製造の生産性を向上させる #123 制約理論(TOC)
マネジメントとは、企業が、その目標を達成するために必要不可欠なものです。
そこには、必ず、マイナス的な制約もあり得ます。
よって、マネジメントにおいては、それぞれの制約を常に顕在化させて改善に努めるとが大切です。
例えば、企業力を評価する場合に、生産性が用いられる場合があります。
生産性は、様々な切り口がありますが、企業の場合は、経費や時間など投じるものに対する売上や利益などの得られる価値の割合になろうかと思います。
製造業であれば、生産性を高める手法と言えば、従来は、コスト削減の一辺倒であったかに思えます。
しかし、コスト削減には限界があります。
更に無謀なコスト削減は、生産性を高めるどころか、低下させてしまう可能性もあります。
対して、操業実績の長い工場ほど、既成概念が強く、新しい手法を取り入れるにも抵抗感が強くなかなか受け入れられません。
製造業に向けた著名な書籍にThe Goal(ザ・ゴール)があります。
その中で提唱されているのがTOCです。
TOC(制約理論:Theory of Constraints)とは、サプライチェーン・マネジメントの理論の一つとして用いられるものです。
サプライチェーン・マネジメント(SCM:Supply Chain Management)とは、供給業者から最終消費者までの業界の流れを統合的に見直し、プロセス全体の効率化と最適化を実現するための経営管理手法です。
企業の財務上の成果を示すアカウンティングの観点から、組織をプロフィットセンターとコストセンターに区分する考え方があります。
プロフィット・センターとは、売上と経費が集計される部門であり、売上から経費を差し引いた利益を高める(プロフィットアップ)ことが課題となります。
対して、コストセンターは、経費のみが集約される部門となります。
ある工場が舞台となっているThe Goalでは、コストセンターであった工場が、指数であるスループット、在庫、業務費用を管理しながらTOCを推進することで、プロフィットセンター化して行く姿が描かれています。
(1) スループット
工場が生産したものの売上額や利益額
(2) 在庫
材料在庫額、仕掛在庫額、製品在庫額
(3) 業務費用
かかった経費額のすべて
これらは、決して単独で捉えるものではなく、それぞれが影響し合っています。
例えば、スループットが増えても、在庫や業務費用が同じように増えては意味がありません。
また、在庫や業務費用を削減しても、スループットも落ちてしまったら意味がないのです。
製造部門のマネジメントとしては、如何にして、在庫と業務経費の発生を抑えて、スループットを高めるかが重要となります。
TOCでは、生産工程を1本の鎖のようなものに例えています。
そして、この場合に重要なのは、その強度であり、それを決めるのは、一つ一つの輪の強度となります。
例えば、10個の輪で構成された鎖があったとします。
その際、9個の輪の強度が高かろうが、残された1個の輪の強度が弱ければ、1本としての鎖は、弱い輪の強度に制約されてしまうということです。
制約(Constraints)とは、「あるシステムが、ゴール達成のため、より高い機能へレベルアップするのを妨げる因子」と定義されています。(APICS:アメリカ生産管理在庫管理学会Dictionary,1998年)
製造の現場で考えた場合、処理能力が与えられた仕事と同じか、それ以下の工程を制約としてボトルネック(bottleneck)と呼ばれたりもします。
TOCを推進する5つの集中ステップです。
ステップ1 制約を特定する
↓
ステップ2 制約の処理能力を、最大化させるための活用策を決定する
↓
ステップ3 制約以外の工程のすべてをステップ2の決定に従わせる
↓
ステップ4 制約の処理能力を高める
↓
ステップ5 ここまでのステップで制約が解消したらステップ1に戻る
制約は必ずしも悪ではなく、単なる事象と捉えるべきです。
解消したら、必ず、新たな制約が生まれます。
惰性に陥らず、常に新しい制約である「ゴール達成のため、より高い機能へレベルアップするのを妨げる因子」を発見して解消させることが可能となります。
これらは、決して無限ループとは違います。
繰り返すことで、確実に、鎖は太くり、その強度は高まって、1本の鎖であるサプライチェーンが確立されます。
捉え方ですが、常に、新しい制約が生まれることはむしろ、ザ・ゴール(目標)の生産性に近いていると捉えるべきです。