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創作物(詩)

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2023年1月の記事一覧

【詩】悪いやつらは、みな同じ

  悪いやつらは、みな同じ

足をもがれて地を這う虫が、
羽をもがれた羽虫を羨む。

手足をもがれた片輪の幼女の視界には、
羽をもがれた小鳥の他には誰もいない。

なんの悪気もない聾唖者が、
音を出さない壊れた鈴を
踏み潰す。

【詩】司書

  司書

表紙くらいしか汚れていない
誰も読まないビジネス書が
救うはずだった人生を
背負い込んでいる読書家たちが
増えていくのを目安に近づけ
図書館へ

人知れず焼かれ煙と化して
鼻腔をくすぐるはずだった
読む価値のない実用書に
挟まれ書棚に並んでいる
ノートをほんの何冊か
救い出すために
図書館へ

書庫であるという事実を除いて
知的な気配が少しもない
だだっ広い空間で
十年前のヒット曲を

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【詩】光線

  光線

俺の体から出る光の線が
壊してはいけない機械を
壊す

何本もの光の線が
傷つけてはいけない壁を
ひっかく

押してはいけないすべてのボタン
触れてはいけないあらゆるパネルはことごとく
見計らったかのように
光の線の先にある

俺の体から出る光の線が
残してはいけない跡を
束になって残しにかかる
読ませてはいけない跡を
束になって読ませにかかる
俺が生きてきた経緯すべてを
俺の代わりに

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