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魅惑のカプセルトイ

 ガチャガチャ。ガチャポン。ガシャポン。ガチャなどなど…。企業によって呼び名は違うけれど、そう、あれ。硬貨を投入してハンドルを回すと、小さなおもちゃが入った丸いカプセルが出てくる、あれです。どうやらカプセルトイという呼び名が総称のようなので、今回は「カプセルトイ」と表記します。

 先日、激安スーパーの出入り口に並んでいるカプセルトイを、見るとはなしに見ていたら、エジプトの秘宝のカプセルトイがあることに気づいた。海洋堂のカプセルトイで、全7種類あるフィギュアのうちのひとつが入っている。ケースをのぞき込むと、残っているカプセルはわずか6、7個といったところか。なんと、マシンに半額シールが貼ってある。カプセルトイの値引なんて、初めて見た。1個分の代金で2個購入できるなんて、お得だなぁ。スカラベ(タマオシコガネの形をした魔除けといわれるもの)のフィギュアが欲しい。どうしようかな。買っちゃおうかな。子どもですら素通りしてしまいそうな、古びたカプセルトイ売り場の前で動けなくなってしまった。

 2012年に上野の森美術館で、ツタンカーメン展が行われた。そのときは特にエジプトに興味があったわけではなかったが、息子が小学生になっていたので、勉強になるかな?くらいの軽い気持ちで見に行った。ところが、そこに並べられていた装飾品のデザインや色使いなどの美しさに驚き、すっかり魅了されてしまった。息子には意味がわからないかな?と心配したが、張り付くようにどれも見ていた。売店で子どもむけのガイドブックを購入し、家に帰ってからも眺めていたら、息子はヒエログリフに興味をもちはじめた。そのうちエジプトと書かれているものに目が留まるようになり、心が動くようになった。

 ようし、買っちゃおう!我にかえった私。でも、数を決めておかないと財布が空になってしまうから…、2個だ。2個に決めよう。買うとは決めたが、貧乏症の私は思いきることができない。揃うまで買い続けるなんて、ぜったいにできない。かといって、インターネットですでに揃っているものを購入するのでは、何とも味気ない。
 息子に”ハンドルを回す”という、もう、そのためにお金を払っていると言ってもいいくらいに、いちばん盛り上がる役目を譲ってあげた。
「カプセルトイなんていつぶりだろう?ふふふ」と、こちらを見上げてにやける高校1年男子。
 コトンと音をたてて落ちてきたカプセル。奪い取ろうにも、私よりも大きく育った手に包まれて取り出せない。くそう。ねえ、スカラベ?スカラベだった?そう、しつこく聞きながらのぞきこむ。

 残念ながら、スカラベは入っていなかった。代わりに、5cm程度の猫のミイラのフィギュアが出てきた。ミイラと聞いたら気味悪いかんじがするが、実際にはにっこりと笑った(?)猫の表情がかわいらしく、体を覆う包帯部分の模様も鮮明に刻まれている。(背面も模様が刻まれていたら、最高だったのだけどな~、惜しいっ!)うん、でも、これはいい。

猫のミイラ


 わたしが猫のミイラを眺めている間に、ふたつめのカプセルは開けられてしまっていた。なにか、人型のものが。像?これって…。説明書を見ると、ペエのホルス神像と記載されている。この、鳥みたいな顔、なんだか見覚えあるなぁ。

ホルス

 エジプト神話に出てくる天空の男神らしいのだが…。どうやら鷹で表されているようだ。これを機に調べてみようと、ネットで本探しを楽しむ。

 この4月から開催される予定だった古代エジプト展。ぜったいに行くぞと意気込んでいたが、自粛要請により延期となってしまったようだ。
 自宅でエジプトに関する本を読みながら、辛抱強く、開催される日を待とうと思う。

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