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もう一度読みたいお話

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#エッセイ

夫婦の会話に中身がない

世の中の夫婦は、いったいどんな会話をしているのだろう。 友達の口から語られる「この前、夫と話してたんだけど~」から続く言葉は、だいたい中身のあるものだ。 でも、中身のない会話もしてるのかな。それをわざわざ、人に言わないだけで。 私たち夫婦はというと、8割方、中身のない話をしている。 今は離れて生活しているのでたまにLINEで通話をするが、先日は、「犬のうんちの大きさをかりんとうに換算する」話をした。 私は最近サモエドにハマっていて、毎日YouTubeでサモエド動画ば

やっぱり、わかりません 〜ゴリゴリの文系の私が 「科学」にぶつかった話〜

スマホの画面を時折確認しながら、授業終わりの教授が現れるのを待っていた。8年間の社会人生活の間で、時間を確認するのはもっぱらスマホかPCの画面。いつの間にか時計をしない生活になっていた。あぁ、腕時計をしてこればよかった、そう思う時はあっても、今日が終わる頃にはそんなことを考えていたことすら忘れてしまう。 * この冬、新卒から8年間勤務した会社を退職した。22歳だった私は、30歳になった。とても大きな会社で待遇は安定していたし、上司には可愛がってもらい、後輩にも恵まれ、とて

服を選ぶのが苦手な私が1着のコートを選ぶまで

「このあとどうしようか?」 昼過ぎの、少し客足が引いたバーガーキングで夫に質問が投げかけられる。 私はタルタルチキンバーガーを食べながら、この前親から「ずっと同じコートを着ているようだが、いい加減買い替えたらどうか」と指摘されていたことを思い出していた。 そのことを伝えると夫は「じゃあ時間もあることだし買いに行ってみようか」と提案してくれた。 だが前回、「何でもいい」と選ぶことを放棄したことで自分の中にある「好き」が分からなくなったという記事を書いた通り、私はその作業

スタバの男女とサラリーマン

1. その日、近所のスターバックスで仕事のアイディア出しをしていたら、突然僕のすぐ近くから、「えええええーー!!おひさしぶり!」という大声が聞こえてきた。 僕はその時、国道沿いにある広いスタバの窓際に座っていた。そのスタバは勉強や仕事など、なにかしら目的のあるお客さんが比較的多い店だった。そのため普段は静かで、図書館のような雰囲気があった。それだけに、突然の大声に本当に驚いた。 みると、たった今入ってきたばかりのようなおっさんが、先に席に座っている女性に話しかけてい

大好きな夫に、改めてプロポーズをすることにした

私事で恐縮ですが、昨年11月に入籍しました。 お相手の方とはもともと一緒に住んでいたため生活に大きな変化はなく、独身時代と同じ毎日が地続きになっているだけでした。 結婚を報告した友人から、お祝いの言葉も早々にこんな質問をされました。 「プロポーズの言葉は?」 この問いかけによってはじめて気づいたことがあります。 プロポーズ、されてないわ そういえば、はっきりとしたプロポーズってされていない。 例の件で「婚約者」と認定してもらえたものの、その後はっきりと結婚を申し込

魅惑のカプセルトイ

 ガチャガチャ。ガチャポン。ガシャポン。ガチャなどなど…。企業によって呼び名は違うけれど、そう、あれ。硬貨を投入してハンドルを回すと、小さなおもちゃが入った丸いカプセルが出てくる、あれです。どうやらカプセルトイという呼び名が総称のようなので、今回は「カプセルトイ」と表記します。  先日、激安スーパーの出入り口に並んでいるカプセルトイを、見るとはなしに見ていたら、エジプトの秘宝のカプセルトイがあることに気づいた。海洋堂のカプセルトイで、全7種類あるフィギュアのうちのひとつが入

彼女が温かい紅茶を飲んでいますように

数年前、私はオンライン英会話にはまっていた。 何度目かの流産がきっかけで体調をくずし、会社も休職し、毎日家でぼんやりと過ごしていた頃の話だ。 初めのうちは、突然おとずれたその休暇をそれなりに楽しんでもいた。 朝起きて、仕事へ出かける夫を見送り、簡単に家事をすませ、散歩がてら図書館まで歩き、帰ってきて借りた本を読む。夕方が近づけば買い物にでかけ、そこそこ丁寧に夕食をつくり、夫の帰りを待つ。 そんな毎日。 平穏で、優雅と言えなくもない時間だったけれど、私はすぐ

人生で初めて、ジーンズが似合ったこと。

わたし、ジーンズが似合わない。 あれだけ、色々なジーンズがあって、子どもから年配の方まで、 とにかくたくさんの人が履いていて、 おしゃれな人だけが履けるものでもなくて、むしろその逆の どんな人でもとりあえず履けるもの、 だという印象なのに、 なぜかわたしには本当に似合わない。 そんなふうに思って、避けてきたジーンズ。 けれど最近、仕事の関係でほぼ毎日履かざるを得なくなり、 仕方なくユニクロで買って履いていた。 ユニクロで買った理由は、苦手なものにお金をかけ

結婚式を自粛したら、突然Zoomで式が開催された話

4月4日に予定していた結婚式をキャンセルした。詳しくはこちらのnoteに書いた。 記事の中で「気象神社」での晴天祈願について触れたんだけど、その甲斐あってか4月4日はめちゃくちゃ晴れた。いやなにもここまで晴れなくても。見事な晴天である。 しかしすることがない。 僕が結婚式で楽しみにしていたのは、何より懐かしい友人たちと酒を飲むことだった。せめてもとダイエット中は我慢していたビールを開けて、朝からほろ酔い状態でインターネットにいそしんでいると、ちょうど大学の友人からメッセ

わたしは英語を学んで本当によかったと思う

高校二年生の秋だっただろうか。 私が『英語』に興味を持ち始めたのは。 和歌山県の海と山に囲まれた町で育った私は、当時所属していた茶道部の部室で初めて自分と同い年くらいの『外国人』に出会った。 アメリカからの交換留学生が、日本文化を体験するために茶道室にやってくると聞いて、とっても興奮していたのを覚えている。 そして、扉を開けてぞろぞろと入ってきた5,6人の少年少女はブロンドヘアに青い目、同い年とは思えないほど『おませさん』って感じだった。 当時NYの華やかな高校生た

夏と、ソーダ水のような彼。

 好きなタイプは?というおきまりの会話がある。その度に「好きになった人がタイプ」とかありきたりな答えを返しているけれど、遅れて来た感情が「彼でしょ!」と私に話しかける。  そう、私は後にも先にも「これ以上ないタイプだ!」と思った人に出会ったことがある。時田秀美という名前をした彼は、当時中学生だった私のヒーローだった。彼の言葉はちょっと恥ずかしくて、たまにアホらしくて、でもいつも正しかった。勉強ができる=頭がいい、ではないということを教えてくれたのも彼だったし、ありのままでい