきれていない点があれば、その理由はなんですか?
Sample Win Loss Questions - The JOLT Effect

これらの質問は、本書でここまで述べられてきた決断できない状態を克服するための振る舞いを担当営業が体現できていたかを聞いており、できていればポジティブな解答を得られることでしょう。できていないポイントを明確にし、振る舞いを改善していくようにしましょう。


異なる営業環境に合わせられるようにしよう

アウトバウンドの営業はインバウンドの営業に比べ、より個人的なおすすめを提案している率が高く、インバウンドでは40-50%であったのに対して、60-75%にも昇りました。ですが、決断できない問題は特定のGo-to-Market戦略に紐づくものではなく、人間の性質の問題です。シンプルなインバウンド営業であっても、複雑でリードタイムの長いアウトバウンド営業であっても、どんな商材であっても、多くのカスタマーが嵌まってしまう故、全ての営業が積極的にコントロールすべき問題なのです。

こうした営業環境の違いで発生するコミュニケーションの違いは、顧客の温度感や対応の違いからくるバイアスで、自然発生的に差が出ているものだと思います。こうした見えないバイアスに気づき、インバウンドの営業であってもアウトバウンド以上に本書で述べられている振る舞いを実行できるかで、爆発的な成果が出るものと思います。


JOLT EFFECTを出せる営業体制を構築しよう

採用はもちろんJOLTなスキルをもったチームを組成するのに、とても重要な選択肢です。下記のような質問を採用時にしてみることで、候補者のスキルを評価してみましょう。

・購買担当者がいくつもの選択肢があり困っているときに、よくどんなアプローチをとりますか?
・意思決定プロセスでトレードオフが発生するとき、あなたは購買担当者にどのような支援をしますか?
・アジェンダを組むときのやり方を教えてください
・購買担当者が会うたびに新しく違う反論をしてくるとき、あなたはどう対処しますか?
・優柔不断な顧客に対し、どういった振る舞いをしますか?
・長期での会社の可能性を描くのと、現状で実現可能な絵を描くのと、どちらが良いと思いますか?
・購買担当者が逃げ腰になっているとき、どうやってクロージングを迫りますか?
Interview Guide: JOLT Effect skillsより一部抜粋

ただ、採用もオプションの一つであり、落とし穴に嵌まらないようにするには時間がかかります。決断できないのは人間の本質だからです。従来のやり方を続けてきた営業に、適切なトレーニングとコーチングを行うことで、改善していきましょう。たとえば、コーチングでの問いかけとしては以下のようなものがあります。

J:パイプラインを絞りましょう。案件の中で、顧客が決められなさそうなため、距離をおいた方が良いものはありますか?もしくは、決められるがあまり案件としてフィットしていなさそうなものはありますか?それを追いかけますか?
O:ロープレをしましょう。私は購買担当者で、さまざまな選択肢で迷っています。どれを選ぶかは決めていない状態ですが、あなたはどうしますか?
L:初めての商談をする相手に対して、その購買担当者がこれまで辿ってきた検討過程に想いをはせていますか?
T:ロープレをしましょう。私は4ヶ月検討を一緒にやってきた購買担当者です。ですが直近では逃げ腰になり、ミーティングもキャンセルされ延期されました。以前設定したものから改訂した見積もりと提案を行うとき、どんな変更を行いますか?
Coaching Guide The playbook for overcoming indecisionより抜粋

こうした問いかけを行いながらマネージャーは営業組織を育成し、圧倒的な成果を残せる組織にしていきましょう。

まとめ

THE JOLT EFFECTの解説、いかがでしたでしょうか。コロナ以降の大量のオンライン会議ツールのデータをもとに導き出された考え方で、納得度がとても高い内容であるとともに、成果に絶大なインパクトを残せる考え方だと思っております。

本書を読んで、改めてマシューのチャレンジャーセールスや、The Qualified Saleの内容の内容を見返したときに、それぞれの本のテーマの捉え方が自分の中で変わっていることに気づきました。現在では下記のような捉え方をしています。

チャレンジャーセールス:インサイトとなる”事業価値”そのものを思考する
The Qualified Sale:難解なBtoBセールスを進める”組織力学”の理解
THE JOLT EFFECT:決断できないという”人間の本質”に向き合う
2023年1月時点の各書籍に対しての私の捉え方

そして、3書籍ともに共通するのが顧客への圧倒的な想像力と、コーチングを中心としたコミュニケーションの力を高めることに尽きるということでした。

モノやサービスが溢れ、簡単には売れない時代、マーケティングやPLG(PLGについての解説はこちらで)で営業は不要だという言説も溢れています。日本だけに閉じれば人口が減り、さらに世界的に営業職の平均給与が高騰していく中、構造的には営業という存在が減っていくことは確実です。そんな中で、これらの書籍のメッセージを受け取ると、本当の意味で自社と顧客を理解し、社会を変える原動力になっていくことを営業はより求められていくようになるのではと感じています。

テクノロジーがこうした思想の一部をサポートし、また思想が進化することでテクノロジーでサポートできる領域が増える。これにより、社会をよりよくするプロダクトやサービスがより早いスピードで広がっていく。本書の取り組みは内容もさながら、こうした今後の社会の変化を予期させる内容として、非常に刺激的な内容でした。ぜひ興味のある皆様はご一読ください。

1万文字をまた超えてしまいましたが、お付き合いいただいた皆様、ありがとうございました。時々こうした長めの発信をしつつ、もう少し短めの発信も織り交ぜていこうと思いますので、もし気に入っていただけた方はフォロー&Likeいただけると嬉しいです。ここまで読んでくださり誠にありがとうございました!


追伸

ちょっとだけ宣伝を!
弊社Magic MomentではSales Engagement Platformと呼ばれるSaaS「Magic Moment Playbook」および、「CS-BPO」と呼ばれる営業BPOサービスを中心に、幅広く事業拡大を進めています。営業でお困りの方はぜひお声がけください。

今期は私もwebinarに力を入れて取り組んでいきますので、よければぜひ下記リンクよりバックナンバーも含めてみていただけると嬉しいです。こんなテーマでwebinarやってほしい!などもご意見もぜひいただけると嬉しいです。


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