デザイン思考「問題定義」の例
- プロセスの1つ「問題定義」の書き方と例 -
問題の定義の仕方
デザイン思考における問題定義のステップは、解決すべき本質的な問題を明確にすることが目的です。これにより、創造的なアイデアが生まれやすい土壌を整えます。「〜するにはどうしたら良いか?」という問いかけは、解決策を見つけるための具体的な出発点を提供します。今回は、効果的な問題定義のための具体的なアプローチを説明します。
1.ユーザーの体験を中心に置く
「ユーザーが〜したいときに、どうしたらもっと簡単に/効果的にできるようになるか?」という形で問題を定義します。ここで大切なのは、ユーザーの体験とニーズに焦点を当てることです。例えば、「ユーザーが健康情報を管理したいとき、どうしたらもっと簡単に追跡できるようになるか?」という問題定義が考えられます。
2.明確かつ具体的に問題を設定する
問題定義は、明確かつ具体的であるべきです。あいまいさを排除し、特定の行動や目標に関連する問題に焦点を絞ります。「〜するにはどうしたら良いか?」の「〜」の部分をできるだけ具体的にします。
3.解決策の開かれた問題を設定する
解決策が一つに限定されないように、開かれた問題定義を心がけます。「どのようにして〜を改善できるか?」という形式で問題を設定することで、複数の解決策が考えられるようにします。例えば、「どのようにしてチームのコミュニケーションを改善できるか?」という問題定義からは、様々なアイデアが生まれます。
4.根本的な問題に対処する
表面的な症状ではなく、問題の根本原因に焦点を当てることが重要です。「〜の根本的な原因は何で、どうしたら効果的に対処できるか?」という形で問題を再定義することで、より本質的な解決策を見つけ出すことができます。
5.問題定義の適用
例えば、オフィス環境における生産性の低下を問題とする場合、以下のように問題を定義することができます。
不明瞭な問題定義:「どうしたらオフィスの生産性を向上できるか?」
効果的な問題定義:「オフィスで働く従業員が集中力を維持するのに苦労している。どのようにして、彼らの作業環境を改善し、集中力を高めるサポートができるか?」
後者の問題定義では、具体的な課題(集中力の維持)と目標(作業環境の改善)が明確にされており、より具体的な解決策が浮かびやすくなります。
6.問題定義の例
もう少し例を挙げて、問題定義の仕方を示したいと思います。
顧客サービスの改善
不明瞭な問題定義:「どうしたら顧客満足度を上げられるか?」
効果的な問題定義:「顧客からの問い合わせ応答時間が長いことが顧客満足度の低下に繋がっている。どのようにして、問い合わせに対する応答時間を短縮し、顧客の待ち時間を減らすことができるか?」
新製品開発
不明瞭な問題定義:「どうしたら市場に受け入れられる新製品を開発できるか?」
効果的な問題定義:「若年層は健康に関心が高いが、忙しさから健康的な食生活を送ることが難しいと感じている。どのようにして、彼らの生活にフィットし、手軽に健康的な食事を提供できる製品を開発できるか?」
リモートワークの生産性向上
不明瞭な問題定義:「どうしたらリモートワークの効率を上げられるか?」
効果的な問題定義:「リモートワーク中の従業員は家庭との境界が曖昧で作業に集中できないことが問題となっている。どのようにして、家庭生活と仕事のバランスを取りながら、集中して作業できる環境を提供できるか?」
エネルギー消費の削減
不明瞭な問題定義:「どうしたらエネルギー消費を削減できるか?」
効果的な問題定義:「オフィスビルのエネルギー消費の大部分は冷暖房によるものである。どのようにして、オフィスビルの冷暖房システムの効率を上げ、全体のエネルギー消費を削減できるか?」
学習支援アプリの開発
不明瞭な問題定義:「どうしたら効果的な学習支援アプリを開発できるか?」
効果的な問題定義:「学生は複数の科目を効率的に管理し、学習することに困難を感じている。どのようにして、複数の科目の進捗を一括で管理し、学習計画を立てやすくするアプリを開発できるか?」
7.具体的で明確であることが重要
これらの例からわかるように、問題の定義は、具体的で明確であることが重要です。また、ユーザーのニーズや痛み点に根ざした問題定義は、より効果的な解決策を導き出すための基盤となります。問題を深く理解し、正確に定義することで、創造的なアイデアが生まれやすくなり、プロジェクトの成功につながります。次回は、次のプロセスを説明していきたいと思います。