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ドリルではなく穴を求めている #122 ジョブ理論

現代は、VUCA時代と表現されるように、企業をとりまく環境は、変動的で不確実、さらに複雑で曖昧です。
その様な環境下では、現状は、需要がある製品やサービスであっても、極端な話し、皆無になる可能性もあり得ます。

例えば、顕著な事例がカメラです。
カメラですが、元々は、フィルムカメラでした。
フィルムカメラは、感光剤が塗布されたフィルムに光を当てると起こる科学反応を利用して画像を記録するものでした。
その後のデジタルカメラでは、フィルムカメラで必要だった現像が不要となり、一気に市場を占有することになります。
さらに、デジタルカメラとて、スマートフォンに押されて衰退しました。

VUCA時代では、自ずと消費者の価値観は多様化するのです。
対して企業としては、持ち得た独自の価値であるコアコンピタンスを活用して、その価値観に応えた製品やサービスを創造する必要があります。
もっとも愚かなのが、コアコンピタンスを企業の勝手な都合で消費者に押し付けてしまうことです。

その意味でも重要視させる考えが、イノベーションのジレンマの著者であるクレイトン・クリステンセン氏が提唱したジョブ理論です。

マーケティングでは、よく「ドリルを買う人が欲しいのは、ドリルではなく穴である」という言葉が使われます。
顧客は「穴を開けたい」というニーズを解決する手段の1つとしてドリルを選んだにすぎません。
それを表層的に捉えてしまうと、顧客が求めるニーズは、ドリルなのだと錯覚してしまいます。
そうなると、ドリルの改善にばかり捉われ、新しい視点から本質的な課題解決にたどり着くことができません。
大切なのは、製品やサービスがどのような機能や性能を提供しているかではありません。

ジョブ理論とは、顧客が、解決したい課題を具体化させることで、それを満たすための製品やサービスを創造することです。

そのジョブにたどり着くには、表層的な捉え方ではなく、深層的な捉え方が必要です。

そのために活用すべき手法の一つがロジックツリーです。
ロジックツリーとは、問題を解決しようとする際に、本質的な問題がどこにあるのかを絞り込む場面や本質的な課題に対して解決策を考える場面で上位概念を下位の概念に因数分解していくための思考ツールです。

この場合、ジョブである顧客が解決したい課題を具体化させるためWhy機能(Why?ツリー)を用います。

課題は、1つである場合もありますし、複数である場合もあります。
また、課題を見落としてしまうと、解決の効果が半減するどころか、まったく効果を得られなかったり、逆効果になる場合もあります。
それ故に横の論理であるMECE(漏れなく・ダブりなく)を特に重要視しなければなりません。

ジョブ理論では、顧客は、ジョブを解決するために、製品やサービスを雇っていると捉えます。
翻せば、企業としては、顧客に雇ってもらえる製品やサービスを提起する必要があります。
その意味でも、表層の製品やサービス中心の視点や顧客の顕在的なイメージなどではなく、さらに深層にある本質のニーズを追求することが重要です。
そこから初めて、顧客自身も気づいていないような潜在的な高い価値を持った製品やサービスを開発することことができます。

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