見出し画像

私とわたし

子供の頃の小さなわたし

不思議そうにこっちをみてる

田んぼの間を駆けずりまわって

にたにた笑って泥んこまみれ

膝を抱えた私をみると

笑みを隠して口を開いた


だいじょうぶ?


小さいわたしがこっちをうかがう

私はその幼く無垢でガラス玉の様な瞳を

直視するのが痛くて怖くて

小さいわたしに

あっちに行って

こっちを見ないで

会いたくないから
どっかに消えて


そう言っては

ぎゅっと目を閉じ
耳を塞いだ


風の吹かない部屋の隅で

私の心音だけがこだまする


ごめんなさい

そう小さいわたしが言ってきたもんで

余計に後ろめたい想いが血管を巡った


小さいわたしが心配になり

目を開けたけど

そこはただの無風の部屋


遠くに聞こえる車のエンジン音と工事現場の作業音が

ここがメルヘンの世界ではないことを
私に知らしめてきた

人に生まれて

人の間で

生きながらえることは

すごく大変で すごく誇らしいこと

小さなわたしは

大きな私をみては悲しい想いを抱いたのであろうか


私はそう考えたら
もっと自分に綺麗な風景を見せてあげたいと
穏やかな風の吹く油絵の様な色彩の街で
営みを続けたいという赤い想いがポッと浮かんだ

ここは君の未来じゃないよ

今からそっと ゆっくりじんわり描き足していくね

そこでいっぱい駆けずりまわってどろんこなわたし

けたけた笑ってにんまり

よーいどん



この記事が参加している募集

スキしてみて

私の作品紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?