【3300PV突破】残酷な東大入試の実情―地方公立出身者はいかにして立ち向かうべきか【地方公立出身の東大文系不合格者が語る】
この記事は、東大文系を志望する、東大合格者が毎年0〜数人の地方公立高校に在籍する生徒に向けて書かれたものである。この記事を読むにあたり、必要な前提となる知識は以下の3つである。①有名大学の名称・大学入試の仕組み・難易度についての知識②有名予備校についての知識③東大受験についての基本的な知識(一部はこの記事でも解説しているが、予備校の東大専門サイト等でより深い知識を得た上で読んでほしい)である。
3月10日の東京大学入学試験の合格発表で不合格になってから、約1年が過ぎた。約1年も経っているというのに私が今さら受験勉強について書くのは、東大入試というものが、私の人生で1番熱意をもって取り組んだものであり、かつ1番忘れられないものだからだ。
過去の自分を振り返ると、様々な反省点が浮かんでくる。それらをまとめ、練り直して、東大合格者がほとんどいない地方(関東を除く地域を指す)公立高校から東大に合格する方法として、これから東大の門を叩くみなさんに伝えたいと思う。私が高校に入学し東大に受かる勉強法について調べていたとき、「地方」の「公立」高校にいるということが東大受験においてどのような立ち位置なのか、どれほど厳しい状況なのかを教えてくれる記事は全くなかった。このサイトを高1のときの自分が見ていたら非常に参考になったであろう記事を書くつもりである。地方公立高校から東大に合格するのは、決して楽な道のりではない。しかし、みなさんが本気で立ち向かえば必ず道は開けると信じている。
私の自己紹介をしておこう。私は地方公立トップ高の出身で、中学生のとき東大を志し、現役・1浪と東京大学文科Ⅲ類を受験した。現役時は東大模試でE判定D判定を連発し、余裕で不合格となった。1浪時には東大模試でA判定を複数回取ったものの、結局は不合格となった。今は滑り止めの大学に通っている。地歴は世界史地理(理科基礎は生物化学)選択であり、得意科目は国語・世界史で、苦手科目は数学(大の苦手)だった。現役時は某衛星予備校に通い、1浪時は、名前は明かさないが、有名予備校に通っていた。
この記事はあくまで概論なので、各教科の具体的な受験勉強の方法については言及しない。この記事は、基本的に文系受験生に向けて、東大入試というものがいかなるものかを分かってもらうためのものだ。地方から東大を目指すということがいかに難しいか、いかに不利かということを認識し、おおまかな東大受験のイメージを把握し、東大合格者がほとんどいない地方公立高校から東大に合格するために、どのような計画・習慣をもって勉強をすればよいのかを知ってもらうことが目的である。ここまで読んで、「不合格者の話など聴きたくない」と思ったなら、ブラウザバックしてもらって構わない。私もそれを承知でこの記事を書いているし、なにより、そのような方々の時間を無駄に使わせてしまうことが最も重い罪だからだ。この先を読む人は私をある程度信じてくれるということだろうから、私もその期待に応えられるような情報を提供したいと思う。
「終わり良ければすべて良し」という言葉があるが、裏を返せば、成功した者は過程がどうであろうと自らを肯定するということだ。「東大に合格する方法」と銘打った記事はネットに多く存在するが、そのほとんどが合格者によって書かれたものだ。一般的に合格者は自分のしてきた受験勉強全体を肯定するから、受験生向けの記事を書くことになっても、自分の勉強法にさらなる磨きをかけて受験生に伝えようとはしない。ただ自分がどういう勉強をしたかを語るだけだ。彼らが合格したという事実が、彼らの勉強法が全体的に「正解」であったということの証左になっているからである。ところで、世の中にはこう思う人もいるかもしれない。「勉強法というのは合格した人のみが語るべきだ。不合格の人は間違った勉強をして落ちたのだから、その間違った勉強法について語る資格はないし、聴く意味もない。」しかし、本当にそうだろうか?そもそも、万人にとって「正しい」勉強法は存在するのだろうか?不合格者は皆「間違った」勉強をしたから、不合格になったのだろうか?受験生のやるべきことは、数多くの先人達の言葉を分け隔てなく聴き、自己を研鑽することなのではないだろうか? 逆に、不合格者はなぜ結果が悪かったのかを探るために過程をじっくり検討するから、その分自分のしてきた勉強に多大な反省を加え深い考察ができるということもありうるのではないだろうか?
こう考えてみると、合格者の話も聴く価値は十分にあるが、不合格者の話はさらに聴く意味があるような気はしないだろうか?
では、始めよう。
東大は、他の旧帝大/一橋とはワケが違う
この記事を読んでいる人の中には、私と同じく地方公立トップ高に在籍する人もいるだろう。あなたの高校は、地方旧帝大や有名国立・公立大に多くの合格者を輩出しているかもしれない。しかし、東大をそれらの大学と同じように考えてはいけない。
まず知っておいてもらいたいのは、東大を除く旧帝大・一橋・筑波・横国・神戸など(以下、難関国立大学)と東大の間には、難易度の差がかなりあるということだ。日本では東大・京大(一橋・東工)が最高ランクの学歴と言われるが、東大の難易度はその中でも最も高い。京大や一橋も難しいが、地方公立高校から東大or京大・一橋のどちらかを目指すのであれば、京大・一橋の方が簡単だ。理由は3つある。
1つ目の理由は、受験層の差だ。これは後で詳しく述べる。基本的に地方旧帝大の前期試験を受けるのはその大学がある地域の受験生であり、レベルはもちろん高いが、割合でいうと公立高校出身者が多い。だから、開成や筑駒、桜蔭、渋幕、渋渋、麻布、駒場東邦、聖光学院、浅野、栄光学園、海城、東海、灘、甲陽学院、東大寺、西大和、愛光、ラ・サールといった全国の名門中高一貫私立出身の受験生がこぞって受験する東大と比較すると、どうしても劣る。一橋も、基本的に東大を受けない人が前期試験を受けるため、受験生のレベルは東大には劣るだろう。東大には全国の進学校出身の受験生が集まり、ハイレベルな戦いが繰り広げられる。東大文系は、全体的に見て文系の中では最優秀層となることは明らかだろう。地方公立高校出身者はこの中で勝ち抜いていかなければならないのだ。
2つ目の理由は、科目数の差だ。京大・一橋で要求されるのは国語・数学・英語・地理歴史1科目だが、東大は国語・数学・英語・地理歴史2科目である。東大の地理歴史は、世界史の大論述などを除くと30〜120字の記述が主であり、地歴1科目で合格点である6割前後を取るのにもかなりの労力を要するので、2科目となると相当な負担になる。また、一橋では現代文や文語文、現古融合文などが主に出題され、京大では古文・漢文のどちらか一方が第3問で出題されるのに対して、東大国語では必ず古文漢文どちらも出題される。こうしたことから、受験勉強に要する労力から見ると、東大の方が京大・一橋より難しいというのは明らかだろう。
3つ目の理由は、難関国立大学の入試問題が、地方公立高校出身者にとって比較的対策しやすいものだということだ。たとえば英語について、京大がその典型例だが、基本的に難関国立大学の入試問題は、長文読解(英文和訳/内容説明/内容一致等)・英作文(和文英訳/自由英作文等)が問題の多くを占める(ただし、一橋の英語ではリスニングが出題される)。長文読解・英作文は地方公立高校の授業でも多く扱われるため、ある程度馴染みのある問題形式となっている。
その一方で東大は、英検1級レベルのリスニングの配点が総得点の1/4を占め、和文英訳・英作文の配点は総得点の1/4ほどにすぎない。リスニングはイギリス訛りが強く、高度な学術的内容を含み、(A)(B)(C)それぞれが4,5分程度の長さであるため、東京外国語大学等、一部の外国語大学等を除けば、東大のリスニングは国立大学の中でも最高難度だ。長文読解は求められるスピードが桁違いであり、内容も、要約・欠文補充/段落整序・文法/語法・和訳・エッセイ/小説と多岐にわたり、時間制限も極めてシビアなものになっている。このような問題形式には、地方公立高校の授業ではなかなか対応しにくい。基本的に地方公立高校の授業というのは、近辺の国立・公立大学への進学を前提として授業内容が構成されている。そのため、極めて特殊な東大の問題形式・シビアな時間制限に対応する能力は、地方公立高校の授業では普通は養われないのだ。
〈出典:Studyplus https://www.studyplus.jp/569〉
私が予備校で浪人していたとき、友達の京大受験生(有名中高一貫私立出身)が何人か東大模試を受けた。彼らのうちの多くが、京大英語で7~8割を取って京大に合格したが、当時の彼らの東大英語の結果は惨憺たるもので、120点満点中、30〜40点後半ほどしか取れていなかった。このように、京大や他の旧帝大・一橋等の難関国立大学の英語の対策をしていても、東大英語に対応するのは帰国子女でもない限り相当難しいのだ。だから、一般的な国立・公立大学に対応した地方公立高校の授業で東大英語に必要な力をつけるのは、かなり厳しいと思ってもらいたい。
他の科目に関しても、国語では、京大の場合、かなり広めの解答欄が与えられるのに対して、東大では基本的に縦135mm、幅8mmほどの解答欄が1~3行あるだけで、短く文章をまとめる能力が要求される。さらに、先ほども書いたが東大国語は古文・漢文どちらも解かなければならない。数学では、東大と京大どちらが難しいと一概には言えない(大問の数と試験時間でいえば、東大は4問で100分、京大は5問で120分であり、1問あたりにかけられる時間はほぼ同じである)が、京大の場合、大問1つにつき1枚解答用紙が与えられ、それに付属するメモ欄(解答欄として使用可)を含めればかなり解答スペースがある。それに対して、東大では表裏2問ずつ解答欄がある1枚の解答用紙が配られるのみで、大問1つあたりの解答スペースは京大の半分以下となり、答案を簡潔に書く能力が要求される。また、世界史・日本史では、京大の場合、一問一答形式の問題で6~7割配点がある。一方、東大においては、一問一答形式の問題は世界史(60点満点)で10点ほどの配点しかなく、また日本史に至ってはすべて数十字の記述問題であるから、一問一答で点数がもらえる問題は存在しない(一橋の世界史・日本史の論述は非常に難易度が高く、東大より難しい場合もあると思われるが、ここで東大と比較しているのは、あくまで難関国立大学全体だと理解していただきたい)。こうしたことも、地方公立高校出身者が京大をはじめとする難関国立大学は対策しやすくても、東大の対策に苦戦する要因になっている。私は地方公立トップ高で高3の春の実力テストで学年3位を取り、その後も学年1ケタには入っていたが、先ほど述べたように、現役生のとき東大模試ではD判定とE判定しか取ったことがなかった。
受験層、求められる能力の幅広さ、英語の難易度等から見ても、東大は別格だ。もしあなたに難関国立大学を目指す友達がいたとしても、彼らのペースに合わせていては、合格はつかみ取れないのだとわかってほしい。彼らを余裕で追い越していなければならない。
「地方」にいるということ、「高校受験経験者」だということ
次のデータを見てほしい。1枚目は2020年、2枚目は2018年の、東大入試合格者の出身地別割合である。〈1枚目出典:東大研究室 https://juken.y-sapix.com/articles/11047.html〉〈2枚目出典:東大2019 東大オモテウラ(2019)、東京大学新聞社、p.94〉
このデータを見て驚いた人もいるのではないだろうか?そう、東大合格者の約6割が関東出身なのだ。この時点で、東大入試には、地元である関東地方からかなり多くの受験生が集まり合格しているといえる。このような結果になる要因については、後で詳しく述べる。
「地方」出身の東大合格者が少数派であるとわかったところで、次のデータを見てもらいたい。1枚目は2017年、2枚目は2018年の、東大入試合格者の出身校別割合である。〈1枚目出典:東大2018 たたかう東大(2018)、東京大学新聞社、p.24〉〈2枚目出典:東大2019 東大オモテウラ(2019)、東京大学新聞社、p.28〉
東大合格者の約2/3が中高一貫の私立または国立・公立高校の出身なのである。この「中高一貫の国立」出身の生徒は、多くが筑波大学附属中学校・高等学校、あるいは筑波大学附属駒場中学校・高等学校の出身だろう。中学受験をせず、高校受験で高校に入学した東大合格者自体が少数派だということがわかると思う。また、調べればわかるが、東大合格者における公立高校出身者の割合の低さは京大・一橋・東工大と比べて顕著である。
この4つのデータから得られる結論は、「地方」×「高校受験経験者」のカテゴリに属する地方公立高校出身者は、東大合格者の中では少数派であるということだ。地方公立高校出身の受験生が、東大合格というゴールから最も離れた位置にいるということは、疑いようがない事実なのだ。
※都会と地方の教育格差については、以下の学習塾千桜舎の「大学受験における残酷な真実」も参照してほしい。
当時高校生だった私は、このデータを見たとき、自分と同じカテゴリに属する合格者が少ないことは理解できたが、大して自分が不利な状況にあるとは思わなかった。「自分には関係ない」と思った。東大は東京にあるから関東出身の受験生が多いのは当たり前で、地方公立高校出身者が少ないのは、そもそも地方公立高校から東大を受ける人が少ないからだと思っていたのだ。きちんと勉強すれば合格できると信じて疑わなかった。確かにそれは一理あるし、実際に合格している人もいる。しかしながら、地方公立高校出身の受験生が東大受験において最も不利であることは残念ながら事実である。地方公立高校出身者が東大受験において最も不利になる要因は、大きく分けて2つある。それらについて述べていこう。
1つ目の要因は、時間の差だ。すなわち、中学受験経験者と高校受験経験者とでは、大学受験のために費やす時間が圧倒的に違うということだ。多くの名門中高一貫私立では、公立中学の生徒が3年かけて勉強する内容を、入学してから最初の1年ほどで終わらせてしまう。つまり、名門中高一貫私立と公立高校の大学受験のために費やす学習時間の間には約2年、公立高校出身者が浪人したとしても約1年という、相当大きい学習時間の差が存在するのだ。こうした名門中高一貫私立の生徒たちは、高校に上がるころには既に公立高校の2年生までの学習内容を終えていることになる。公立高校の生徒が高3の1学期までかけて数学Bを学習しなければならない(私の高校ではそうだった)のに対して、名門中高一貫私立の生徒は、文系であれば高1の終わりで1A2Bまでほぼ学習し終えていることになる。つまり、文系数学の場合、出題範囲を学習し終わったうえで入試対策に専念できる時間が、公立高校は約0.6年である一方、名門中高一貫私立は約2年もあるということになるのである。数学以外の教科においても、かなりの学習時間の差が生じていることは間違いない。公立中学の場合、様々な学力層の生徒がいるが、名門私立中学の場合、高い学力(特に算数において)を持った生徒を中学受験の段階で選抜しているので、非常にスムーズに学習を進められるのだ。
基本的に、東大を受験しようと志す人の間には、理Ⅲの一部の人間を除けば、才能の差はそこまでないと思われる。差を生むのは、小学生のうちに激しい競争の中で頭をフル活用した結果得られた高い学力と、大学受験のために費やした時間の差なのだ。大学受験というのは、暗記したことを問題に合わせコンバートして出力するか、あるいは経験から未知の問題に対する解答を導き出せば高い得点が出るゲームだから、憶えている知識・積んできた経験が多い方が有利に決まっている。東大についていえば、地理歴史2科目を勉強しなければならず、他の教科においても求められる知識の幅が広く、高い問題処理能力が要求されるのだから、長い時間を費やして知識を獲得し経験を積んできた人の方が圧倒的に有利だ。こうした受験の性質から見ても、中学受験を経験することがいかに大学受験(特に東大受験)にとって有利なのかがわかると思う。地方公立高校の生徒がどれだけ頑張っても埋められない学習時間の差が、そこにはあるのだ。
2つ目の要因は、環境(情報)の差だ。東大合格者を何十人も輩出している名門中高一貫私立には、受験指導に関する情報が多くあり、東大受験の指導に長けた先生が大勢いる。彼らは非常に高い指導力を持ち、東大を始めとする難関大学の入試問題を長年研究しているため、地方公立高校の先生とは比べ物にならない実力を持っている。地方公立高校の場合、東大出身の先生、あるいは子どもの受験等で東大に詳しい先生がいればまだいい方で、東大受験の経験がなく、近辺の大学の問題は見たことがあっても、東大の過去問すら見たことのない先生が大多数である。また、そのような名門中高一貫私立には、毎年東大受験をする高3生が数多くいるため、後輩たちは先輩がどのような勉強をしているのかを見たり、訊いたりできるうえに、「先輩たちが合格したのだから、自分たちも合格できるはずだ」という自信が生まれる。さらに、同学年にも東大志望が多くいるから、切磋琢磨でき、「学年で何位以内に入れば合格圏内」といった目標を設定しやすい。さらに東大合格者数ランキング上位に食い込む超進学校になると、東大専門の対策講座を学校独自で行うところも多い。これは、東大合格者がほとんどいない地方公立高校では不可能なことだ。
さらにもう一つ大きいのが、東大に特化した塾や予備校の存在だ。東京都内や近畿圏には、東大合格者を生むための専門のサービスが存在する。某特進コースや某会等がそれに該当する。公表されているだけでも、これらのサービスを利用して東大に現役合格した者は、毎年少なくとも東大合格者の2割以上を占めている。自分で調べてもらえればわかるだろう。注目すべきなのは、これらのサービスを利用しているのは名門中高一貫私立に通う生徒がほとんどだということだ。これも調べてもらえばわかる。基本的にこれらのサービスは、東大合格者を毎年多く輩出する名門中高一貫私立の生徒を選抜制度や特待制度によって集め、東大に特化した教育を行うことで東大合格者を多く輩出し、実績をあげている。これらのサービスを提供する塾や予備校からすれば、公立高校の生徒を集めるよりも名門中高一貫私立から生徒を集める方が、授業進度・学習理解・東大を受験する生徒数といった点で間違いなく得だからだ。これらの塾や予備校には膨大な東大受験のデータがあり、実力のある講師も多数在籍していて、生徒自体も優秀なので、ここで教育を受けた名門中高一貫私立出身の東大受験生は5~6割東大に合格する(それでも5~6割だ)。2人いれば1人は受かるくらいの計算になるから、こんなに楽に実績を稼げる名門中高一貫私立の生徒を塾や予備校が大量に掻き入れるのは当たり前だ。塾や予備校の面でも、名門中高一貫私立出身の受験生は恵まれているのだ。こうしてみると、地方の中でも近畿圏の公立高校に通っている人は、上述したような東大専門の塾や予備校を利用できるチャンスが残されているという点でまだマシだといえる。先ほど見た東大合格者の出身地別割合で近畿が3位につけている要因の1つに、こうした事情もあると考えられる。しかしながら、他の地域にはこれらのサービスは存在せず(※某特進コースの授業は、申請すれば各校舎のPODで受講できるようだ。検討してみてほしい)、依然として大きな格差がある。これらの要因が重なった結果として、東大合格者数ランキングトップ20に名を連ねる高校のうち、9割が名門中高一貫私立・中高一貫国立という事態となっているのだ(なお、残りの1割を占める公立高校も、すべて関東の高校である)。これは、京大・一橋・東工大の合格者数ランキングとはまったく異なる傾向である。
まとめると、地方公立高校の生徒は、勉強に充てる時間の面でも、勉強する環境や受け取ることのできるサービス・情報の面でも、(特に都内の)名門中高一貫私立の生徒に大きく水をあけられているのだ。先ほどのデータでは満足できなかった人も、地方公立高校出身者が置かれた非常に厳しい状況を、少しでも理解できただろうか?今、少し悲観的になり、弱腰になりかけている人もいるかもしれない。だが、東大合格を諦めるにはまだ早すぎると思う。このような厳しい状況下であっても、地方公立高校出身者がやれることはある。地方公立高校出身者が、残された少ない勉強時間と限りある学習資源で東大合格を勝ち取るための、私なりの戦略をお伝えしていきたいと思う。
※この記事に辿り着いた高1,2生の中には、ここまで読んで、「この程度の差なら自分で埋められる」「受験戦略は自分で立てるものだから、読むのはここまででいい」と思った人もいると思う。それで良い。名門中高一貫私立がない地方に住む公立高校の生徒、または、そういった中高一貫私立に入学しないという選択肢を自ら取った人、あるいは、経済的理由からそうした中高一貫私立に入学できない人の中には、名門中高一貫私立の上位層にも引けを取らない頭脳の持ち主もいることだろう。私はそういった人に私の受験戦略を押し付けるつもりはない。自分で戦略を考え、自己を管理して勉強を着実に進め、合格してほしい。私は、東大入試というものの現状を把握できておらず、正しい計画のもとで学習を進められなかった、少しだけ勉強のセンスがあった高校生の頃の私のような人が東大に合格する手助けをしたいだけだ。浪人して東大に合格する地方公立高校出身者が多い中で、現役で合格できる可能性が高いというのは素晴らしいことだ。才能を無駄にすることのないよう、最後まで努力を惜しまず合格までこぎつけてほしい。
では、地方公立高校出身者が、圧倒的不利な状況から東大受験を勝ち抜くための戦略を伝えていきたいと思う。ただし、言っておきたいことがある。私は以下に述べる受験戦略を実践してあなたが得た受験結果に関して、一切責任を取らない。そもそもこの記事は、東大に受かる魔法の道具ではない。受験計画とは、自分という人間の性格を知ったうえで、自分と目標との距離を常に測り、絶えず練り直していくものだ。何をどう勉強するかは最終的にはあなたが決めることであり、その自由の代償として、あなたは自身の受験結果に責任を負わなくてはならない。その覚悟を持って、あくまでも参考資料として読んでほしい。
私は東大に落ちたただの大学生にすぎないということを、忘れないように。
どうすればいいのか
地方公立高校出身の受験生にとって最も大事なことは、名門中高一貫私立との時間の差・環境の差がなるべく埋まるよう最大限努力することだ。時間の差を埋めるために、過去問を徹底的に研究し、理想をいえば3年間を費やして大学受験の勉強に充ててもらいたい。京大や一橋であれば高2,高3から本格的に勉強を始めても間に合うかもしれない(実際に間に合った人を多く知っている)が、ここまで読んで東大受験の実情を理解した人は、地方公立高校の生徒の場合、それでは東大には間に合わないということがわかるだろう。そして、環境の差を埋めるために、今ある学習リソースの中でベストを尽くしてもらいたい。これらの差を埋めるための、地方にいても取ることができる最大限の手立てを述べておく。
・時間の差を埋めるために(高1向け)
とにかく、地方公立高校の生徒は時間が足りない。先に見たとおり、高校に入学した時点で、もう名門中高一貫私立の生徒より2年遅れているのだ。だから、本当に東大に現役合格したいのであれば、高1の4月から起きている時間をフル活用して過去問を研究しつつ、苦手教科を絶対に作らないよう勉強し、名門中高一貫私立の生徒との学習内容の差を埋めるために、超先取り学習をする必要がある。焦らずに着実に勉強を進めていってほしい。私の友人で京大理系学部に現役で進学した者がいるが、彼は休日、高1で6時間、高2~受験終了まで14時間勉強をしており、予備校に通って高2の初めには数学Ⅲまで学習を終えていた。地方公立高校の生徒でも、努力次第でなんとでもなるのだ。ここで、「部活動があるから休日にそんなに時間は取れない」と思った人もいるかもしれない。部活動はするべきなのか、部活動と勉強の両立はできるのか、といったことについても後述するので参考にしてほしい。
・時間の差を埋めるために(高2,高3向け)
高2、高3でこの記事を読んでいるということは、最近東大を志した人だろうか?まず高2生にいいたい。あなたが高1のときあまり勉強していなかった(私もそうだった。私は高2の9月から本格的に勉強を始めた)のなら、あなたが非常に優秀な生徒でない限り、東大に現役合格できる可能性は高くない。少しセンスのある地方公立高校の生徒が東大に合格できる学力を養うためには、普通3年は必要だと思われる。高2から本腰を入れて勉強を始めるのなら、浪人を覚悟しておいた方がいい。これは脅しでもなんでもなく、事実だ。今すぐ受験勉強を開始しよう。本気でやるしかない。残された時間は、あまりにも少ない。
高3生で最近東大を志し、あまり受験勉強をしてこなかった人は、あなたが超優秀な生徒でない限り、浪人はほぼ確実なものとして長期的な計画を立てて頑張ってほしい。あまりにも残り時間が少なすぎる。地方公立高校の生徒は浪人すると飛躍的に学力が向上することが多いから、2年後の入試で合格できる可能性はある。今年の入試で合格出来たら相当幸運だと思って、精一杯努力してほしい。
厳しいことをいってしまったが、これが東大受験の哀しい真実なのだ。高校受験は、いってしまえばライバルに中学受験経験者がいない比較的「甘い」戦いであり、だからこそ普段から内申点を稼ぎ、中3の1年間だけ本気で頑張ればトップ高に合格することも可能だ。しかしながら、大学受験を高校受験と同じように考えてはいけない。まったく状況が違うのだ。東京大学に合格するということは、決して、決して、生易しいことではないのである。
・環境の差を埋めるために
名門中高一貫私立の生徒との環境の差を埋めるために高1からできることは、大きく分けて2つある。
①塾や予備校(近畿在住なら、できれば東大専門塾)に通う
名門中高一貫私立の生徒との差を埋めるために、絶対に塾や予備校(できれば大手)に通った方がいい。東大合格者の8割以上はこれらの教育サービスを受け合格している。大手予備校が近くにない、または自分のペースで学習を進めたいという人は、某衛星予備校等、サテライト授業が受けられる塾や予備校に通うことをオススメする。1A2Bの速習講座等を利用し、数学・英語の先取り学習を進めてほしい。この記事を読んでいる人の中に近畿(兵庫・京都・奈良・和歌山等、大阪近辺)に住む人がいるなら、先ほど紹介した某特進コースや某会へ入るのが最も良い。高1から本気で勉強をやり、大阪で授業を受けるのが最短ルートだといえるだろう。某会については、公立高校の生徒でも入会テストで良い点を取れば入れるという話を聞いている。しかし、進度等の点でなかなか難しい面もあるようなので、慎重に検討してほしいと思う。近くにそういった塾や予備校がまったくないという人は、某衛星予備校のオンラインコース・赤門セ○ナー等のオンラインで受けられるサービスを利用するのも手だ。高3になれば、臨海セ○ナーの東大講座を受けるのも有効だと思われる(高校生のとき、私はこれを知らなかった)。塾や予備校に行く金銭的余裕がないのであれば、ネットを駆使して慎重に参考書等を検討してほしい。1つの塾や予備校に拘らず、自分が東大に合格するための力が付けられる最適な場所や方法を選択してもらいたい。
②情報源を確保する
地方公立高校には東大合格者のデータが少ない分、様々な形で情報を確保しなければならない。過去問を徹底的に研究するのはもちろんのこと、大手予備校等に通うならば、その予備校の東大合格体験記等を読んだり、『東大文Ⅰ 合格の秘訣』シリーズを買ったりするのも良いかもしれない。某会の出版物を読むのもいいだろう。あなたの先輩で東大生がいるならコンタクトを取ることをオススメする。また、東大に詳しい先生がいるなら仲良くなっておこう。インターネットには勉強法についての様々なサイトが存在するので、それらを有効活用すべきだ。情報をうまく取捨選択し、自分の勉強に役立ててほしい。
ここからは、日常生活の過ごし方について述べていこうと思う。
①時間の使い方
部活動に入っていない、あるいは時間にゆとりがある部活動に所属している人は、平日約6時間、休日最低10時間は勉強すべきだ。部活動をやっている人は、起きていて部活動をしていない時間をすべて勉強に充てよう。地方公立高校の東大受験生は、東大受験にはあまり役立たない学校の予習に時間を取られ、受験勉強に充てられる時間は限られてくる。だから、勉強時間は多ければ多いほどいい。なにしろ残された時間が少ないのだ。通学時間や休み時間、食事時間、入浴時間など、やろうと思えば勉強できる時間は実は多い。私も高2の頃、朝早く登校し、3年生が多くいる自習室に入って勉強していた。また、昼休みは昼食をすぐ食べて友人と図書館に行き勉強をしていた。1日、タイマーで勉強以外のことに使っている時間を計ってみれば、どれほどの時間を無為に過ごしているかがわかるだろう。時間を無駄にしないために、スマホに無駄な時間を使うのは本当にやめよう。高校生になってスマホを初めて持った人が、その便利さ・楽しさの虜になるのはわかるが、SNSや動画閲覧サイト等のコンテンツはあなたの集中力を奪い、貴重な勉強時間を蝕んでいく。大学生になればいくらでも弄れるのだから、最低限の連絡等をしたり、英語のリスニング音声を聴いたりするためだけに使うべきだろう。私は無用なコンテンツに時間を使いすぎた。絶対に同じ轍を踏まないでほしい。東大入試の試験時間は、長いものだと150分に及ぶ。長い時間集中力を切らさない訓練を積むべきだ。朝はなるべく早く起きた方が良い。朝から頭を動かす訓練をしよう。一日を有意義に使える。
②授業の受け方
先ほども述べたように、地方公立高校の授業は東大の入試問題の対策には不向きだ。だから、予習時間や授業時間を無駄にせず、それらがなるべく東大受験に役立つよう工夫をしなければならない。まず、受験に不要な教科については授業中は基本的にバレないよう内職をし、定期テストである程度高い点数が取れるくらいの勉強をテスト前にしておくだけで良い。受験に必要な教科であっても、先生の話を聞くのが無駄だと判断したなら内職をしても良いだろう。授業をサボっているのがバレないようにうまくやりつつ、無駄な時間を少しでも減らそう。現代文は予習の段階で、知らない用語を調べるのはもちろん、自分が東大の出題者としてその文章を入試問題として出題するとき、どこに傍線が引かれどのような問題になるか(東大だと「どういうことか、なぜか」を問う問題がほとんどだ)を考えて自分で解答を作成しよう。古文・漢文の予習は知らない単語・句形を覚えると同時に、現代文と同じく作問→解答をし、読んだだけで現代語にすらすらと直せるようにしておこう。数学(私の高校では予習がなかった)は、授業中(授業前)に教科書の今習っている単元の問題を復習としてすべて解き、それが終わったら用語の定義の確認・定理の証明の理解に努めよう。ネットでその定理の複数の導出方法を調べておくと良い。英語は長文読解であれば、まず10分程度で速読して内容を把握し、すぐ100字程度で要約をしよう。それから知らない単語・熟語の暗記をすると同時に、読んだだけで構文と意味の理解がすぐできるようにその長文を読み込み、初めに読んだときに読み取った内容とズレがないか確認して、長文の完全な理解ができたらもう一度要約を作成し、初めに作ったものと比較・検討すると良い。英作文に使えそうな表現があればストックするのも手だ。英作文であれば、出てきた表現をストックするのはもちろん、必ず添削をしてもらおう。地理歴史の授業は最高のインプット時間だ。参考書や用語集等を用いて、その授業で扱う時代の用語を暗記し、教科書を読んで東大の問題で出題されそうな箇所があったら、印をつける等しても良い。理科基礎の対策にはそこまで時間が割けないので、きちんと授業を聴き、授業中の完全な理解を目指そう。
※行うのは自己責任だが、受験校が決まった高3の秋くらいから出席日数が足りるように調整して学校を欠席し、家で長時間受験勉強をするというのも1つの手としてある。実際にこれをして京大に受かった人を知っている。考えてみると、こうするのが最も効率的であることは間違いない。もっとも、私は他人からどう思われるか不安だったのでできなかったが。
③定期テストの受け方
定期テストの対策を受験に関係ないからとしない人がいるが、東大に合格するような学力を持つ地方の高校生は、たいがい定期テストの点数も良い。地方公立高校の場合、生徒の学力を示す一番わかりやすい指標が定期テストだから、ここで良い点数を取らないと、親や先生に「定期テストでこんな点数なのに、東大に受かるなんてお前では無理だ」といわれ、そもそも東大を受けさせてもらえない可能性がある。受験を乗り切る上で、自分の印象は良いに越したことはない。だから、定期テストで高い点数を取ることは必要になってくる。しかしながら、定期テストの対策に時間を割けないのも事実である。普段の授業で確実に理解を積み重ね、定期テストの1週間前に集中して詰め込み、高い点数を取ることをおすすめする。英語や数学の試験等で初見の問題をいくつも出してくる学校もあるようだ。そういった試験も腕試しとして挑み、高得点を目指してほしい。
④模試の受け方
東大合格というゴールを目指す上で、模試は重要になってくる。模試の目的は3つある。①実力を測る②知らない知識を得る③試験本番の雰囲気を味わうである。模試は普段の勉強の延長線上のものだと捉えれば良く、定期テストと違って模試のための対策を取る必要はないと思われるが、文系内の学年1位を絶対に取るつもりで頑張ってほしい。高3であれば、英語と数学は某塾の全統模試ならば最低でも偏差値67.5はほしい。東大入試は苦手科目が1科目でもあると不利になるので、総合偏差値も70は必ずとれるよう頑張ろう。当日は朝早く起き、本番だと思って受験してほしい。模試が終わったら、解いていたときの感覚を忘れないうちに、自己採点を必ずしよう。私は解いているときに自信がなかった問題の解答を確認するのが嫌で、復習は返却後にしていた。もし私と同じような人がいたら、解答を見なくても良いから、問題冊子に、各問題ごとに解いたときのプロセス・感想をメモしておくと良い。解答冊子の解説を読み、解答のプロセスが一致していたか、勘で当たった問題はないか確認し、知らない知識や解法は覚え、その問題から吸収できることをすべて吸収しよう。解答冊子は1つの参考書だと思って、必要なことは書き込み、持ち歩こう。東大模試の復習方法も基本的には同じである。ただ、東大模試は通常2日間にわたって行われるので、試験本番と同様の生活リズムで過ごすよう心掛けてほしい。周りの出来不出来はなるべく聞かないようにし、冷静に目の前の試験に挑もう。
⑤勉強場所
どういう場所で勉強するかは効率に大きく関わってくる。家で勉強できないタイプの人は放課後すぐに塾の自習室に向かうのも良いし、学校に夕方まで残って自習し、学校が閉まったら塾の自習室に行くというのも良いだろう。自分が集中できるのであれば、喫茶店等でも構わない。学校で昼休み等に勉強するのであれば、教室・図書室・中庭等自分に適した場所を選んで勉強してほしい。ただ、家にいるときに無駄な時間を過ごさないよう工夫をするべきである。
⑥眠気対処法
運動系の部活動等をやっている人の中には、部活後塾に行ったり家に帰ったりすると途端に眠くなり、まったく勉強ができないという人がいる。そのような事態を防ぐために、コーヒーを飲んでから20分ほど仮眠する等の、何らかの眠気対処法を講ずる必要があるだろう。時間を無駄にしてはいけない。自分に最適な眠気対処法を調べ、実践してほしい。
ここまで、日常生活の過ごし方について述べてきた。いよいよ学年別の到達目標、本番の目標点数について述べていくのだが、その前に1つ、部活動・恋愛と受験の関係性について述べておきたい。基本的には部活動には参加した方が良いと思われる。確かにその分時間は奪われるが、目標に向かって頑張ったり友達ができたりすることの人生におけるメリットは大きいし、運動が脳に良い影響を与えることは科学でも証明されている事実だから、進んで取り組むべきだと思う(もちろん、私のように文化部でも構わない)。私の周りでも3年間部活動に大いに取り組んで東大や京大に現役合格した人が何人もいた。運動量が多い運動部に入れば脳も発達して受験に有利、と言いたいのではないが、受験とは別の目標に向かって努力し、本番で全力を出すという経験を3年間を通して積むことが、受験において極限まで集中し、一発勝負のテストで結果を出すこととリンクする部分があるのは事実だろう。こうした側面から見ると、部活動は受験には悪い影響をあまり及ぼさないと思われる。しかし、時間をそれに割いている分、スキマ時間や家にいる時間、通学時間等を活用しなければならないだろう。
次に恋愛についてだが、高校生のうちに恋人を作っておくのも重要な人生経験だと私には思われるので、恋愛はしても良いと思う。しかしながら、2つ守ってもらいたいことがある。1つは、恋人にはなるべく早く自分が東大受験をすると伝えることだ。地方から東大を受けるのだから、あなたが上京した場合、2人は遠距離恋愛になることが大いに予想される。それでも相手は自分を愛してくれるのかどうか、早めに確かめておいて損はない。もしそれで破局ということになっても、潔く諦めてほしい。長い目で見れば、この先多くの異性と出会うのだからその相手に拘る必要はないとわかるだろう。もう1つは、受験期に恋愛に逃げないことだ。受験期は不安とプレッシャーでストレスが溜まり、勉強以外のことに逃げたくなる。しかし、絶対に逃げてはいけない。最後の最後まで気を抜かないことが、合格のカギとなるからだ。恋愛に逃げるとあなただけでなく相手にも迷惑が掛かり、最悪の場合2人とも合格できないという結果に終わる。あなたの軽率な行動で、他人の人生を狂わせてはいけない。ましてや、受験期に新たに恋人を作るのはご法度である。2人とも迫りくるものから逃げているだけなのだ。それは恋愛などではなく、ただのストレスのはけ口である。受験期に本格的に突入する前に2人でしっかりと話し合い、ルールを決めるべきだろう。受験生は、勉強以外のことに頭を使っている時間はないのだ。本当にこの2つには気を付けてほしい。
本番での理想点数
さて、長らくお待たせしたが、試験本番での理想点数について述べていこうと思う。この目標点数を確認したうえで、自分なりに目標を定め勉強に励んでもらいたい。
まず先に述べなければならないのは、地方公立出身者の場合、共通テストの点数と難関大学合格の可能性には恐らく相関関係があるということである。私の知っている限りではあるが、高校の同級生で京大・一橋に現役合格した者は全員センター試験で9割以上を取っていた。この9割というのがポイントで、9割取れる=致命的な苦手教科がないということなのだ。9割取れるということは、900点満点のうち90点未満しか落とさないということだ。もし苦手教科(基本的には国・英・数のどれかだろう)で7割を取ってしまった場合、60点近くを失うことになる。残りの教科での失点を30点以内に留めることはかなり難しい。つまり、9割取れるということは、苦手教科であっても共通テストのレベルで8割程度は取れるということを意味する(もちろん例外はあるが)。一方、苦手教科で6,7割しか取れない場合、他の科目がどれだけ得意であっても、8割後半にしかならないことが多い(私はこれだった)。これは地味な差ではあるが、最後には勝敗を分ける大きな差となる。
難関大学の問題はすべて難問というわけではなく、易しい問題から難しい問題まで存在する。難しい問題を解く能力に関しては中高一貫私立出身者の方が比較的高いが、受験の合否は易~標準の問題をいかに解けるかで決まる場合がほとんどである。こう考えたとき、中高一貫私立出身者が取りこぼしてしまうそれらの易~標準の問題を確実に拾える者が勝つだろう。そうした問題をしっかりと拾えるかどうかが、共通テストレベルの問題をどれだけ確実に正解できるかという能力に関連してくるのだ。だから、学習時間で圧倒的不利な立場にある地方公立高校出身者の場合、共通テストの点数が合否に関わってくる。
とはいえ、私はセンター試験しか受けたことがない。共通テストは平均点が5割になるよう設定されているから、センター試験より難しいのは当然だろう。だから、目標点数としては8割後半~9割が取れれば良いと私は考えている。
続いて、東大2次試験の目標点数について述べていきたい。地方公立出身者が目指すべき点数は以下の通りである。なお、これは標準的な理想点数であり、自分の得意不得意によって目標点数が変わることは当たり前であるので、鵜呑みにしないでいただきたい。
国語:65~70点、数学:35~45点、英語:70~80点、地歴:70~80点
合計:240~275点
これが目標点数である。一つ一つ詳しく述べていきたい。
国語について、東大国語で7割以上を取るのはかなり難しい。私も現役・浪人とセンター試験の国語で9割以上を取ったが、最終的に二次試験の国語では6割程度しか取れなかった。7割以上取った人を2人知っているが、どちらも東大合格者の中でもかなり上位の学力を持ち合わせていた。地方公立出身の現役生だと、65~70点程度が目標になるのではないだろうか。
数学について、これは私が数学が苦手だったこともあって低めの点数に設定してあるが、得意な人は50~60点を目指しても構わない。ただ、注意しておきたいのは、数学という教科で高得点を目指すのは諸刃の剣であるということだ。数学で圧倒的な得点が取れれば、他の教科で失敗しても合格に近づくことは事実である。しかし、数学を勉強するのには一定の時間がかかるうえ、ある問題で悩んでしまうと途方もない時間を費やしてしまう可能性がある。そうすると、他の教科に充てる時間が圧迫されることになり、全体として点数が伸びない可能性がある。また、2次試験の緊張の中で計算ミスをしたり頭が真っ白になったり、問題が急激に難化したりすることによって、数学が得意科目のはずなのに本番まったく振るわなかったという人は毎年何人もいる。ただ、数学がまったく解けないと全体として合格点に達しないことも事実であるから、解ける問題を確実に解き、本番で事故を起こさないように努めることが肝要である。数学ばかりを勉強して他の教科に充てる時間が不足し、本番数学で思うように稼げず他の教科も振るわずに不合格になるということだけは避けてほしい。
英語について、これが最も地方公立出身の受験生が苦心する科目であろう。問題の難しさもさることながら、2次試験の一発勝負の緊張感の中、1日目の疲労も回復しきらないまま地歴150分の試験で疲弊した頭をフル回転させて英語を使いこなし、問題を的確に処理するのは非常に難しい。ただ、英語が振るわなかった場合、数学で高得点を取っていなければ合格が難しくなる。普段から緊張の中で英語を処理する訓練を積むことがなにより大切である。
地歴について、地歴は地方公立出身の受験生が最も対策しやすい科目である。しっかりと教科書を中心に学習を進め、過去問を徹底的に研究して予想問題などをやりこめばかなり高得点が期待できる。ここは落とせないところなので、しっかりと対策をしてほしい。
地方公立出身の受験生が余裕で合格する必要はあまりない。確実に点数を取り、滑り込めばいいのだ。
さいごに
ここまで、東大入試が地方公立出身の受験生にとっていかに難しいかを語り、できる限りの対策は述べたつもりである。しかし、それでも地方と関東の格差はまったく縮まらないだろう。Wikipediaで東大の先生方の経歴を調べると、地方公立高校から東大に入学した方が多いことがわかる。昔は地方から優秀な人材を吸い上げ東大で学ばせ、社会で活躍する人をつくるというシステムが正常に稼働していた。しかし、経済格差の拡大・中学受験に対する過熱・一部の塾や予備校の過度な東大指向などにより、地方と首都圏の教育格差は拡大する一方である。このままでは、50年後の東大の先生方は、大半が名門中高一貫私立から東大に入学した人達になるだろう。
このような格差の拡大を止めるためには、入試制度の抜本的な改革しか、もはや方法は残されていないだろう。元来の入試制度を改め、地方から優秀な人材を東大に多く入れられる仕組みをいち早く導入すべきである。さもなければ、日本の最難関大学たる東大は、同時に日本の教育格差の最大の象徴となるだろう(もうそうなっているかもしれないが)。東大及び文部科学省には、早急にこの問題について取り組んでいただきたい所存である。
地方公立出身の受験生は、この状況にめげず、最後まで東大合格を目指して頑張ってほしい。私個人の意見ではあるが、東大を目指して勉強することが、最も頭を良くする方法である。東大を目指すという、その経験が必ず糧になるはずである。頭を使い、考え抜くこと。それが人生を豊かにする最善の方法だから。
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https://note.com/w_sakon/n/ne93330152f4b
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