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日本料理の食卓作法Ⅰ―B「日本料理の大別・詳細」

2006年1月31日 (火)

<B.日本料理の大別>

・本膳料理(武家社会)
・会席料理(町人文化)
・懐石料理(茶の湯)
・精進料理(仏教修行)
・普茶料理(中国仏教)
・卓袱料理(唐人伝来)

1.本膳料理(武家社会)

武家社会の中で確立されていったこの料理は、作り方・出し方・食べ方に厳密な作法があり、会食自体も、午後から始まって夜更けまで長時間かかるという、大変なものでした。

本膳料理には次のような膳が用意されましたが、現在ではほとんど出されることはなく、一部略式の料理が残るのみとなっています。

・本膳(一の膳)
・二の膳
・三の膳
・与の膳
・五の膳
・六の膳
・七の膳
・引き替え膳
・夜食膳

※略式本膳…別名「袱紗(ふくさ)料理」

袱紗(ふくさ)とは、「略式」という意味があり、本来の本膳を略した料理となります。

上記のうち、本膳(一の膳)と二の膳に、焼き物膳または引き落とし膳が付きます。

一汁三菜(一の膳のみ)、一汁五菜(二の膳付き)、二汁五菜(三の膳付き)などがあり、本式の本膳料理ほどは、出し方や食べ方に細かくは無いようです。

2.会席料理(町人文化)

この料理は、江戸時代の中ごろに裕福な商人達によって考え出されたと言われています。

もともとは、趣味の「俳諧」の会に集まった人たちに出された料理で、こういう集まりを「会席」と呼び、その席での料理ということで「会席料理」と言われだしたようです。
      
・先附
・前菜
・お椀
・お造り
・煮物
・焼物
・揚物
・酢の物
・食事
・水菓子

この料理はお酒を楽しむために考え出されたものなので、料理そのものの形式や食べ方に、これといった決まりごとはありません。

出し方にも特に決まりはないのですが、現在では、洋食のフルコースのように1品ずつ出てくる、「喰い切り料理」と呼ばれる方法が多いようです。

3.懐石料理(茶の湯)

この料理は「茶事」に出される料理であり、本来はお茶を美味しく飲んでいただくために、亭主が心づくしのものをお出しするという、簡素な食事のことです。

基本的に、茶事以外で出されることは無いのですが、「会席」と音が同じため混同され、和食店の一部でも「懐石」と表してしまうところがあるようです。

・折敷(ご飯・椀・向付)
・酒
・椀盛り
・焼物
・強肴(しいざかな)
・箸洗い
・八寸
・湯斗
・香の物
・薄茶
・濃茶

4.精進料理(仏教修行)

この料理は、日本料理の根元とも言われます。

仏教の教えに基づき、肉・魚介類を使わずに仕上げた料理のことですが、他の料理とは一線を画しています。

それは、この料理が「本膳」や「懐石」のように様式ではなく素材を表していること、また、料理をする人の心の在りようや仕事に対する姿勢など、修行の一環としての料理方法、食べ物、食べ方までが「精進料理」というものの意味に入ってくるからなのです。

しかし一般的には、修行僧達の食事ではなく、「客膳」といって、参詣者向けの料理のことを指すことが多いようです。

・向付
・汁
・前菜
・飯
・椀盛り
・口取
・揚物
・浸し物
・吸い物
・香の物
・湯桶
・季の実

5.普茶料理(中国仏教・茶)

この料理は、京都宇治にある「黄檗山万福寺(おうばくさんまんぷくじ)」から広まった精進料理で、煎茶流とかかわりが深く、「煎茶道の懐石料理」とも呼ばれています。

万福寺の開祖は、中国からの帰化僧(明の隠元禅師)であり、そのため中国風の料理、卓のしつらえとなりました。
(円卓で、大皿盛りということです)

「普く(あまねく)茶をふるまう」という精神から、上座下座の無い円卓を囲み、料理も大皿に盛り込みになったものをみんなで取り分けるという、「仏の前ではみな平等」という思想が反映されています。

・素汁
・麻腐
・前菜
・笋羹
・油鰦
・鉢
・澄子
・添菜
・飯箪
・東坡煮
・骨董煮
・醃菜

6.卓袱(しっぽく)料理(唐人伝来)

この料理は長崎独特のもので、江戸時代の元禄年間に始まったとされています。

唐人船で渡ってきた中国料理の影響を受けて、円卓に人数分の料理が並びますが、さらにオランダの影響も受け、「和華蘭(わからん)」の折衷料理となっています。

ちなみに、「卓袱(しっぽく)」とは「テーブルクロス」のことです。

1人分ずつ出るのは、初めの「御鰭(おひれ)」と最後の「梅椀」だけであり、他の料理はすべて大皿盛りで出されます。

・御鰭
・小菜盛
  刺身 豆類 酢の物 口取り三品盛り
  揚げ物 焼物 香物
・中鉢
・大鉢
・水菓子
・梅椀

※小菜盛は、奇数の品数(3品・7品など)で出されます。
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日本料理には、上記のほかにも「○○料理」と呼ばれるものがたくさんあります。

郷土料理にも多くの特色があり、枚挙にいとまがありません。
いやー、ホント良いとこだよね、日本。

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