【読んでみましたアジア本】2024年を前に読んでおきたい、お薦めアジア本

今年最後のアジア本は、恒例の年始年末お薦め本。今年、「読んでみましたアジア本」でご紹介した本の一覧を書き出したところ、なかなか収穫の多い1年であったように思われる。

特に、今後アジア情勢を観察する際に、基礎的知識を身につけるための「教科書」として何度か読み直すだろうと思われる本が数冊入っており、きっと将来、「読んでてよかった…」と思えるときがくると感じている。というか、すでに感じている。

ただし、アジア本探しの苦労は相変わらずで、こっちはあまり知られていないアジア諸国のいろんなことを知りたいのに、たぶん「知られていない」から売れないと判断されて書籍化されないケースも多々あるのではと想像する。もちろん、市場がそうだから、知られていない情報や話題の書籍化を目指すこと自体への躊躇があったり、そこまで情報提供する側が育たないという現状もあるだろう。

つまり、相変わらずの「知らない」→「売れない」→「出さない」→「知らない」→……の悪循環である。読者が悪いのか、出版業界が悪いのか、それとも書き手が悪いのか。

こういうとき、自分以外の「他者」を責めるのは簡単なことだけれど、実のところ、日本社会全体の「好奇心のなさ」が最大の原因なのだと思う。

本を読んだり、情報を増やすなどの知的好奇心を追い続けることは決して悪いことではないはずだが、日本では一般に「同質化」が求められることが非常に多い。つまり、人付き合いにおいて「他人が知っていることを自分も知っている」という「共有」ばかりが重視され、それぞれ個人が好奇心をもって探求する知識や情報は「ふうん」で終わってしまうことが多く、自分の知らない知識や情報を持つ人たちと仲間づきあいをする習慣が希薄すぎるのだ。

そのために、本の世界でもベストセラー本や話題本、あるいはそんな人気商品のあやかろうとして出版される疑似本ばかりに人が群がり、個人が持つ好奇心をそのまま伸ばすための時間や空間がないがしろにされていく。それがある種の一極集中的な社会特性を生んでおり、その一方でないがしろにされた個人の興味や関心は芽を出し育つための肥料が与えられないままにしぼんでいき、多くの人たちが「それがおとなになるということだ」と思い込んでいるのではないか。

もっともっと個性的になってもいいのにね。もちろん、それは書籍に関してのみならず、多くの分野でいえることだ。「個性を大事にする教育」が叫ばれたときに子どもだった人たちも、すでに働いている時代なのに、あいも変わらず素直に好奇心を育て個性的になるための空間がないのは残念でしかない。

とはいえ、先にも触れたように今年の「アジア本」はなかなかの収穫だった。そして、そのほとんどが今年あるいはここ数年出た「大作」ばかりなので、アジア本、それも最新情報や最新作品の出版未来は明るいと信じたい。

それでは今年のお薦め本。

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