【心理学14】社会的手抜き・リンゲルマン効果(組織心理学分野)
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はじめに
皆さん小学校の運動会で「綱引き」をやったことありますか?🤔
私は身体が大きかったので、昔から十中八九一番後ろで縄をくくりつけられて見世物にされる役割でした🙄
今考えると、一体何の意味があるのかわかりませんが、大勢で必死こいて縄引っ張ってましたよね。
「クラス対抗」なんて掲げられた日には、日頃仲良しのくせに急にライバル視して戦ってました😑
昔々、あるところにそんな綱引きに関する実験をした物好きな農業工学者がおりましてね。
今日はそんな綱引きに関する、いや、集団心理に関するお話です。
キーワードは「リンゲルマン効果」です😏
1.社会的手抜き(リンゲルマン効果)とは
先程の綱引きの実験を行ったのが、マックス・リンゲルマン(Maximilien Ringelmann, フランス, 農業工学者)というフランス国立農業学校(フランス国立農学研究所)の教授です🙄
リンゲルマン氏は、同校で1882年から1887年までの間、綱引きや石臼などの集団行動時における、一人あたりのパフォーマンスを数値化する実験を実施しました。
例えば、1人の力を100とした場合に、2人で協力して同じ方向に向けて綱を引いたら、合計で200の力で綱を引ける計算になるはずです。
でも、リンゲルマン氏の実験結果はそれとは異なる数値となりました。
結果は以下の通り。
1人のとき:100%とする
2人のとき:93%(一人あたりの力)
3人のとき:85%
4人のとき:77%
5人のとき:70%
6人のとき:63%
7人のとき:56%
8人のとき:49%
この結果を見る限り、8人で協力して綱引きをしたら、一人あたりの力は49%(全力の半分以下)になってしまったのだそうです(笑)
これ、非常に面白くないですか?
全員で力合わせて頑張ろうぜ!という瞬間に、明らかに手抜きしている人がいるのです🙄
これを、社会心理学では「社会的手抜き」といいます。
リンゲルマン氏の実験で初めて明らかになったことなので、通称「リンゲルマン効果(Ringelmann Effect)」と呼ばれています。
リンゲルマン効果の大事なポイントは、人は、集団の中では、集団の数が多ければ多いほど、サボるという点にあります🙄
創業間もないスタートアップと大手企業の両方で働いたことがある皆様ならよくわかるのではないでしょうか。
スタートアップでは、人数がかなり少ない(常に足りない)ので、一人あたりの本気度を上げないと、目標を達成できません。
そのため、皆一生懸命働きます。
一方で、大手企業では、自分がサボっても、他の誰かがやってくれますし、仮に目標未達でも全員が悪いのでどうってことありません。
そのため、本気で働くなんて人は稀です。
まさしくリンゲルマン効果の発生地です。
この社会的手抜きが、農業工学者の実験によって明らかになったという点がすごくエモいと思うんですよ🤔
学者の果てしない知識欲、真理探究心……
尊敬です。
異分野の人間が見つけ出した現象が140年経った今でも、心理学の重要な研究対象になっているというこの事実にちょっと感動しています。
2.リンゲルマン効果の発生原因
リンゲルマン効果は、組織で動く限り、いつでもどこでも発生しうるものです。
特に、複数人のチームで業務を進める際、MTGを行う際、ブレストを行う際などに多く発生します。
関わる人間が増えれば増えるほど、サボるチャンスが多く生まれますから、そのチャンスの数だけリンゲルマン効果の発生事例が挙げられます。
その他身近な例でいうと、選挙が挙げられます。
投票に行く人の数は、先進国では日本は突出して低いですが、それもリンゲルマン効果の一種です。
ではなぜ人はサボってしまうのか🤔
リンゲルマンの実験後、心理学分野で数々の実験が繰り返されてきました。
その結果、リンゲルマン効果は、インセンティブ構造の歪みによって発生しているということがわかっています。
そして、インセンティブ構造の歪みを細分化すると、大きく分けて以下の2つが原因です。
(1)識別可能性の低下
(2)評価可能性の低下
この2つは密接不可分の繋がりがある事項です。
リンゲルマン効果の防止策においても極めて重要な事項なので、少し詳細に説明します。
(1)識別可能性の低下
ここでいう識別可能性とは、他者の仕事と自分の仕事を区別できるかどうかの程度だとお考えください。
言い換えれば、集団でタスクをこなす際に、どこからどこまでが自分のタスクなのかが可視化されている程度です。
この識別可能性が下がれば下がるほど、自分の仕事と他者の仕事の線引が曖昧になり、「頑張ろう」というモチベーションが下がります。
識別可能性が高い場合と低い場合でインセンティブ構造を分析してみると、以下のようになります。
【識別可能性が高い場合】
【識別可能性が低い場合】
上記の通り、識別可能性が高いか低いかで、インセンティブ構造がほぼ真逆になるのです🤔
非常に興味深い……
(2)評価可能性の低下
ここでいう評価可能性とは、他人から評価される可能性が高い程度のことです。
識別可能性のところでお話したとおり、識別可能性が上がると、原則として評価可能性も上がります。
逆に、識別可能性が下がると、評価可能性も一般的には下がります。
識別可能性と評価可能性はある程度連動しているのです🙄
ただ、完全に連動してしまっていたら、全員で力を合わせて行わないといけないタスク(識別可能性の低いタスク)では、誰かがサボってしまうことがほぼ確定的となってしまいます😱
これは悲しい……
でも、ご安心ください。
完全連動ではありません!
これは心理学のいくつかの実験で実証済みです😁
それが防止策にも繋がっていくので、防止策の話に移りましょう!
3.リンゲルマン効果の防止策
リンゲルマン効果に関する実験はすでに山程行われています。
その中で、いくつかの防止策が提示されているのでご紹介します😁
代表的な防止策は以下の7つ!
(1)識別可能性の向上
(2)評価可能性の向上
(3)フリーライダーの防止
(4)明確な目標設定
(5)監視システムの導入
(6)集団への社会的同一視の向上
(7)タスク完結性の向上
以下、一つずつ説明します!
(1)識別可能性の向上
識別可能性を上げる方法はいくつかありますが、代表的な2つの方法をご紹介します。
まず、タスクを細分化して、誰がどのタスクを担当しているかを明確にわかるようにするという方法です。
大抵のタスクは、細かく分ければ、誰がどのタスクを行うかを明確にすることができます😁
少し手間がかかる作業ですが、これをやるだけで識別可能性が上がり、最終的にはモチベーションが上がりやすい状況になるのでオススメです。
ただ、一つだけ注意点があります🤔
この方法を採用する場合、必ず各タスクの完了時点でチェックを入れなければなりません。
タスクを細分化しても、評価は全体を通した結果のみというのではほとんど意味がないからです。
各タスクの完了時点でしっかりチェックを入れて、評価可能性も上げないといけません。
次に、チームの人数をあえて絞って、誰がどのタスクを担当しているかを可視化するという方法もあります。
担当部署を多く作ってタスクを細分化するイメージです。
人数が多ければ多いほど識別可能性が下がっていくので、人数を減らしてしまえばいいという発想ですね!
識別可能性の向上は比較的容易に実施できるので、便利な方法です。
ただし、この方法の弊害も知っておきましょう。
仕事や部署を細分化して、各人が担当するタスクを明確にすると、タスク中心型の組織になりやすくなります。
その結果、組織の一体感は下がります。
自分の仕事だけをやっていればいいという認識が生まれ、バラバラの組織になりやすくなります。
(2)評価可能性の向上
この方法は、評価される時点を増やすという方法です。
先程の識別可能性の向上でもありましたが、チェックポイントを単に増やせば良いだけです😁
チェックポイントを増やすと、「君の頑張りをちゃんと見てるぞ!」というメッセージになります。
その結果、努力をするインセンティブが発生して、モチベーションが上がりやすくなります👍
ただし、あくまでもポジティブなチェックポイントである点に注意が必要です。
他人を批判・非難・否定するためのチェックポイントだと逆効果になることがあります🤔
このバランスが難しいんですよね。
評価するポイントを増やして喜ぶ人と、嫌がる人がいるのです。
人によってバランスを変えないといけません。
マネージャーの腕の見せ所ともいえそうです。
(3)フリーライダーの防止
リンゲルマン効果が発生した後の最大の弊害は、不公平感に基づくモチベーションの低下です。
サボった人間と頑張った人間が同一の評価を受けてしまうという問題です。
これを防止するために、フリーライダーにペナルティを与えるという方法があります。
リンゲルマン効果が発生した場合、サボっている人間は「バレない」わけではなく、「バレにくい」というだけです。
同じ組織にいる他のメンバーには、誰がどの程度力を抜いているかなんてすぐにわかります。
そのため、サボっている人間が見つかったら、その都度ペナルティを与え、公平な評価を下すことが重要です。
日本では意外とこれをやらない組織が多いのです🤔
私が過去に見た組織でも、実質週に1日しか働いていない人間に、週6日働いている人間と同等の報酬を何年にも渡って支払い続けている会社がありました。
理解不能でした(笑)
週に1日の働きで6日分の結果を出しているような天才なら全然問題ないですが、あのケースの場合、明らかに週1日分の働きしかしていませんでした。
それにも関わらず報酬が一緒となれば、誰も真面目に働こうなんて思いません。
結果、多くの優秀な人材がその組織を離れていきました。
そういう不公平をそのままにしないという強い意思が必要です。
(4)明確な目標設定
この方法は、目標を数値化したり、対話によって明確にするという方法です。
目標設定はマネジメント領域において最も難しい難題の一つと考えられています。
優れたマネージャーであっても、部下に最適な目標を設定させるのは非常に難しいです🤔
ただ、これができるようになると、リンゲルマン効果はほとんど発生しなくなるといっても過言ではありません。
それほど効果絶大な方法です。
本人にとって明確な目標ができあがれば、勝手に努力してくれます。
なお、目標設定については以前書いたXY理論が非常に役に立ちます。
この理論の中のY理論の部分をよくお読みいただき、マネジメントに応用してみるといいかもしれません。
難易度は非常に高いですが、マスターしてしまえばリンゲルマン効果の発生はほぼゼロです。
(5)監視システムの導入
あまりオススメはしませんが、どうしようもなくなった場合は監視システムの導入も効果的です。
サボっている人間がいないかを常に監視し、見つけ出すという方法です。
私がまだ10代だった頃、短期バイトでとある工場に入ったことがあります。
この工場では、24時間365日、数十台の監視カメラで働き方をチェックしていました。
作業中の私語は一切禁止されていて、誰も何も話さない状態です。
ベルトコンベアで流れてくる仕掛品をひたすら組み立て、次の作業工程に流していくというただそれだけの作業を延々と8時間繰り返すのです。
私はこの仕事を続けると気が狂うと思ったので3日で辞めました😨
昼休みもずっと監視役の人が食堂を監視していて、ほぼ牢獄だったんですよね……
長く働いているおばちゃんがいうには、昔その工場で長年に渡る横領が発生してしまったのだそうです。
それがキッカケで監視システムを導入したらしいのですが、モチベーションとの関係では逆効果になる気がします🙄
ただ、サボれる状況ではなかったので、サボる人はほとんどいませんでした。
仕事を楽しんでいる人も一人もいませんでしたけどね……
(6)集団への社会的同一視の向上
社会的同一視とは、平たく言えば、自分はその組織の一員なのだという認識を持っている状態のことです。
組織的な一体感といえば伝わりますでしょうか🤔
心理学分野の様々な研究で、人間は、自分がその組織の一員であり、構成員なのだという認識を持つと、その組織の評価を保つこと・向上させることに貢献しようとするという結果が出ています。
何となくわからんでもないですよね😁
母校愛とか、愛社精神などという類のものです。
自分がその学校の出身であることに誇りを持っていたり、その会社の従業員であることを誇らしく思っている状態です。
その状態を生み出すことができれば、人は自ずと組織のために努力し、その組織の質の向上を図ってくれるらしいですよ🙄
この分野はまだ研究途中という感じなので、明確な方法論まではまだないと思いますが、組織的一体感を高めれば、チームとして頑強になるという点は理解できます。
チームスポーツなどでよく発生するあれです。
最高のチームでは、本人たちの能力以上のパフォーマンスが発揮されることがあります。
チームスポーツほとんどしたことないですが、スラムダンク読んでいるので知ってます🙄
山王工業と戦ったときの湘北ですね。
これを会社内で起こせば、リンゲルマン効果は発生しづらくなるとのこと。
ということは、愛社精神を育んでいけばいいわけです。
そのためには様々な方法が考えられますが、まずは会社側が従業員に貢献しようという姿勢を見せることが重要かなと個人的には思います。
「頑張った従業員には褒美をやろう」
という上からスタンスの会社で社会的同一視が向上しているケースをあまり見たことがありません。
むしろ逆効果で、そのインセンティブ(目標達成時に支払われるお金)のためだけに努力する人が増えてしまい、単独プレイや不正による業績が増えたというケースを良く見ます。
会社の経営陣が「まずは従業員が結果を出せ」というスタンスだと、誰もやる気を出さないのです😨
一方で、経営陣が従業員の働きやすさや自己実現を真剣に考えて、努力をする人を称賛する文化を創り、キャリアパスや教育環境を整えていっているような会社では、従業員はその貢献にしっかり報いようとします。
会社に対する愛着が芽生え、会社のために自分に何ができるか、どのような能力を磨かないといけないかを思考し始めます。
その結果、社会的同一視が高まるのだと思います。
(7)タスク完結性の向上
最後に、タスク完結性の向上が挙げられます。
タスク完結性とは、仕事の工程を全体としてみて、最初から終わりまでどの程度関わっているかの程度を意味します。
前回書いた「職務特性理論」でも出てきた言葉です😁
心理学は横の繋がりがあって楽しいですね🎵
職務特性理論は、どのような場合に人間のモチベーションが上がるのかについての理論でした。
それがリンゲルマン効果の防止策としても効果を発揮するということです。
タスクを全体としてみて、最初から最後まで自分が関わっているという状態が続くと、結果に対する責任感が生まれやすくなり、結果的にリンゲルマン効果を防止できるという流れです😁
チーム全員で一丸となってタスクを処理するという意味では、社会的同一視の向上も期待できそうです🎵
以上、7つの防止策について解説させていただきました。
参考になれば幸いです。
おわりに
今日は「リンゲルマン効果」という日頃なかなか聞かない心理学用語について解説させていただきましたが、内容を覚えられましたでしょうか。
「社会的手抜き」という単語で覚えていただいても全く問題ございません😁
心理学を明日使えるレベルまで噛み砕いてお伝えすることを目指しているこの連載ですが、この記事が皆様の組織運営の一助になればと日々思っております。
リモートワークが原則となりつつある今の日本では、リンゲルマン効果が極めて発生しやすい状況になっています。
誰にも見られない状態ですから、サボろうと思えばいくらでもサボることができる状態です。
これをどのようにして防ぐのか、どのようにして組織力を上げるのか。
マネージャーの皆様の悩みは尽きないと思います🤔
その際、心理学の知識を応用して、いろいろ試してみるのもありだと思っています。
心理学は非常に身近な学問なので、使える知識が満載です😁
是非これからもお時間あるときにお読みくださいませ。
ではまた次回🎵
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