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#175 イグジットまで成功したユニコーンへの狭き門

先週はポートフォリオファンドの一つであるHustle Fundの年次イベントであるCamp Hustleがありました。サンフランシスコから1時間程度(パロアルトからは30分程度)離れたSaratogaというところで二日間で行われるこのイベントには、スタートアップ創業者、VC、私のようなLP、そして他の業界関係者まで数百人の参加者が参加しましたが、Hustle Fundの特徴がよく現れる有意義なイベントでした!

Camp Hustleが行われたSaratoga Springs

これまでアメリカでシード・ステージの資金調達を受けたスタートアップのうち、何パーセントのスタートアップが成功してユニコーンになったのでしょうか?次の3つの条件でPitchbookのデータを確認しました:

  • シード・ステージの資金調達を受けたスタートアップは、2千万ドル($20m)以下の価値で資金調達を行なったスタートアップと定義

  • ユニコーンは、スタートアップのイグジットで成功とみなされるIPOをしたスタートアップに限定

  • 中でも、現在の市場状況を反映するため、今年5月17日時点で時価総額が10億ドル($1B)以上のスタートアップに限定

この条件は、成功した全てのスタートアップを含めないのですが、このような保守的な条件で分析をすることが、逆よりは良いと判断しました。

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米国では、これまでに約35,000のスタートアップがシード・ステージで資金調達を行いました。そのうち、現在上場していて、時価総額が10億ドル以上の企業は約130社です。つまり、わずか0.37%です!これを言い換えると、270のスタートアップのうち、ユニコーンの価値をもつ上場企業になったのはたった1つのスタートアップだけということになります。個人的には1%に近い数字を予想していたのでかなり驚きました。

しかし、ここで2014年、つまり過去10年以内に設立されたスタートアップにデータセットを限定すると、インパクトはさらに大きくなります。10年が重要な理由は、VCファンドのタイムラインが10年だからです。 つまり、VCファンドは10年以内にユニコーンになるスタートアップに投資しているとも言えます。

2014年以降、過去10年間に約20,000のスタートアップがシード・ステージの投資を受けました。そのうち、ユニコーンのステータスを持つ上場企業はわずか10社しかありません。 わずか0.05%です!つまり、2,000のスタートアップのうち、ユニコーンになったのはたった1社だけなのです。これは衝撃的な数字です。さらに重要なのは、10社のうち半数以上がバイオ企業であることです(バイオ企業は、テクノロジースタートアップとは異なるイグジットダイナミクスを持ちます)。より多くのスタートアップがいつかユニコーンになると思いますが、10年以内にそれを達成するのは非常に難しいことがここからもわかります。

これが意味することは、まず、VCの観点からは、スタートアップの数は増えたが、ノイズも増えたということです。 シード・ステージの資金調達を受けたスタートアップの半分以上が過去10年間に資金を調達しているからです。ノイズを取り除き、本物を見つけることがますます難しくなり、競争も激化することを意味します。

このデータは、日本でより多くのユニコーンを誕生させるために何が必要かという点でも示唆するところもあると思います。 ベンチャー業界の先頭を走っているアメリカでも、本当に少数のスタートアップだけが成功したユニコーンになります。一言で言えば、質だけでなく量も多くなければ、少数のユニコーンを誕生させることができないのではないかと思います。あとは忍耐力ですね。VC業界での10年はとても短いです。より忍耐強いキャピタルが多く必要です。

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References:
Data from Pitchbook


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