#182 VC必須要素:逆張り発想(Contrarian View)
私が最初に日本に渡ったのは音楽がやりたかったからで、青学に入学した後はAMSという軽音楽サークルで活発に活動をしていました。最近一緒にお仕事をさせて頂いている方で、投資家として成功されている方がいますが、蓋を開けてみると彼がそのAMSの設立者だったのです。大先輩なので接点は全くなかったのですが、最初その事実を知ったときにはびっくりしすぎて鳥肌が立ちました。その彼は今も引き続きお仕事もされながらプロとして音楽活動もかなり積極的にされています。先週東京に短く滞在したのですが、そのときにたまたまライブをされていてお邪魔しました。キャリアとしてもきちんと成功されて、また自分の好きなことをされている姿がとても素敵でした。音楽も最高でしたし、10年後20年後にもう一度バンドでギターを弾く自分を想像するのも楽しかったし、とても良い夜でした。
20年以上前の私が高校生の頃、韓国のある証券会社で「みんながYesと言うときにNoと言える友人、みんながNoと言うときにYesと言える友人」というフレーズで広告を出していたのを覚えています。私はこれが投資の根本的な考え方の一つだと思いますし、ベンチャーキャピタルも例外ではないと思います。
最近のベンチャーキャピタルの投資戦略は、初期段階の投資から後期段階の投資、またセカンダリー投資とプラットフォーム戦略など、様々な形が存在します。しかし、ベンチャーキャピタルの本質は、高いリスクを抱えているけど、うまくいけば非常に高い収益につながる破壊的な企業に投資をすることです。成功すれば私たちの生活を変えることができますが、ほとんどは失敗します。
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このような成功を達成するためには、逆張り発想(contrarian view)の力が必要です。ベンチャーキャピタルは群を追うものではありません。誰もが良いアイデアだと思うところだけに投資するのであれば、真のベンチャーキャピタルとは言い難いです。最高のアイデアは、多くの場合、ナンセンスで、前例がなく、疑わしいと思われますが、それを実現できるビジョンと実行力を持った創業者によって実現されます。
ウーバーを例に挙げると、人々が見知らぬ人の車に乗ってA地点からB地点まで喜んで移動するとは誰が想像できたでしょうか。また、何百万人もの人々が写真や動画を通じて自分の生活を共有し、現存する最大の広告プラットフォームの一つとなったインスタも良い例です。
私が投資したベンチャーキャピタルファンドの中には、OpenAIが有名になるずっと前に投資を行ったところがあります。 約5年前、このファンドがOpenAIに投資することを決定したとき、私を含め私の周りの人はこのアイデアはとんでもないことだと思いました。AIはまだその能力が証明されておらず、すでに多くの人が一度失望を経験したタイミングでした。ほとんどの人は、AIが本当の成果を出すまでには非常に長い時間がかかると信じていましたし、私自身、「OpenAI」という名前も何か不思議だとも思っていました。このファンドの投資家として、私は彼らをとても尊敬していますが、なぜ彼らがOpenAIに投資することを決めたのか、完全には理解することはできませんでした。
それから約3、4年後の2022年、OpenAIはAIルネッサンスに火をつけ、ほぼすべての産業の変化を予感させました。上記のファンドは、まさに他とは異なる視点を持って、誰もがAIは終わったと思ったときに、むしろ可能性を見出したのです。また、ただそう思うだけでなく、大きな投資という決断力まで見せてくれました。ベンチャーキャピタルの投資として、良い模範的なケースなのです。
私はベンチャーキャピタル業界の投資家として、上記のOpenAIの話を思い浮かべながら、今後5~10年以内に世の中を変えるような逆張り発想の機会はどのようなものがあるのだろうかとよく考えます。これは、私が出会う他のベンチャーファンドによく尋ねる質問でもあります。 決して簡単な質問ではなく、その答えは数年経たないとわかりません。しかし、このような機会を追求することは、ベンチャー投資のやりがいの一つであり、私がこの仕事を好きな理由の一つでもあります。
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