The Qualified Sales Leader解説①B2Bセールスのプロセスは不可逆な一連の流れだ
こんにちは。Magic MomentでAccount Executiveをしています、渡邊(@Yusuke_W8)と申します。7月のnote投稿をサボってしまい、大変反省しているのですが、お盆ということで頑張っていこうと思います!
さて、本日は直近で読んだSales関連の本の中で、めちゃくちゃ参考になった”The Qualified Sales Leader: Proven Lessons from a Five Time CRO”の解説を、5回シリーズで行おうと思っています。この本は、私のボスである島本さん(@Eiki_Shimamoto)におすすめいただいて購入し、日本語訳をテキストにしていたところ、noteにしてみたら?とアドバイスをいただいたものになります。島本さん、ありがとうございます!
とはいえ、受験英語以来、ほとんど英語に触れないドメスティックな人生でしたので、正直翻訳力や読解力に相当な不安はありますが・・・同じように洋書のペーパーバックなんかに手が出ないぜ!って方もたくさんいらっしゃるだろうと思い、noteにしてみることにしました。細かい点は大目に見ていただき、ご笑覧いただけると幸いです。
この本をおすすめする方
私がこの本をおすすめする一番の理由は、難解なB2Bエンタープライズセールス(新規開拓)を体系的に理解するのにとても良い本と感じたからです。
前職のリクルート時代、私はいわゆるSMB領域(美容室や飲食店)のセールスを長く経験していました。最終的にはいわゆるナショナルチェーンと呼ばれる数百店舗以上の飲食チェーンの担当もしておりましたが、それは既存顧客のアカウントセールスであり、現在担当しているB2Bエンタープライズセールスで新規開拓するという仕事とは全く非なるものでした。また、今私がメインでご案内しているMagic Moment PlaybookのようなSales Tech領域はHorizontal SaaSということもあり、ペインがどこにあるかの勘所や、お客様のカルチャーも業界によって大きく異なります。そんな変化と変数の多さのなかでも、羅針盤の一つとして、とても参考になったので今回解説することにしました。そんな私のような”B2Bエンタープライズセールスの世界にとびこみ、新規開拓をしている営業”の方や、”改めてB2Bエンタープライズセールスを体系的に整理・言語化したい営業マネージャー”の方にぜひおすすめです。
加えて、裏返してバイヤー側からみてみると、本書の内容はエンタープライズ企業で新規の施策をどうすすめるか?という問いに答えるものでもあります。大手企業の若手の企画担当の中には、このあたりどう立ち回るのがよいのかわからず、気合入れてつくった企画がボツになり涙を飲んだ、という経験がおありの方もたくさんいらっしゃるかと思います。そんな”大手企業の若手の企画担当”の方にもぜひおすすめさせてください。
MEDDPICCという細かいフレームワークと、商談プロセスの定義
法人営業における商談のフレームワークで最も有名なものが”BANT”ですが、B2Bのエンタープライズセールスにおいては、荒いフレームワークだと常々感じていました。みなさん自社の営業においてはBANTをカスタマイズして使われていることがほとんどではないでしょうか?
一方、本書では、MEDDPICCという細かいフレームワークと、明確な商談プロセスが定義され、その流れで各プロセスにおけるポイントが説明されていきます。特筆すべきは、MEDDPICCには、BANTにおける、Budget(予算)やTimeframe(導入時期)といった要素がないことです。
みなさんも経験があるかもしれませんが、そもそも新規営業において、予算は確保してあります、とお客様から言われるケースって、ほとんどないですよね?すでに利用しているソリューションのリプレイス営業ならわかりますが、新しいソリューションのために予算を用意しているわけがないからです。また、Timeframeも同様で、毎年この時期に買うよ、となっているソリューションであれば明確ですが、ペインの大きさ、時間軸やステークホルダー、提案金額の大小によってここは大きく変わります。そもそも最初の時点でTimeframeが決まっていることがほとんどあり得ないからです。
つまり、すでにニーズが明確で市場浸透が進み、リプレイス営業がメインになるような商材においてはBANTが有効、その他の営業においてはMEDDPICCくらい細かいメッシュで顧客を捉えていく必要があるということです。
そして、商談プロセスとして、下記の6つを定義しています。
私としては、このプロセス自体が明確になっただけでも目から鱗でした。なぜなら、既存顧客のアカウントセールスにおいては、初期値としてさまざまな関係性(会社対会社の歴史や個人のつながり)とデータ(メディアやプロダクトのUsageデータ)があることで、段階を踏まずにこのプロセスを途中から始められたり、いわゆる鶴の一言で、ほぼ最初から既定路線で商談をすすめることもできたりするからです。
新規商談においてはこのプロセスを丁寧に一つ一つ登っていく必要があります。そして、それぞれのプロセスを前に進めるためのスキルが必要になってくるわけです。
本書の要諦:B2Bセールスのプロセスは不可逆な一連の流れだ
本書の中で、最も私が刺さったフレーズがあります。そして、細かいTipsはもちろんですが、本書の要諦はこの一節に詰まっているのではないかと思っています。それはChampionを見極める(Qualifyする)ための一連の質問について説明した後の一節です。
Discovery(課題の発見)もしていないのに、聞かれても寒いだけだということ。複雑性の高いエンタープライズセールスにおいては、たくさんの登場人物と、それぞれの口からでてくる情報が交錯します。そして営業の情報提供と取り付けるべき合意は、全てプロセスに則って順を追って適切なタイミングでなされるべきだということです。
例えば、こんなことはないですか?
Championだと思っていた人がCoachで、この人とずっと商談をし、気に入ってもらえたと思っている
Coachにいきなり予算を聞いて、ふわっとした予算感だけで提案を進めてしまい、まったく検討基準と合わない
Championと課題や取り組み範囲の合意ができていないのに、しきりにEBに会わせてほしいと要求する
Championと合意した判断基準を鵜呑みにして提案をして、EBから却下される
最初からValidation Eventのように細かい機能要件の擦り合わせのような商談をしている
こうしたあるあるは、それぞれの商談プロセスを正しく認識し、必要なタイミングで必要なアクションがとれていないことによって起きているわけです。仮に、それぞれのタイミングで話している内容や言葉自体が適切であっても、商談が前に進まなくなります。
ちなみに、EBやChampion、Coachの定義は下記を参考に↓
本書の内容を参考にしていただき、”現在の商談プロセスを正しく認識”し、適切なタイミングで適切なコミュニケーションをし、商談をすすめていく必要があるわけですね。私のnoteでは、残りの4回で、特に参考になったポイントについて、具体的な解説をしていきますので、よければ続作もお読みいただけたら幸いです。
続作はこちらから↓
なお、少し余談になりますが、本書と併せて読んでいただきたい本が2冊あります。
”SPIN”と”チャレンジャーセールス”。B2Bエンタープライズセールスにおける、名著といえばこの2冊ですね。それぞれの内容についてはまた別の機会でも解説できればと思いますが、B2Bセールスにとって、ディールを大きくし、営業が顧客を巻き込み大きな変革の立役者となるための、体系的な対話術がまとめられており、とっても秀逸な内容です。
ただ、この2冊を何度も読み返して理解しても、なかなか実践で使えないという悩みを私は持っていました。この本で理解した内容を、目の前の商談相手に適用し話すべきか?という点において迷いがあったからです。
The Qualified Sales Leaderを読んで、正しく商談プロセスとプロセスにおける商談相手の役割を理解し、チャレンジャーセールス・モデルを読んで、顧客を巻き込むためのスタンスを体現し、SPINを読んで適切な問いを投げかける。この組み合わせによって、やっと迷いなく一連の流れを体系的に理解できた気がしています。
この3冊バイブルの組み合わせによって、明確で強力なB2Bのセールスプロセスを体現できそうな気がしていますので、みなさんにもおすすめです!私も体現できるように日々研鑽していきます!
上記のような議論も含めて、さまざまな企業の営業変革に携わっているのが私の所属するMagic Momentという会社です。ちょうど今週、JP Startup様に代表の村尾(@yuya_murao)がインタビューいただいた記事が公開されました。もしご興味を持ってくださった方がいましたら、ぜひお読みいただけると嬉しいです。
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