101那須1

日本料理の食卓作法3‐B 「会席料理のいただき方」先附と前菜

2006年11月17日 (金)

1.先附(さきづけ)
   別名:突出し、お通し、箸染め、など…

「鴨のフォアグラ揚げ浸し チャイブ 紅柚子辛子」
「根三つ葉と白魚 酢醤油がけ」
「茶巾胡麻豆腐 木の芽味噌 土筆 花びら人参」
「白蒸し鰻 新生姜」

始めに出る一品は、次からの料理を期待させるものでありたいですね。

簡単に思える「お浸し」「和え物」「珍味」などを用意しますが、家庭料理ではない、どこかちょっと凝ったものをお出ししています。

味付けも吟味しますが、器も同様に選んで使いますから、ぜひ興味を持って見ていただきたいと思います。

比較的小ぶりの器を使うことが多いので、つゆのたれ落ちそうなものや細かいものの場合は、器を手に持って胸元ぐらいまで持ち上げて食べていただくとよいでしょう。

酢味噌や”あん”などがかかっている場合は、一度にかき回さずに、手前から少しずつ混ぜていただくのがお勧めです。

理由は、きれいに食べるためと、口に入れる直前で混ぜた方がより美味しいからです。

サラダだって、ドレッシングと和えるのは食べる直前ですよね、それと同じことなんですよ。

また、少量の盛り付けになっていますが、器を取り上げてから一気に食べてしまうのではなく、お酒や飲み物をゆっくりと飲みながら、その合間にいただくようにしましょう。

これは、もともとが”酒肴”としてつくられている料理ですから、お酒や飲み物をいただきながら食べるのに、ちょうどよい味付けになっているからです。

そして調理場では、召し上がっているあいだに次の「前菜」を盛り付け、「お椀」の準備を始めます―。

2.前菜(ぜんさい)
   別名:前肴、前八寸、小八寸、など…

「養老豆腐黄味酒盗掛け 梅甘露煮 するめ巻き
 色紙数の子 酢橘釜白和え」
「鯖寿司 すすき牛蒡 揚げ銀杏 甘栗 川海老
 衣かつぎ 鱚」
「塩辛 海老菊花寿司 からすみ もって菊胡麻和え
 胡桃丸十」

前菜は、茶懐石の「八寸」や本膳料理の「口取り肴」の流れをくみ、山海のもの、季節のもの、塩味や甘味を取り合わせて、少量ずつ3・5・7種類を盛り付けたものです。

まずは盛り付けの美しさを目で味わっていただき、手前や端からその盛り付けをくずさないように召し上がっていただくと、味の濃淡がバランス良く感じられるようになっています。

基本の盛り付けから言うと、中央手前から右、左と食べ進んでいただくのが良いとされていますが、今はさまざまな盛り付け方がありますので、あまりこだわらなくても良いようです。

盛り付けに使われる器は、比較的平らで深みの無いものがほとんどです。

デザイン上、さらに小さい器や貝殻、木の葉などに盛り付けてあったり、串に刺してあったりしますので、どうやって食べようかちょっと迷う、ということもありますね。

串に刺してあるもの(田楽や松葉串、団子など)は、まず箸先で押さえながら左手で串を抜いてしまいましょう。

抜きにくいときは、串をまわすようにすると、身から離れて抜きやすくなります。

抜いた串は、器上の手前か向こう側へ置き、外した身を箸で召し上がってください。

小さな器に入っているものは、先附と同じようにその器を手に持って召し上がれます。

水気のあるものや、細かいものを盛り付けてあることが多いので、こぼしたり、たれたりすることを気にしてかがみこんで食べるよりは、思い切って器を持って召し上がると良いでしょう。

しかし、貝殻などを器代わりにしてある時は、手に持つというわけにいきませんね―。

そんな時は、ぜひ「懐紙」を受け皿がわりに使ってみてください。

さて、よくいただくご質問に、
「酒の肴なのに、なぜ前菜には甘いものが入っているのか」
というものがありますが、それには以下のような理由があります。

人間の舌は、同じ味付けにはすぐ慣れてしまいますから、たとえば塩味のものばかり食べていると、どれも同じような味に感じてしまうんですね。

そこで、甘味を組み合わせることにより、いったん舌をリセットしてもらうというわけです。

日本料理の味付けは「五味(甘・鹹・辛・酸・苦)」のバランスですから、どこかに少しずつそれらが入っているということになります―。


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