スタートアップにおける経営者の振る舞いと見られ方
ナレッジワーク麻野です。
三連休の初日、自分がこれから経営者として意識しなければいけないことを考えたので、メモがわりに書いてみたいと思います。
テーマは「スタートアップにおける経営者の振る舞いと見られ方」です。
●成長ステージにおける経営者とメンバーの距離の変化
ナレッジワークもメンバーが30人を超え、本格的な成長ステージに突入しようとしています。
私の経験上、そのようなステージでは、経営者はやや過剰なほどに自分の考えをメンバーに伝える必要があると思っています。
まず前提として、一般的な企業と比べ、スタートアップではメンバーの経営者に対する関心度合いは高いです。
スタートアップは企業のブランドや待遇に惹かれたのではなく、ビジョンや未来に惹かれて入社したメンバーが多く、ほとんどの場合それらは経営者の口から発されているからです。
メンバーたちは経営者の発言や行動から、その奥にある思考や姿勢を読み取り、そこから企業の未来、そしてそこにいるであろう自分の未来を予測するのです。
創業期は経営者も毎日のようにメンバーと会話をしたり、一緒に仕事をする機会があります。特段意識せずとも、経営者の実態とメンバーからの印象は近いものになります。
しかし、会社が成長ステージに突入すると、状況は一変します。
毎日のようにあった経営者とメンバーが直接コミュニケーションしていた機会が激減するのです。
人数が増えるとチームが分化します。チームリーダーとやり取りすることはあっても、メンバーとやり取りする機会はせいぜい週に1回程度、場合によっては月に1回程度になります。
●メンバーが経営者をどのように見るか
その時、どのようなことが起こるか。
メンバーは数少ないタッチポイントにおける経営者の振る舞いから、その裏側にある考えを、時に意識的に、多くの場合は無意識的に予想します。
ここで驚くほどに様々な組織的な問題が生じます。
…
10年以上、様々なスタートアップ企業の組織を見てきましたが、ほとんどすべてのスタートアップでこういったことが数十回、いや数百回、いや無限に起こります(笑)
僕も前職時代に沢山経験しました。
ある程度は許容することも必要かもしれませんが、これらの小さなすれ違いが大きな組織課題に繋がることもあります。
こうした課題を経営者個人のパーソナリティの問題として処理することなく、組織の構造的課題と捉えて対処する必要があります。
●経営者が取り組むべきこと
経営者が取り組むべきことはシンプルに積極的な発信です。
実現したい未来、事業の戦略、組織で大切にしたいこと、人材に対して思っていること、あらゆることを丁寧に発信する必要があります。
「これくらいは言わなくても分かっているだろう」
「一度言ったから伝わっているだろう」
そうした甘い考えを捨て、自分の考えを、想いを、何度も何度も、語りかける必要があります。
Google は従業員数が何万人になってもAll Handsという全社ミーティングを毎週やっていますし、楽天も同様に毎週月曜の朝会を続けてきました。
イベント、メディア、様々な方法で経営者は伝え続ける必要があるのです。
●ミドルマネジャーやチームリーダーが取り組むべきこと
メンバーの人数が増えると、メンバーの興味や状況、その都度都度の文脈に合わせて経営者が語りかけることは難しくなります。
その際に重要になるのがミドルマネジャーの振る舞いです。
メンバーが
とミドルマネジャーに言ってきた際に、
と言動や行動の裏側にある状況を補足してもらえるだけで一気に状況は良くなったりします。
規模が拡大するとすべてのメンバーと密にコミュニケーションを取ることは難しくなりますが、少なくとも各チームを預かるミドルマネジャーとは相互理解の時間を取ることが重要です。
また、ミドルマネジャーの役割は経営と現場の意思疎通を適切に促す結節点であるという意識をしっかりと持ってもらうことも重要でしょう。
●メンバーが取り組むべきこと
組織づくりを担う一員であるメンバー側にも情報を適切に受け取る姿勢は必要です。
ここで大切なことはメンバーが「今、自分は空想のストーリーにとらわれていないか?」ということです。
勿論、事実の先にある想像が的を得ていることもありますが、的を得ていないことも沢山あります。
的を得ていない想像を「空想のストーリー」と呼びます。
どれだけ多くの企業で、どれだけ多くのメンバーたちが、どれだけ多くの「空想のストーリー」を作り出していることか!
「空想のストーリー」は組織の誰も幸せにしません。
「空想のストーリー」を組織に蔓延らせないために大切なことは、社内のコミュニケーションにおいて、事実と想像を分けて捉えるようにすることです。
経営者やミドルマネジャーに対して、メンバーが「◼️◼️さんは●●さんだと思うんです」と言った時に「事実は何だっけ」と問うことも必要でしょう。
また、空想のストーリーを展開する前に、本人に直接確認する、質問するような姿勢もメンバーに必要になるでしょう。
また、直接確認できる、質問できるような雰囲気、いわゆる心理的安全も組織には必要になるでしょう。
何より、経営者自身が他人の振る舞いに対して、空想のストーリーを作らずに、事実を見る、直接確認する姿勢は言わずもがな求められるでしょう。
●最も大切なのは経営者のあり方
上記は経営者の振る舞いから無用な誤解を生じさせないためのTipsですが、個人的には最も大切なのは「経営者のあり方」だと思っています。
どれだけ社内コミュニケーションのような「やり方」を工夫したとしても、経営者のスタンスという「あり方」は、ごまかすことができません。
「従業員を大切にしていない」「自分に都合の良いメンバーを重用する」「顧客を後回しにしていない」といった姿勢は、心のうちから染み出して伝わっていくもの。
社内コミュニケーションやミドルマネジャーとの連携に注目する前に、自分自身がどのような姿勢で組織に向き合うのかを明確にし、時に自分に問いただす必要があると思います。
アイドルグループのNiziUのプロデューサーであるJ.Y.Parkさんが下記のような言葉をメンバーに伝えています。
コミュニケーションは勿論大切ですが、それよりも大事なのは経営者自身のスタンスそのものだと思います。
ここに書いたことは本当に自戒の念しかないですが、しっかり取り組んでいきたいと思います。