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バカのボリュームをあげて、みんなが自由になった世界はきっとおもしろい

「おもしろがりたい。」
そう、何度も口にするマスダヒロシさん。
彼を最初に見つけたのは、この『note』だ。
アイコンは耳当てのついているキャップを被り、後ろから光が差し込む写真。なんだかnoteでは珍しい雰囲気だなと印象に残る。

そして、プロフィールを見ると、世界を旅し、イラストレーター、デザイナー、webマガジンもやっている?
この人はいったいナニモノ?
そんなことが気になり、今回お話を伺った。

マスダヒロシ 1987年埼玉生まれ。2017年から1年半世界76ヵ国を旅する。自由をつくるWEBマガジン「The U」編集長。似顔絵、イラスト、デザインなどフリーで活動をしている。旅では火山の魅力にハマる。


■予測できる未来はつまらない

マスダヒロシさんは、2017年から1年半世界76ヵ国を旅した。旅を始めたのは、単純に言ってしまうと”おもしろそう”だから。

ただ、生活をしている中でこんなことを思ったからだという。彼はもともと、広告の販売促進の仕事に新卒から4年間働き、その後マリンスポーツに関わる仕事を3年間。レールに乗って、遠回りもせず、砕けた人生ではなかった。

そんな彼だったが、ふと「このままいったら、これくらいの大人になるんだろうなっていうのが予測できちゃって、それがつまらない。」と思ったそう。自分はそっちに行くんだという驚きが欲しくて、その手段として、世界を旅することに決めた。

旅をすることに驚いた人もいたが、昔からの仲のいい友達には「行くと思った!」と言われたそう。

■一人旅のススメ

旅のプランはがちがちに固めず、その場その場で、おもしろそうなところへ。特に一人旅はおすすめだという。

「一人旅は自分がリーダーなので、全て自分の選択で、道を進まなくちゃいけない。全て自己責任だから失敗もできる。それに、友達もできる。自分はどこに行っても外国人で圧倒的孤独感があるからこそ、自分から声をかけたくなるし、相手がどんな人なのか興味が湧く。

子供の頃海外旅行に行った時は、姉が英語を喋れるから、自分は喋る必要がなかった。でも一人だと全部自分がやらなくちゃいけないから、英語も覚えていく。良いことばっかり。」そう一人旅の魅力を語ってくれた。

■目的は、旅をすることだから

それなら、英語は喋れたかと聞くと、大学での勉強と、フィリピンで1ヵ月だけ勉強をして、多少喋れたくらい。そもそも英語が通じない国もある。

「英語を勉強してから、始めようとすると足が重くなるじゃないですか。真面目な人ほど、3年間勉強してからとか、TOEIC何百点とってからとか。でもそれって目的入れ変わっちゃうんですよね。旅をすることが目的だったのに。だから行きたいと思ったら行っちゃった方がいい。
それに、なんとかなるから。その”なんとかなる”っていう経験をしているかどうかって大事。」

■始めたい時に始めて、終わりたい時に終わればいい。

しかし、旅の途中、強盗に襲われたこともあったという。現地で会った人と飲みに行き、知らないうちに睡眠薬を入れられて、寝かされている間に財布を盗まれるという怖い体験。

「そのあとは人を信じていいか、信じちゃいけないかゲームがずっと続いた。でも、せめぎ合いの中でも、信じないと、ものすごく旅はつまらなくなる。だから、できるだけおもしろがりたくて、なるべく人を信じて、出逢った人とごはんを食べるようにした。」という。
どこまでもおもしろがる心はすごい。

そんな怖い目にあっても旅を続けようと思えたのかを伺うと、2回日本に帰ってきて、再スタートをきっていた。旅を始めたら、帰らないのが普通かと思っていたが、それも旅で出逢った人からの発見。
「何の格好をつけることもなく、帰るわ!って帰って、また旅を始める人と出逢った時、格好つけずやめてもいいんだ。脳が柔らかくて、いいなって。だから、始めたい時に始めて、終わりたい時に終わればいいんじゃないかな。」

そんな彼の言葉を聞くと、そんなに身構えなくていい。やりたい時やってみればいいと勇気が湧いてくる。

■イラストのはじまりは、ある女の子との出逢い 

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彼は今、イラストや似顔絵を描いている。とてもポップで楽しくて、おしゃれだ。イラストを描き始めたのは旅中のある女の子の一言からだった。

ヨーロッパでは、物価が高い為、お金が足りなくて楽しめない。そこで、『あなたの名前、日本語で書きます』というのを思いつき、道に座って、お金が稼げないかと始めてみた。
しかし、全然売れない。1日に2,3人お客さんが来ればいい方だった。

そんな時、フランスである女の子が近づいてきて、彼にこう言った。
そんなの誰でもできるよ。」と。
「そんなこと言う?お前はフランス人で、日本語で書くのは日本人じゃないと出来ないだろ。」と最初は少しイラッとしたそうだ。

ただ、続けて女の子は、彼のスケッチブックの絵を見つけて、
「こっちの方がいいよ。似顔絵描きなよ。」って。その絵は彼が『旅人あるある』をSNSでアップする為に描いていたものだ。

それで女の子の言うように、似顔絵を描いてみようと、シフトチェンジ。すると、ホテル代と3食分の食事くらい稼げるように。

「そのあと女の子に年齢聞いたら、21歳。僕がその時30歳だったので、9個下(笑)。日本人だったら言わないと思うんですよ。例えば、こいつ才能ないなと思っても才能ないってことを。でもフランスは主張とか自分の意見を言いたがる文化だから。でもそれがあるから、今イラストを描いている。」
それがイラストを描き始めた出逢いだった。

似顔絵やイラストを描いていると、色鉛筆クレクレ言うおばさんとか、となりで気持ち悪いエイリアンの絵を見せてくれる男の子だとかおもしろい出逢いがたくさんあったのだとか。そんな出逢いを通して、いつしかお金を稼ぐ目的から、似顔絵を通して人と触れ合えることに楽しさを見つけた。

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彼の似顔絵は目が音符♪になっている。これは旅中に考え思いついたもの。「後付けだけど、学校の科目の中で、音楽だけが『』ってついてる。だからみんながこの絵でごきげんになったらいいな。」そんな想いも込められている。

楽しさをアイデアに詰めこんだその似顔絵は、彼のおもしろがる生き方がにじみ出ている気がする。

旅から帰ってきて、すぐ個展を開いた彼。展示と、その場で似顔絵を描いてくれる。そして、今年の7月にもまた、原宿の「bio ojiyan cafe」という場所で個展を行うとのこと。
ぜひ、気になったら彼の個展へ。私も前回逃してしまったので、次は行きたい…!

■「自由」のルーツは新しい常識との出逢い

マスダさんのやっているWEBマガジン「The U(ザ・ユー)」。自由をつくるメディアだ。コラム、インタビュー、イラストまで色々なコンテンツがあり、言葉にもハッとさせられる。
このメディア、なぜ"自由"なのか。それは旅での、ある民族と出逢いがひとつのきっかけだった。

それはエチオピアのハマル族。そこはカレンダーという文化がない。つまり自分の年齢も分からないわけだ。でも成人の儀式はあるという。一体どうなったら、成人となるのか。

それは、精神的にも肉体的にも大人になったなと思った時、成人のテストを行うそうだ。
『ブルジャンプ』と呼ばれている。牛を並べてその上を4往復できたら大人になれる。日本は20歳になったら一律大人。常識が全然違っておもしろい、そう気づいた瞬間だった。

「国によって、常識がひょいと変わることに気づけたことが、旅をしていて楽しかったところ。その新しい常識と出逢えたことで、『自由をつくる』WEBマガジンを作った。日本は真面目が得意だからこそ、例えば週5日じゃない働き方とか考えられないし、考えようとも、思いつきもしない。でも、そうじゃない働き方や暮らし方もあるよねってことを、もっと言えると思って。」

それが『The U』のはじまり。

■「勇気」と「寛容」で、バカのボリュームをあげる

そんな彼にとっての、自由とは「勇気」と「寛容」。
勇気は、「普通はこうだ」って言われている道からそれる勇気。人が歩いている道は安心して歩ける。でも、自分がほんとうに行きたい道なら、人と違ってもいい。
そしてもうひとつは寛容。道をそれる人に対して、周りが寛容な空気や雰囲気を作っていくこと。両方を育てていかなきゃなんだけど、まずはあらゆることにチャレンジする勇気。

それには"ちょっとバカになってみること"が大切だという。

”バカのボリュームをあげる”っていう言い方しているんですけど、例えば、安全だと分かる道を歩かないのはバカだと思う。でも、そういう時、バカのボリュームをあげて、「この道歩いちゃダメだ」って正しい声を聞こえなくして、その道を行けって。
それは変な道を歩けってことじゃなくて、自分が本当にやりたいと思ったらの話。そういう時は、多少の寛容力のない声は無視してやればいいんじゃないかなって。そうやって、自由でいろんな人がある意味バカになった方が、自分も自由になるし、おもしろい世界になると思う。」

今後は、もっとひとりひとりと向き合って、自由になれたっていう人を増やせたらと、考えている。WEBマガジンはこういうものだと型にとらわれていたり、友達に「誰を自由にしたの?」と聞かれたりしたことが、考え直すきっかけになったんだとか。

「自由でいい、勇気を出せばいいの一言で、動き出せる人がいたらラクだけど、人間はそう簡単じゃないから、めんどくさい。だから何度も何度も、勇気と寛容がわくようなコンテンツをつくっていきたい。」

強くて優しくてバカな世界。
きっと楽しいだろう。

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■自分らしくなくていい

私は”自分らしく”という言葉を、大切に思ってきた。でも、マスダさんのこのコラムを読み、どこか引っ掛かっていた矛盾や過去に囚われ過ぎていたことに気づけた。そしてその、「自分らしくなくていい」について、語ってもらった。

「“自分らしく”という考えは、過去を起点にした言葉。“自分らしく”にとらわれていると、世界を狭くしちゃう。過去の自分なんて大したことない。自分らしく生きるってことは、その大したことない過去の中で、生きるってこと。
例えば、イチローさんのように圧倒的に努力している人が、自分らしく生きたいって言ったら、それはそれまでやってきた実績があるからいいけど。僕が自分らしくって言うのはなんかなぁって。だって大したことない自分なんで(笑)。
でも“自分らしくなくていい”と思えば、大したことのない枠の中から飛び出せる。だから、人とか作品を傷つけるようなマネはいけないけど、いろんなものをどんどんマネをして、新たにおもしろいものを創ったらいい。」


■待っていないで、転がる

こう聞くと似顔絵にシフトチェンジしたり、人から言われたことを取り入れたり、柔軟性があるように見える。でも自分は頑固な性格だという。そんな彼が人の意見を受け入れるか、受け入れないのかの違いは、"おもしろいかどうか"
「そっちいくんだ!っていうのが好きなんですよ。自分の人生が予測のつかない方に転がっていくのがおもしろい。驚きたい。おもしろがりたい。それが軸にあるから聞いているだけ。例えば、動くなってアドバイスされてもとどまってないです(笑)。自分の中のおもしろがりたい、転がりたいにフィットするから、その意見やアドバイスを聞く。」

彼にとって、予測がつかないことは、怖さよりもおもしろさが勝っているようだ。

■新しい一歩、花開く未来へ

現在仕事は、デザインやイラストなどを、フリーでやっている。ポスターやパンフレット制作、友達から仕事をもらうなどしているとのこと。それに加えて、オリンピック対策本部で、空手がより身近になる為の案を考える仕事なども。

その中で、4月に新しい一歩に繋がった出来事があった。彼が通っている「れもんらいふデザイン塾」。アートディレクター千原 徹也さん主催の塾だ。その中で、10チームに分かれて考えた企画のうち今回、見事選ばれたのが、彼のいるチーム。選ばれたデザインが、実際、渋谷の「MAGNET by SHIBUYA109」の広告として、飾られた。

逆立ちした女性とひるがえったスカートがお花のように見えるインパクトあるデザイン。千原さん以外にもとんだ林蘭さんや、スタイリストの相澤樹さんなどと一緒に手掛け、作り上げた。

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どんなイメージで作られたか伺った。
「MAGNET by SHIBUYA109自体が、若者の夢を叶える会社でありたいとか、渋谷の文化を創っていきたいっていうこと言っていて。その言葉を彫刻していくと、『花開く』というコンセプトに辿り着いた。
『花開く』って言葉には、単純に花びらが開いていくっていう以外にも、夢を叶える、何かを成す、時代に花が咲く、文化を作るっていう意味が出て。それはまさにMAGNET by SHIBUYA109のやろうとしていることだなって。

コピーは「咲かずに死んでたまるか」。これはまさに現状にいる自分たちそのもの。これから、おもしろいと思われる人になって、自分の中に花を咲かせたいなって。そう思っていたからこそ、自然にあの言葉が出た。それが、夢を追いかける人に対する応援の言葉にもなるといいな。」と語ってくれた。

まさに令和の新しい時代をもお祝いしているよう。人にも時代にも花が咲くことを応援しているようなデザインでとても素敵。

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そして、その広告の前でマスダさんをパシャリ!実は今回のインタビューは広告の飾ってある『MAGNET by SHIBUYA109』で。渋谷のスクランブル交差点からこれが見えるという最高の景色だ。

なんでもおもしろそうな方へ転がっていくマスダヒロシさん。その未来はどんなおもしろい世界を作っていくだろう。
やりたいならやって、新しい価値観と出逢って、多少の声は無視して、自分の転がっていきたい方へ。そんな気さくでフレンドリーでいながらも、意志は強いマスダさんの魅力に触れることができた。

そして、私の初めてのぎこちないインタビューに快く応えてくれ、こうやって一歩を踏み出せたのは、まさにマスダさんから「勇気」と「寛容」をプレゼントしてもらったからだ。

私も責任を持って、自由に人と出逢い、自由に書いていきたい。そう思えた夜だった。

最後に、私も似顔絵を描いて頂きました!!
ありがとうございます♪

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Webマガジン「TheU」:http://theu.jp/


イラストを載せているInstagram:hiroshimasud


twitter:@_masudahiroshi

note:masudahiroshi


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