見出し画像

不格好な“かっこよさ”を追求したい

南場智子さんの著書『不格好経営』。

不格好で “かっこいい” チームDeNAの挑戦の物語。

***

DeNA(ディー・エヌ・エー)と言えば、横浜DeNAベイスターズが有名ですね。私は野球にそれほど詳しくないのですが、名前だけは知っています。他にも、AI事業やオートモーティブ事業、ヘルスケア事業、ライブストリーミング事業等、様々な分野で活躍する一流企業です。
https://dena.com/jp/services/

そんなDeNAが、どのようにして生まれ、組織として成長してきたのか。

南場会長と社員たちの奮闘が描かれた一冊で、力強い物語を見た感覚になりました。

タイトルに「不格好」とついています。この不格好というのは、“かっこ悪い”という意味ではなく、むしろ“かっこいい”という意味の裏返しだと思っています。

ミュージカルや歌劇といった舞台演劇の世界で、よく「未完成の美しさ」という言葉を耳にします。映像で細部まで描き出す映画等と違い、舞台は限られた人や道具、狭い空間の中で物語を表現するため、観客の想像力を借りて表現します。
加えて、役者一人一人が成長し続ける過程も含めて楽しんでほしいという意味も込められています。

本書の「不格好経営」というのは、それに近いと思います。挑戦するからこそ“不格好”で、だからこそ“かっこいい”経営。

企業HPに南場会長のメッセージが書かれていますが、「挑戦を続けていきます」という一言だけでも力強さを感じます。おそらく、本書を読む前と後とでは、この言葉の受け取り方も変わってくるはずです。

「このDelightは本当に顧客の想像を超えているか。」

自社の商品に対する熱意と誠実さ、それを組織にいる一人一人が追求し続けることこそ、「不格好経営」であり、真に“かっこいい”組織であり続ける秘訣だと、改めて感じました。


_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
  人の力を信じて引き出せる会社へ
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

前置きが長くなりましたが、ここからが本題。

南場さんがマッキンゼー時代、会社を辞める覚悟で挑んだプロジェクトの経験から得た想いに共感しました。

「人の力を信じて引き出せる会社にしていきたい」

“はじめからデキるスーパースター” ばかりではありませんし、今では飛び抜けて成果を出せている人であっても、おそらく初めは出来ないところからのスタートであったはずです。

『ビジョナリーカンパニー』でも書かれているように、経営者のカリスマ性で成り立っている組織ではなく、時を告げてくれる時計としての「仕組み」を生み出し、長期的な時間軸で修正していける組織が、結果として社会に大きな価値を与え、長く存在し続けています。

南場さんの語るように、たとえ今は仕事が上手くいっていない社員でも、何かきっかけ次第で見違えるように成長し活躍し始める可能性があります。そのきっかけは、良い上司とのめぐりあわせかもしれませんし、自分の強みや経験を活かせるプロジェクトへの抜擢かもしれません。まさに南場さんが良い例ですね。または周囲の仲間の存在に刺激を受けて成長への意欲が高まるかもしれない。

その飛躍する「きっかけ」をつかむための場として、社員が自らの強みを自覚し高めていける仕組みがある組織は、その後も拡大し、長く繁栄していくのだと思います。

「私の強みはこれだ」
「自分は今この組織に必要とされている」
「強みを活かしてこういう取り組みをしていきたい」

そう考えて主体的に行動する人を増やしたい。
そういう人を見い出し後押しする仕組みを作りたい。

この本を読んでいて、改めてそう感じました。

そういう人が多い組織は必ず活性化しますし、
社会に対しても役立つ価値を生み出していけるはずなので。

何よりも、仕事をしていて楽しいと思います。
自分自身も、一緒に働く周囲の人たちも。

社員の退職を“卒業”と呼んでもいいと思うんですよね・・・

その組織の一員としてではなくなるとしても、働く中で学び得てきたものを社会で活かしてくれるという意味では、辞めたとしても別の形として関わっていけるはずなので。

元リクルート社員の方も、このようなことを語られていました。

会社の去り方によって、その後の会社への印象が大きく変わってくる。
悪い印象を持てば、辞めた後はライバルや競合として敵対する関係になりかねない。
逆に良い印象を持ってもらえれば、辞めた後も会社のファンとして、将来の顧客に魅力を伝えてくれるかもしれない。

一緒に走り続けてきた仲間が去ってしまうのは寂しいことです。
特に経営者にとっては、自分の子供や分身のような組織を盛り上げてくれると信じた社員が出て行ってしまうことに、腹を立てたくなる気持ちもあると思います。それまで大きく貢献をしてくれて、特に期待をかけてきたメンバーの離脱ほど悲しみも大きいはずです。なぜ、一緒に走り続けてくれないのか、と。

組織の父親役であるトップは、それでもいいかもしれない。
ですが、私たち社員は、それではいけないと思うのです。

退社=「社会へ羽ばたく」と捉えて、大らかに送り出す文化。

卒業おめでとう、とは言わないまでも、共に高め合い、支えてくれた仲間に対して、私は常にエールを送る存在でありたい。「ここで働けて良かった」と思ってもらえるように。そうした文化を、さらに広げていきたい。

私も、挑戦を続けていきます。

不格好な“かっこよさ”を追求し続けた先に成功があると信じて。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?