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#133 有名ベンチャーキャピタルファンドの残念な現実

先週の日曜日は恒例の毎年開かれるサンフランシスコマラソンがありました。マラソンどころか、ランナーでもない私ですが、せっかくの機会なのでいつかは出てみたいなと。今年はちょうどコースが家のすぐ前の道路で、朝コーヒを買いに出た時に参加者たちが走ってる姿を見たのですが、実際に走ってる姿を目の前で見ると、益々来年こそは、という気持ちになります。まずは特にトレーニングが必要なに10Kを来年出てみたいと思います!


先日は米国の有名なベンチャーキャピタルへの投資を検討しました。米国のVC業界では誰もが知っている名前で、数千億円規模のファンドを運用しています。

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しかし、このVCの過去の投資実績は実は衝撃的で、脚注をすべて確認し、私が見たことが本当であることを再確認しました。私が見てきた他の著名VCと比較すると、パフォーマンスがあまり良くなかったのです。 彼らの今までのすべてのファンドが悪かったわけではありません。 いくつかパフォーマンスが良いファンドもありますが、多くのファンドが中央値以下のパフォーマンスなのです。

彼らの収益率と現在の政策金利とのギャップはわずかです。これはナンセンスです。ベンチャーキャピタルは最も危険な投資アセットクラスの一つであり、政策金利は無リスク金利です。 そのため、このギャップがある程度以上大きくなければ、ベンチャーキャピタルに投資をするのは意味がなくなります。 VCはこのギャップを最大限広げるために努力しなければなりません。この程度のギャップなら、私はファンド・オブ・ファンドのファンドマネージャーとして、このVCには絶対に投資しません。

それにもかかわらず、彼らはすでに1千億円以上を調達したそうです。この程度の収益率で一体どうやってそんなに多くのお金を集めることができたのでしょうか。

このVCは、少なくとも過去数十年間、数回の世代交代を経験し、会社を成功裏に運営してきました。これは、以前の記事でも説明したように、VCにとって非常に重要なことですが、決して簡単なことではありません(​​#129 VCの適切な成功報酬(キャリー)設定の重要性)。つまり、ファンドを大きな失敗なく継続的に運用してきたということです。また、少ない収益ではありますが、少なくとも元本を切るようなレベルでもないし、投資家に継続的に元金以上を返してきました。ここで重要なキーワードは「継続性」です。このVCは過去数十年間、この継続性を維持してきたのです。

大規模なファンドであるため、通常、大学基金や年金基金などの大型機関投資家から資本を調達します。これらの機関投資家の課題は、投資チームの規模が通常小さいため、潜在的な投資対象をすべて確認し、投資対象を詳しく調べ、その中から最も良い投資機会を見つけるのに十分な時間とリソースがないことです。さらに重要なのは、担当者たちは成功報酬がないことが多く、投資リターンを最大化するインセンティブがありません。投資が成功しても失敗しても、同じ給料をもらうため、彼らはどうしても「安全な」投資を行うことになります。安全性は結局「継続性」で説明されます。少なくともここに投資すれば元本は戻ってくる、という考えを持ってしまいます。 「IBMを買って解雇された人はいない」という古い格言がここにも当てはまるのです。

行動経済学では「ホットハンド」という概念があります。連続して成功を収めた個人や団体は、引き続き成功する可能性が高いという意味です。例えば、コインを投げて3回連続で表が出ることを正確に当てた場合、「ホットハンド」を持っていると言えます。このような状況で、私たちは過去に関係なく、確率は同じく50%と変わらないにもかかわらず、次回も当てられる確率が、実際の確率である50%よりも高いと信じるようになります。ノーベル経済学賞受賞者であるリチャード・タラーは、映画「ビッグ・ショート」でホットハンド現象がグローバル金融危機の原因の一部だと指摘しています。さて、VCの「継続性」が私たちをホットハンド現象に陥らせているのではないでしょうか?

映画でタラー教授がセレナ・ゴメスにホットハンドについて説明するシーン

私がいつも強調しているように、VC投資はますます競争が激しくなっています。多分、ホットハンドはある程度効果があったのかもしれません。つまり、少なくとも持続性を備えたファンドは、最も優秀なファンドではないにもかかわらず、ある程度の資金調達に成功しています。しかし、ますます多くのLPが「継続性」だけでなく、将来の可能性まで考慮して投資ファンドを選ぶようになるのは時間の問題です。持続性に加え、ポテンシャルに富んだVCがあれば、当然そっちの方にお金が集まるでしょう。

冒頭で話したVCは最近世帯交代をしました。そして今のパートナーたちは、前世代よりもうまくやっているようで、最近ファンドのパフォーマンスも以前より良いです。 私はこの人たちが今後もパフォーマンスを改善し、改善されたパフォーマンスを持って継続性を再現することを祈ります。

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References:
・Hot Hand: What it is, How it Works, Evidence - https://www.investopedia.com/terms/h/hot-hand.asp

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