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スポーツ観戦との「再会」・その5【20.11.03@中央大学ラグビー部編】

1年と1日前のこの日は、ラグビーワールドカップの決勝戦が行われていた。
8万人の大観衆が横浜国際競技場に集い、大男たちの奮戦に声を挙げる。
ラグビーの素晴らしさ、そして巨大イベントが生み出す感動に、2階席最後尾にいた僕はただただ胸が打たれるのみだった。

そして今日。僕はラグビーを見にスタジアムへと足を運んだ。駒沢陸上競技場の前から数列目のところに座っている。
ただし、1年前のあのときのような感慨には乏しいのが本音である。

この1年間という時間は、ラグビー界にとっては誤算だった。ワールドカップが終わり、高校や大学ラグビーが隙間を埋め、ようやく始まったトップリーグ。ワールドカップ戦士の活躍を間近で観ることができる! サポーターズクラブの無料券でふらっと見に行けたのも今は昔。プラチナ化したチケットはなかなか手に入らず、僕は嬉しい悲鳴をあげるばかりだった。

そんな最中にやってきたのが、このコロナ禍なのである。
ワールドカップが生み出したムーブメントは、恐怖や苦しみに押し流されるように、徐々にしぼんでいってしまった。

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思い通りにはいかないことは置いといて、まずはラグビーが見られるということに感謝しよう。
2020年の大学ラグビーでは一部の試合は有観客で開催されている。この駒沢陸上競技場で行われている、中央大学対流通経済大学の試合もそれに該当する。
なにより、僕にとっては、「中央大学ラグビー部の試合を見に行く」のも久々だった。あとで調べたところ、約3年ぶりのことだった。

ラグビーというスポーツを知り、覚えたのが母校のラグビー部からだった。卒業後も毎年のようにスタジアムへ足を運び、勝てそうで勝てなかったり、勝つ時は超感動的だったりする、愛すべきチームの姿に一喜一憂する日々を過ごしていた。
そんなチームに、僕はしばらく愛想を尽かしていた。成績は低迷していた。でも、それだけならば、見放すことは無い。それ以上に辛かったのは「チームとしての核が見えない」戦いを繰り返していたからだ。

変化の兆しがあったのは、2019年からだ。U20日本代表を率いた経験もある遠藤哲氏がチームのヘッドコーチに就任。最初のシーズンは最下位で入替戦行きだったものの、シーズン終盤に見せたラグビーには明るい意見が多かった。
応援を再開するのであれば、このタイミングかもしれない。

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久々に見た中大ラグビー部の「ツカミ」は、望外とも言える好内容だった。
とにもかくにも、守備が素晴らしい。低いタックル、ブレイクダウンの強さ、倒れてもすぐ立ち上がり綺麗に整うディフェンスライン……。
これだ! これが僕の見たかった中大ラグビーなんだ!
泥臭くて、かっこ悪い。ロングキックとモールとディフェンスしかできないチーム。でも、その3つを完璧に極めているからこそ、どんな強敵相手でもブレずに戦えている。
僕が好きな中大ラグビー部が、ようやく蘇ってきたのだ!

……といっても、それは前半20分までの話。
攻撃のチャンスをなかなか作れないままでいると、徐々に流通経済大学のスピードとパワーに押し込まれていく。特にFBの河野のランには手を焼いた。残りの60分で10トライを喫し、中大が奪えたトライはモールによる1本のみ。
スコアとしては7−64の完敗。よく見てきた負け方だ。でも、僕の心の半分は、ちょっとした充実感で満たされていた。

中大ラグビー部は、中大ラグビー部らしく戦えている。

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かくして母校は2020年シーズンを2勝1分4敗の5位で終えることになった。
負ける時は派手に、勝つ時はギリギリで。スコアシートとハイライト映像だけで追うシーズンになってしまった。でも、僕が好きなラグビーチームが帰ってきたことに、小さな安堵と期待が胸の中で膨らみ続けているのだった

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