見出し画像

CEO Flow解説:事業状況に合わせてPull Managementで事業を成長させる方法

こんにちは。Magic MomentでAccount Executiveをしています、渡邊(@Yusuke_W8)と申します。

以前noteに投稿させていただいた洋書の解説シリーズが非常にご好評いただいておりまして、ありがたいことにたった1週間で3000PV近くもご縁をいただけたので、またも苦手な英語と向き合いながら新しい投稿を書いてみることにしました。もしよければそちらのnoteのリンクも貼らせていただきますのでお読みいただけたら嬉しいです。

今回解説するのはSalesforceの黎明期にインサイドセールスを立ち上げたアーロン・ロスの
CEOFlow: Turn Your Employees Into Mini-CEOs / Aaron Ross」
です。日本語だと「CEOFlow:従業員をミニCEOに変える方法」みたいなタイトルになると思います。

ちなみに彼の著書の中には、営業・インサイドセールス必読の『成功しなきゃ、おかしい 「予測できる売上」をつくる技術』(実業之日本社)といった名作がいくつかあります。(営業関連の皆様はこっちも必読です!)CEO Flowは日本語訳版がなかったと思いますので、今回テーマに選びました。

アーロン・ロス
スタンフォード大学を卒業し、リースエクスチェンジ社(LeaseExchange.com)を立ち上げるも失敗。優れた営業組織の構築方法を学びたいと願い、セールスフォース・ドットコムに入社。インサイドセールスチームをたった1人で立ち上げ、セールスフォースの収益に大きく貢献する。現在は、プレディクタブル・レベニュー・ドットコム(PredictableRevenue.com)の共同CEO。著書に『成功しなきゃ、おかしい 「予測できる売上」をつくる技術』(実業之日本社)がある。同書および本書は「シリコンバレーの成長バイブル」と評されている。

ダイヤモンド・オンラインより

私は本書を読んで、スタートアップだけではなく、大手企業も含めて、権限移譲をどのように行い、それを実現するためのカルチャーやその浸透に向けて何をしなければならないのか?という点の参考になると感じました。

上記のような”権限移譲””カルチャー”に悩んでいらっしゃいそうな、フェーズが変わるタイミングの事業にいらっしゃる皆様に、ぜひ読んでいただけたらと考えています。

CEOフローとは

早速解説をしていきましょう。

フローとは

まず最初に、フローとはどういう状態かについて。この概念は「フロー体験 喜びの現象学」の中でチクセントミハイにより提唱されました。状態としては下記のように定義されています。

人間がそのときしていることに、完全に浸り、精力的に集中している感覚に特徴づけられ、完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような活動における、精神的な状態をいう。

フロー:wikipedia

この状態に至ると、下記のような感覚でことにあたることができるようになります。スポーツの世界では”ゾーン”と呼ばれている感覚ですね。

・専念と集中、注意力の限定された分野への高度な集中。(活動に従事する人が、それに深く集中し探求する機会を持つ)
・自己認識感覚の低下
・活動と意識の融合
・状況や活動を自分で制御している感覚。
・時間感覚のゆがみ - 時間への我々の主体的な経験の変更
・活動に本質的な価値がある、だから活動が苦にならない。

フロー:wikipedia

この状態に至るためにはいくつかの条件が(全てではありませんが)必要と言われています。明確なゴールがあり、直接的かつ素早いフィードバックがあること(自分の行動の結果が間接的にしかわからない、または10年先に現れる、といった形だと難しいという意味です)、そしてスキルレベルとチャレンジのバランスが取れていることで自己効力感を感じれる状態であることなどが挙げられます。下記の図の右上の状態ですね。

チクセントミハイ:フローのメンタルモデル図(wikipedia)

本書の中ではチクセントミハイの主張として、組織をフロー状態にするためのいくつかの提案が書かれています。

・クリエイティブな空間を提供する:椅子、ピンwall、いくつかのチャート。テーブルはいらない。仕事は主に立って動きながら行われる
・遊び場をデザインする:情報をインプットするためのチャート、フロー図、プロジェクトのサマリ、狂気、安全基地(普通のことも発言できる)、結果を書く壁、オープンなトピックなど
・共通のヴィジョン、ゴール、バリューに向かうこと
・プロトタイピングと実験
・生産性を上げるための図表化
・個人が問題というよりむしろ機会に感謝すること

CEO Flow P73

そして、組織的なフロー状態を実現できているときは、政治的なふるまいや好き嫌いによる判断が存在せず、ルーティーンもちゃんと改善されていくといいます。

もちろん、組織に完全などはあり得ないと思いますので、上記は”理想の状態”と捉えていただいて差し支えはないと思います。けれども、組織のケイパビリティと、ほどよくストレッチが効いたゴールへみんなが主体性と自己効力感をもって向かえている、そんな状態(いわゆるモメンタムがある状態)と言えるのではないかと思いますので、ひとつの目指すべき姿としては考えるに値すると思います。

誰もがCEOのように考える

CEOのようにそれぞれの構成員が考え振る舞うと、(視座を引き上げ意思決定を行える状態にする)意思決定がそれぞれのレイヤーで行われ、問題が全てエスカレーションされる状態から、各セクションで解決されていくようになります。この状態によって組織がフロー状態になっていくことを、本書ではCEOフローとしています。

ケーススタディで描かれるAES社では、CEO Flowを実現するために、
①mini CEOを育てること
②蜂の巣状の組織構造をつくること

の2点を挙げています。それぞれ解説していきましょう。

ケースからみる手法①mini CEOを育てるために、意思決定をメンバーにさせること

会議などのサポートはあれど、全ての意思決定は最終的には一人の意思決定者が行うべきです。これはポジションにかかわりません。リーダーは伝統的な役割や会社全体の意思決定に時間を使うため、細かな意思決定はできません。”それって私の時間を使うべきもの?”というのがよくある最初の反応でしょう。

会社を危機にさらすことなく、個人のレベルをひきあげるために、”アドバイスプロセス”というシンプルで、議論的な方法をとることができます。

上司に”メンバーや同僚に聞いてください”とAskするのではなく、”役員などではない普通の”意思決定者が、意思決定に影響しうるリーダーや同僚にアドバイスを求めるようにします。考えを主導し、問題を発見し、状況に密接に関わる人が意思決定者となるのです。

意思決定の前にアドバイスを求め、より大きな問題にはより大きな粒度でアドバイスを与える必要があります。このプロセスが回り始めると、下記のような影響が起きるようになります。

アドバイスプロセスで起きる5つのこと
1、好んで意思決定に関わろうとする人々を惹きつけます。心の声を聞いてもらえたと感じ、課題に対しての自覚が芽生えます
2、アドバイスを求めるプロセスは謙虚さをもって会社とチームの強い関係を構築します。欧米的な会社文化の”私には必要ない”という孤立主義のかわりに、コミュニケーションやチームワークを醸成します
3、ミニCEOに最も重要とされるのは意思決定のスキルです。スポーツのように実践の中で上達します。意思決定の練習の機会を与えなければ、上達することはありません
4、良い意思決定は課題の近くにいる人間によって行われることで為されます。コミッティーでの意思決定は棄却されます。”ラクダとはコミッティーでデザインされた馬です”というフレーズを聞いたことがありますか?
5、意思決定者は仕事をより楽しみます。自分達の運命を自分でコントロールできるからです。組織にとっての喜びの総量は、たくさんの部門の人々によって行われる意思決定の量だと考えます。意思決定は創造性や才能を刺激します

  AES社のケーススタディ”アドバイスプロセスの中で起きる5つの重要なできごと” P91


ケースからみる手法②蜂の巣状の組織構造をつくること

”蜂の巣状”とは、ミツバチが個別に動きながらも、蜜を巣に届けるために調和の取れたやり方で活動しているというところから着想を得て名付けたものです。タスク単位ではなく、ビジネス単位で組織を再構成し、それぞれのビジネスに必要な要素(予算、スケジュール、補償、支出、購買、品質管理)などでレポートをさせるようにしたのです。

また、あまり感謝されず、事業部の問題を正確には理解していないと感じていた、コーポレート横断での人事やIT部門を減らすことで、逆に各部門がビジネスの全体像を理解するようにもなりました。

結果として従来型とは違う、下記のような結果がもたらされるようになります。

ケーススタディで書かれているAES社の”Joy at Work Approach” P94

また、上記を実現するには10の重要な原則を守っていく必要があるといいます。

1、根拠づけに自分達の能力を使える機会があれば、自分達の行動に責任をもち意思決定をしよう。そうすればときめくような仕事を経験できる
2、ビジネスの目的は株主の利益を最大化することではなく、世界を経済的に持続可能な形にしていくことに、自分達のリソースを捧げることである
3、歴史的にもっとも楽しい職場を創造することにチャレンジしよう
4、マネジメントや、組織図や、JDや、時給制度を減らしていこう
5、公平性とはつまり皆の多様性を扱うということである
6、原則とバリューが全ての意思決定の指針となる
7、他のステークホルダー(株主、顧客、サプライヤーなど)を自分と同じか自分以上の存在として公平に位置付けなさい
8、意思決定の前にアドバイスを求めなさい。アドバイスを求めなければ、あなたは解雇されるでしょう
9、良い意思決定は全てのステークホルダーを幸せにすることはできない。なぜならどの個人も組織も、彼らがしたいようにはできないからだ
10、情熱と、謙虚さと、愛をもって先導なさい

ケーススタディで書かれているAES社の”Top10 for Joy at Work Approach” P95

ここで書かれているAES社の手法ですが、私は非常に似たやり方で事業を伸ばした例を身近で知っています。私の古巣のリクルート、Hotpepper事業を一気に拡大した際の手法です。詳しくはぜひHotpepperミラクルストーリーをお読みいただければと思います。

私が入社した時にはすでに各編集部の横断的機能は本社に集約されていましたが、当時はPL責任を各編集部で負うなど、各編集部がかなり独立性高く運用されており、かつ経営未経験の先輩方が手あげ制で全国に編集部を立ち上げていくという形をとり、各編集部がナレッジをシェアしあいながら事業を大きく伸ばしていきました。のちに、現場営業としても、営業推進として横断機能も担当していた私からすると、各編集部があの量の仕事を執行していたというのは狂気とも感じるのですが、こうした運用の結果、事業が大きく伸び、またのちにたくさんの経営者がここから輩出されていったのでしょう。

CEOとマネージャーが意識するべき3つのポイント

上記のような権限移譲を行う手法でCEOフローを実現していくときに、CEOを含めたマネジメントが意識するべきは3つです。

Trust:信頼性
Transparency:透明性
Alignment:整合性

 CEOとマネージャーが意識するべき3つのポイント P102

原文ままですが、上記3つの詳細は下記になります。

Trust:信頼性

私たちは信頼の欠如により多くの時間を費やしています。例えば方針をコントロールしたり、システムをトラッキングしたり、”何してるの?”というミーティングを開いたり。契約書は長くて複雑、二次的な推測や社内のゴシップに時間を浪費するなんて全く無駄です。成長にもつながりません。でも、忘れてはいけないのは”会社が従業員にそうするよりも、従業員は会社を信頼していない”ということです。あなたと会社を信頼してほしければ、次のような少し違うやり方をするとよいでしょう。

例えば、誰かがあなたのところに来てあなたが賛成しない、もしくは別のやり方でやってほしいと思うようなアイデアを持ってきたとしましょう。速射的に”no”と言わないようにする、もしくはやってほしいことを伝えるようにしてください。説明をし、何が起こるかわかるようにしましょう。どこかに行ってしまわないようであれば、きっと少し勇気づけられ感謝をすることでしょう。小さなステップですが信頼を獲得するのは時間がかかります。それでいて、簡単に失ってしまうものなのです。

CEO Flow P101

Transparency:透明性

透明性は現代的な信頼の一つのあり方です。信頼性はそれぞれにとって相対的なものですが、透明性は絶対的なものになります。

透明性はミスコミュニケーションや混乱を減らし、意思決定の質をあげ、信頼性を増幅します。従業員へ隠すべきと感じる情報はどれくらいあるでしょう?従業員から情報を隠すことのコストはどれくらいのものですか?逆に彼らに知らせることによって得られるベネフィットや、得られる信頼はどれくらいありますか?パラノイアを手放しましょう。

CEO Flow P102

Alignment:整合性

横断的な目的のために働いている場合、動機づけられたメンバーがいるということだけでは充分な助けにはなりません。整合性は共通のゴールを持つということを意味します。共通のヴィジョンがあるかどうか、それを全員が理解しているかということです。CEOや創業者、役員でもそうであるように、誰もが推測的に認識しています。よくある問題は推測によるコミュニケーションミスで発生します。

・共通のバリューに則って仕事をしているか?
・共通の、整合性のとれたカルチャーはあるか?
・役員と同じボートに乗っていると感じるか?もしくは別の特権や報酬によって別物であると感じるか?

週や月単位でときおり起きるゴールの変更は、会社にいるめいめいがキャッチアップし整合性をとれるよう、透明性をもった状態でつたえられていますか?wikiやダッシュボードはアップデートされ、遠隔でも情報がきちんと効果的にシェアされるようになっていますか?

CEO Flow P103

これらは一朝一夕でなるものではなく、進捗はベイビーステップです。それだけ、マネジメントにかかる負荷、工数は大きいものになるでしょうから、辛抱が必要です。

CEOやマネージャーにとって、これらを全て実行するのはとても説明コストが高く、限られたリソースでは難しい場合もあります。またフェーズによっては物理的に無理という場合もあると思います。例えば、上場してからはインサイダーの観点から、従業員に対しての情報開示はかならず制限されます。どれだけ透明性が高い運営がされていたとしても、創業当初からこうした情報に触れ続けてきた古株メンバーからしたら、情報がわからなくなり意思決定がしづらくなったり、寂しい、信頼されてないのではという感情的な気持ちも起きてくることでしょう。

ベストエフォートをしていくことはもちろん、事業のフェーズによりここの絞りがゆるくなったり広くなったりしていくことも含めて、事前にメンバーに伝えていき、影響を最小限にとどめていく必要があるということでしょう。

CEOフローシステム

ケースと意識すべきポイントの解説を経て、最後にフローシステムの全体像について紹介されています。まずは、前提として、CEOが陥りがちないくつかの神話から解き放たれるための示唆から始められています。

従業員の力を最大化することについての5つの神話

1、強く、支配的で、答えを持っていなければならない
2、従業員はビジネスでおこっていることについて、知っている必要はない(知るべきではない)
3、個人的な喜びや楽しみをビジネスを進めるために犠牲にしなくてはならない
4、失敗や負けることは悪いことだ
5、働けば働くほど、ビジネスはうまくいく

CEO Flow P115

従業員の力を最大化するために、CEOが意識すべきことは、こういった神話でがんじがらめにされることではなく、次のような役割になります。

CEOとしての役割

透明性
オープンネス
協力的であること
許すこと/承認すること
直接的で明快であること
コミットするが、入れ込むな(計画をもち、軽やかに持つこと)

CEO Flow P116

マネジメントとして求められるものよりも、直接的であることや、入れ込みすぎないという点に言及されているのが印象的でした。CEOのリソースは有限です。その中で、無駄な説明コストを払わずに直接的にどう伝えるか、というのは非常に重要ということだと思います。上記の役割をもとに、従業員がリードする職場をつくるにはどうしたらよいのか?その原則が下記になります。

従業員がリードする職場をつくる7つの鉄則

1、従業員のために働こう-彼らはあなたのために働くのではない
2、サプライズや叱責のないカルチャーを創ろう
3、関係ない人たちからのしがらみを断ちましょう
4、従業員がつまづくことを許容しましょう
5、ベイビーステップで前進しよう
6、コーチやメンターをもとう
7、同じ考えを持ったCEOとのコミュニティを見つけましょう

CEO Flow P116

ここで述べられているのは、一朝一夕では進められないということ。また、この考え自体が、短期的なスピードとはトレードオフにあるということが言えると思います。適切な事業フェーズ、タイミングで、上記の原則をもとに、下記のステップでひとつずつ歩を進めていきましょう。

CEOフローは一歩ずつ進める

1、CEOが明確で研ぎ澄まされている
2、新しい冒険を選ぶ
3、シェアドビジョン(組織の共通言語となるビジョン)をつくる
4、あなたのリズムをつくりましょう
5、ジャーニーを共有しましょう
6、結果を共有しましょう

CEO Flow P116

従業員は、意識的にも、無意識的にもCEOやマネージャーの影響を日々受けています。この辺り、ちょうどナレッジワークの麻野さんが興味深いnoteを書かれていたので、ここにリンクを貼らせていただきます。

上記のCEOフローを1歩ずつすすめることも、常にこれを共有し続けることもそうですが、CEOフローの構築よりも早く進むであろう、事業のフェーズによってCEOと従業員の接点は変わり続けていきます。そしてその接点量は事業が成長すればするほど、通常は少なくなっていくもので、伝えるということに対してのコストが大きくかかっていきます。

googleでは(少し古い記事だが)、20年以上もTGIF(金曜夕方の全社ミーティング)を通じて、CEOや経営陣の声を生で全社員に毎週届けていますね。

全社員x会議時間だから相当のコストです。それでも麻野さんが指摘しているような従業員が想像で生み出してしまうさまざまな産物を軽減することや、本書で述べられていたようなミニCEOを全社で生み出し続けるための、一つの手法として行われているのだと理解しています。

全ての事業にCEOフローは必要なのか?

ここまで、CEOフローについての解説を進めてきました。
本書で述べられている事柄は、全体を通して働き手の従業員にとってはとても耳障りのよい内容が多かったと思います。そして、これをすべて体現できるCEOやマネジメントはどんだけすごいねん、とも感じてしまったのが正直なところです。では、全ての事業にとってCEOフローは必要なのかを考えていきましょう。

事業フェーズの進化とCEOフロー

前述のリクルートHotpepper事業のその後の流れも知っている私としては、また事業が成熟したのちにはコスト削減による利益創出の観点から、事業横断組織を構築することになったことも理解しています。ですから、本書の内容は単一事業で捉えた時に、事業が成長フェーズに入ったタイミング〜成長が鈍化し始めるまでがもっともワークする内容なのではと考えています。本書の著者アーロン・ロスも、その後大成長したSalesforceの成長期に在籍していたことから、本書の内容がそのフェーズにもっとも必要であるということの裏付けにもなるでしょう。

Push Management と Pull Management

上記のフェーズに関連する箇所として、本書のP32でPush managementとPull Managementという対比でも説明がされていました。馴染みのある言い方だと、トップダウンとボトムアップという言い方でも良いと思います。CEO FlowはPull Managementのかなりハイレベルな実現状態と考えて差し支えないでしょう。

これらはどちらが正解、どちらが間違いであるというわけではなく、両方を使いながらバランスさせるべきと書かれています。上記のような事業フェーズ(リソース、事業のPMFの度合い、プロダクトの成長など)だけでなく、事業特性によっても求められる度合いが変わると言えます。

事業特性による必要要件

例えば、私の前職のリクルートでは、SMB向けの営業がメインであることや、比較的若いメンバーが多いことから、ティーチングを行いながら、オペレーティブにやりきれるかが求められます。こうした場合はよりPush Managementなスタイルが成果につながっていくと言えるでしょう。

一方で、年次を重ねチームリーダーになった時や、大手クライアントの担当になった時には、急に”お前はどうしたい”という意思決定を求められるようになりました。これはメンバーの成熟度に加えて、新しい顧客価値の発見など、業務内容に正解がなくなっていく中で、求められる要件も変わっていく、変わるべきであるということです。対個人ではそうした形の調整が可能になりますが、全社方針としては、事業特性とマジョリティとしてどういったメンバーが多いのか、これは採用や育成の方針にも密接に絡めながらバランスしていく必要があると言えそうです。

加えて、成熟期以降は既存事業の漸進的成長と、新規事業による成長を目指すことになります。後者に関してはまた成長期において、同様にPush Managementよりのスタイルが求められるでしょう。

結論

事業フェーズ、事業特性、メンバーのマチュリティに合わせてCEOフローを導入しよう

本書で記述されたCEOフローを成立させるためには、CEOやマネージャーが在り方を”常に”語ることを前提に、事業フェーズと事業特性、メンバーのマチュリティによりPush Management(トップダウン)とPull Management(ボトムアップ)のバランスをとり続けていく必要があると考えています。

また、スタイル自体を大きくかえる必要がある際には、より丁寧に、できるだけまえもったアナウンスをしながら、コンフリクトを最小限に抑えて軟着地させていく必要があるでしょう。

粗々ではありますが、事業フェーズと事業特性、メンバーのマチュリティにより分類すると、下記のような図で表現できると思います。

事業フェーズと特性、マチュリティによる求められるカルチャーのスタイル分類:筆者作成

上記図において、青枠で表現される事業に該当していれば、本書の内容を強く意識した組織とカルチャー作りが有用と考えています。また、事業によって全く上記の前提が異なるケースもあるでしょう。そうした場合には個別のフォローアップが必要なケースもあります。どんなケースであっても、シンプルな施策だけではハマらないのが事業というもの。うまくバランスさせながら、あるべき状態の議論の土台にしていただけたら幸いです。

本書はこれから経営を学ぶメンバーへのエールだ

最後に、本書はCEOやマネージャー向けの本であるだけでなく、彼らマネジメントから発されるメッセージの受け手となる、メンバーへのエールでもあると感じました。受け身になることなく、こうしたメッセージをきちんと受け取ると共に、どういうフェーズにある事業には何が求められるかを意識しながら、自身のキャリアや成長と紐づけていくのが良いと思います。

ぜひご興味を持たれた方は、原書も手に取ってみてください。


最後に(いつも通り)宣伝ですが、弊社CEO村尾とVP古塚が明日9/21に会社のカルチャーについて熱く語ってくれるイベントを開催します。ご興味持ってくださった方、ぜひご参加ください!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?