社会における存在意義 #133 アイデンティティ
企業とは、社会において、その存在意義がなければ、顧客に見向きもされなくなり、いずれ、淘汰されることを意味します。
それでは、何をもって存在意義なのかです。
心理学や社会学の分野に、アイデンティティ(identity)という概念があります。
その概念とは、「自分は何者なのか」であり、「自分らしさ」のことです。
しかし、アイデンティティを勘違いしている人が少なくありません。
アイデンティティは、他人との一方的な差別化とは違います。
そもそも、人は、他人とは根本的に「違う存在」です。
「違う存在」であるからこそ、「自分が何者なのか」を認識し、他人との違いである「自分らしさ」を明確にすることが大切です。
アイデンティティとは、その「自分らしさ」を意識して活かすことで、社会に貢献できるものと捉えてはどうかと思います。
これは、企業とて同様です。
企業が社会において、その存在意義を示すに不可欠なのが、コアコンピタンス(Core competence)です。
各企業が似たり寄ったりの理念を掲げたり、製品や技術、サービスを提供しても、需要と供給のバランスから限られた企業しか顧客を創造することはできません。
かといって、独自の価値を提供できたとしても、直ぐに他社に模倣されてしまうようだと意味がありません。
故に、コアコンピタンスとは、他社が容易に模倣できないコア技術などの価値であることが重要となります。
企業にとっては、このコアコンピタンスを持っているのか、持っていないのかが将来性を左右します。
スタートアップやベンチャー企業であれば、そもそも、起業するに当たって、先に立たねばならない部分です。
人のアイデンティティがあるのと同様に、企業版のコーポレートアイデンティティ(CI:Corporate Identity)もあります。
アイデンティティとは、「自分は何者なのか」であり、「自分らしさ」のことでした。
企業にとっての「自分らしさ」とは、正に、コアコンピタンスであるといえます。
故に、コーポレートアイデンティティとは、企業の「コアコンピタンス」を顧客に対して訴求するために、それを明確にし、イメージの統一を図る取り組みと解釈して良いかと考えます。
その戦略は、大きく3つから成り立っているとされています。
1.マインドアイデンティティ(MI)
コアコンピタンスを言語化したアイデンティティに落とし込んだもの。
要素:企業理念、ミッション、ビジョン、スローガンなど
2.ビジュアルアイデンティティ(VI)
言語化されたマインドアイデンティティを視覚に訴えるアイデンティティに落とし込んだもの。
要素:ロゴ、コーポレートカラーなど
3.ビヘイビアアイデンティティ(BI)
マインドアイデンティティから落とし込まれた、社員たちの企業らしい一貫した行動特性。
要素:社風、行動指針、マネジメント、文化、思想など
これら一貫したコーポレートアイデンティティをコアコンピタンスと紐づけることで、企業の「自社しか持たない強み」を訴求し、ブランドイメージを形成させます。
そもそも、コアコンピタンスとは、そのままでは、顧客が望む価値ではない場合が少なくありません。
如何に コアコンピタンスを活かして、顧客、そして社会が望む価値として提案できるかが重要です。
この自社独自の価値であり、顧客が望む価値は、USP(Unique Selling Proposition)あるいは、バリュープロポジションとも呼ばれています。
アイデンティティとは、「自分らしさ」です。
また、心理学によっては、自己認識と表現されたりもします。
その場合は、そもそもの、「自分とは何者か」の追求になってくるのかと思います。
そもそも、コアコンピタンスがないと嘆く声も聞こえます。
しかし、企業として存在する以上、必ず、何らかのコアコンピタンスがあるはずです。
まず、その種が社内にないかを探るべきです。
自分たちにとっては当たり前の価値でも、顧客や社会にとっては優れた高い価値になり得る場合もあります。
自分とは何者かを追求することで、自分の存在意義は高まるのだと思います。