0701蕗の薹4

苦味が滋味の山菜料理

2006年3月 5日 (日)


庭のスミに、フキノトウが出始めました。

どんな田舎だと思われるでしょうが普通の住宅街ですし、生えているのも門の外の小さなスペースなので、ご存知よりが持っていかれたりもします。

拙宅の庭には、他に梅の木が2本、月桂樹が1本、ネギとフキが少々、ミョウガが少し―。

大きくなった山椒は、あまりにも虫がつくので、2年ほど前に切りました。

狭い庭ですが、自分達で料理に使うぐらいのものが取れるので、いろいろと助かります。

しかし、手入れについては両親に任せっきりで大ズルをしていますので、少々肩身が狭い思いも…。

ふきのとうが出てくると、春先の愉しみは、やはり山菜かな…。

他にも、つくし、たらの芽、こごみ、わらび、のびる、うど、つくし、せり、いたどり、かんぞう、はこべ、うるい等々、たくさんの滋味が嬉しいですねぇ♪

今月の献立にも、たらの芽、ふきのとう、こごみ、のびるが使われています。

料理のあしらいとして、ほんのちょっと入っただけでも春の雰囲気が伝わりますし、お客様にもたいへん喜ばれますから、やっぱり欠かせません。

山菜は、苦味、渋み、ぬめりが特徴です。

採ってきたそのままでは、とても食べられないほどアクが強いものも、なんども水を替えたり、ゆでこぼしたりして食べられるようにする―。

山の恵みを大事にしてきた先達の知恵は奥深く、素晴らしいと思います。

日本料理は、「五味」を基本として作られています。

「五味」とは、「甘・鹹・辛・酸・苦」(かん・かん・しん・さん・く)の五つで、それぞれ
「甘い・塩辛い・辛い・酸い・苦い」
ことを指しますが、料理は、すべからくこの五つの味を組合わせてバランス良くつくるべし、ということですね。

このなかで「苦い」と言う味は本来、人間にとって快いものではありません。

苦味を不快と感じるのは動物としての本能だと言われていますが、それは、苦味成分には大量にとると害になるものが多いからなのです。

特に野菜や山草の苦味成分には、タンニン、カフェイン、キニーネ、ストリキニーネ、ニコチン、コカイン、モルヒネなどのアルカロイド系が含まれていますが、それでも、料理の一部として召し上がる分には、害になるほどの量ではありません。

むしろ、わずかな苦味が他の食べ物の味を引き立てたり、食欲をそそってくれたりしますし、山野草以外でもビールに使われるホップや、コーヒー、緑茶、チョコレートなどから苦味が無かったら、なんとも味気ないものになるでしょう。

そういう意味では、「辛い」という刺激的な味とともに「苦い」という味が、私達が口にする料理をいっそう立体的にし、奥行きを広げ、楽しく複雑にしてくれていると思うのです。

また、どなたか忘れてしまって申し訳ないのですが、お医者様が書かれた本の一節に、こんな内容がありました。

それは、寒い冬の間、あまり活動的でなくなり、新陳代謝も落ちた人間の身体には、排出しきれない老廃物や毒素がたまりやすいということ、ところが、春になって山菜や野草を食べると、含まれるアクの渋みや苦味でそれらがキレイに排出され、身体の中がリセットされて、活動的な季節にふさわしい体調になっていくこと、人は長い間の経験で、そういう素晴らしい知恵を実践してきたということなどが書かれていました。

これを読んだ時、理屈もなにもなく、ストンと腑に落ちたことを覚えています。

春先の私達は、動物的な感覚で正しく、身体に良いものを美味しいと感じるように出来ているんですねぇ…。

そういう感覚を取り入れながら発展してきた料理とは、まさしく「命をつくるもの」ですね。

飽食の時代ではありますが、先のことはわかりません―。

毎日の、普段の季節の食を、大切にしていきたいと思います。

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