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月刊「読んでみましたアジア本」

日本で出版されたアジア関連書籍の感想。時には映画などの書籍以外の表現方法を取り上げます。わたし自身の中華圏での経験も折り込んでご紹介。2018年までメルマガ「ぶんぶくちゃいな」(…
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#ビルマ

【読んでみましたアジア本】さまざまに読み比べて知る、「廃れない本当のルポルタージュ」/高野秀行『アヘン王国潜入記』(集英社文庫)

自分でも意外だが、振り返ってみると、この「読んでみましたアジア本」ではもう何冊もミャンマー(ビルマ)に関する書籍を紹介してきた。

いつも、韓国や中華(主に嫌中、あるいは好台)本を除いて、「日本にはとにかくアジアをテーマにした本が少なすぎる!」とぼやきながら書籍を選定しているが、ことミャンマー本に関しては、個人的には特にこの国に思い入れはないのだが、読んでみたどの本も大変印象に残る興味深い本となっ

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【読んでみましたアジア本】2024年を前に読んでおきたい、お薦めアジア本

今年最後のアジア本は、恒例の年始年末お薦め本。今年、「読んでみましたアジア本」でご紹介した本の一覧を書き出したところ、なかなか収穫の多い1年であったように思われる。

特に、今後アジア情勢を観察する際に、基礎的知識を身につけるための「教科書」として何度か読み直すだろうと思われる本が数冊入っており、きっと将来、「読んでてよかった…」と思えるときがくると感じている。というか、すでに感じている。

ただ

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【読んでみましたアジア本】単純な「軍 vs 民主派」の図式が覆される/タンミンウー・著『ビルマ 危機の本質』(河出書房出版社)

【読んでみましたアジア本】単純な「軍 vs 民主派」の図式が覆される/タンミンウー・著『ビルマ 危機の本質』(河出書房出版社)

うーん、重い一冊だった。本の重量も、そしてその内容も。

以前ご紹介した、同じ著者の前作『ビルマ・ハイウェイ』も中身の濃い一冊だった。ビルマを中心に東南アジアの成り立ちとその位置関係を歴史的な人的流動(とそれにまつわる文化や言語、民族、そして宗教)をもとに解説した貴重な資料で、ビルマはちょうどそのど真ん中に位置しているというのが著者の説明だった。然り。

そして、本書ではビルマ出身の元国連総長を祖

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【読んでみましたアジア本】敬虔な仏教国と伝えられるミャンマーの表と裏:春日孝之『黒魔術が潜む国 ミャンマー政治の舞台裏』

今、世界の注目を刻々と浴びているミャンマー情勢。世界の主要国が国軍によるクーデターに非難を表明し、軍政府側がデモ隊に向けて発砲し、死者まで出ている状況において。すでに軍側には正当性を示すことのできる空間はほぼなくなってしまった。

だが、最初の死者が出るまで、軍の側が昨年の選挙に不正があったして、「正常な政治に戻すために憲法に従って政権を握った」と主張したという点が気になっていた。

というのも、

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【読んでみましたアジア本】インドと中国、二大国の間に横たわる「アジア」事情を知る:タンミンウー『ビルマ・ハイウェイ』(白水社)

◎『ビルマ・ハイウェイ:中国とインドをつなぐ十字路』タンミンウー・著/秋元由紀・訳(白水社)

1年ほど前にジャーナリストの舛友雄大さんに紹介されて手にした本。いつも言葉の少ない舛友さんなので具体的に何が書かれているのかの説明は特になかったのだけれど、勉強家でとにかく目の付け所が現地に根ざしている彼ゆえに、尋ねるよりも「とにかく読んでみなければ始まらない」という気分になったのだった。

なぜにビル

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