おにごっこ
子供のころから足が遅かった。足の速さは、人生で一番最初に直面する才能の格差だと思う。小学校中学年くらいまでの子供は、男も女も関係なく3人集まればすぐに鬼ごっこをする、馬鹿の一つ覚えみたいに。子供って馬鹿なんだろうな、因数分解もできないし。
「多数決=公平」という悪しき民主主義的思想が末端までこの国には根付いているので、ぼくひとりが鬼ごっこをしたくないと言ったとしても、鬼ごっこは無慈悲に開始される。そして開始30秒で鬼になったぼくは、捕まえられるはずもないのにゲーム終了まで走り回る羽目になる。じっとしてる方がよくない?
今になって思い返せば、「きみたちは鬼ごっこがやりたいんだね。でもぼくは足が遅いから遠慮しておくよ。だいじょうぶ、見ているだけで楽しいからさ」と言って断ることもできたかもしれない。でもそんな小学生は嫌だな。
最近は「友達作り」に似た感覚を抱いている。
個人差はあれどぼくを含め人間は、誰かと関わっていないと生きていけないので、新しい環境に置かれると、とりあえずそこで友達を作ろうとする。友達作りが得意な人は、すぐに周りの人に話しかけて、友達を作ることができる。ぼくみたいな知らない人に話しかけられないタイプは、常に受け身で、話しかけられるのを待っている。
よしんば友達ができずとも、「孤立しちゃった奴」という烙印を押されないように、一匹狼ぶってすました顔をしながら話しかけられるのを待っている。中学一年生のころの谷川くんのように。そんな顔をしている奴に話しかける物好きはなかなかいないので、結局だれにも話しかけられず、友達はできない。この時間が最高に辛いのだ。
人見知りかどうかは、ほぼ生まれたときに決定されているので、これは完璧に運ゲーである。来年度に進学するであろう国文学専攻で、そのようにならないことを祈るばかりだ。
追伸 谷川くん読んでたらごめんね、谷川くんは友だち沢山いたよね。