![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/54643023/rectangle_large_type_2_f3b1ee0fc708ba19c4b707f84419ffcd.png?width=800)
Photo by
ima_doco
獅子鰯
田んぼの淵で皆一緒 カカシの様に突っ立って
遠い昔を見つめてる 口をあんぐり開けたまま
仄暗い深海と勘違いをした鰯の群れが
夜空を滑空する様は
数秒おきにシュっと煌めく
獅子座の頃の流星群
田舎の秋の真夜中は 耳が赤く染め上がる
鼻の頭も染め上がる
畦道外れの車の窓から毛布を纏った妹が
顔を迫り出し笑ってる
寒気や眠気は一閃の光束に
射抜かれたから消失中
幾度も落ちる希光の探求は
幼い私の全感脈を撃ち抜いた
レ点の美学やxyまで
ここではどうでもよい話
ただ目の前の額縁の無い大きな美画に
肩まで浸かってのぼせるだけだ
簡素な夜空を遺れるくらいに
光の線の多弾幕
田んぼに堕ちたら来年は艶と遊んだ米になる
遠くに建ってるデパートの頭に堕ちたら屋上で
鰯を乗せたゴーランド
私の背筋に堕ちたから 理屈を神秘が凌駕した
シュー シュー シュー
と気づいたら薄ら空なり水色迫る
光の群れの残景が私を酷く誘うから
私はあの日の尊い夜から
年月跨いだ今もそこでたったひとりの置いてけぼり
あれ以上の甘美な夜を知らないまんまの夜幻奏
綺麗が故に大人の鰯となっていた
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?