山里 將樹

イラスト描いてます。

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スタバの男女とサラリーマン

1. その日、近所のスターバックスで仕事のアイディア出しをしていたら、突然僕のすぐ近くから、「えええええーー!!おひさしぶり!」という大声が聞こえてきた。 僕はその時、国道沿いにある広いスタバの窓際に座っていた。そのスタバは勉強や仕事など、なにかしら目的のあるお客さんが比較的多い店だった。そのため普段は静かで、図書館のような雰囲気があった。それだけに、突然の大声に本当に驚いた。 みると、たった今入ってきたばかりのようなおっさんが、先に席に座っている女性に話しかけてい

    • 遠い東京と息子の話 (『東京嫌い(2020)』収録作品)

      1. 暗い部屋の中、僕は机に座り、iPad proにイラストを描いている。 あかりは白熱電球のデスクライトと12.9インチのディスプレイの明るさだけ。もうすぐ夜中の12時になろうとしている。 さすがに疲れて、僕はのけぞって目を揉む。するとその拍子に椅子がギシッと音を立てた。 しまった…! と次の瞬間、隣の和室の障子がサッと開く音がした。そして、ととと…と何かが走ってくる音がする。「まーちゃん!」とうんざりした妻の声がする。 僕の机の正面は、仕事部屋とリビングを仕切る壁にな

      • UFOの時代がやってきた!!!#呑みながら書きました

        初めまして!!東京ん嫌いの方々お飛騨市ぶりです。普段なかなか文章が書けなくてnoteから遠ざかってしまっているのですが、#呑みながら書きました のハッシュタグの記事を何本か読んで、なんて素敵な企画なんだ、書くってこんなでよかったんだと感動しちゃって。初参加です。 参加していいもんか悩んだんですが(スーパー人見知りなもんで)、でもお酒ってすごいですね、謎の勢いでますよね。謎。調子乗って飲みすぎました。頑張って最近ちょっと感動したことをちょっと聞いて欲しくて書きますね。うん、い

        • 『遠い東京と息子の話』のスキ・コメントはこちらにお願いします

          Note同人誌マガジン『東京嫌い』に投稿した作品、『遠い東京と息子の話』をお読みいただきありがとうございます。スキ・コメントはこちらにお願いします。 《東京嫌い》のテーマのもと、さまざまな書き手21人が東京への愛憎を描いた読み切りアンソロジー。渋谷の老舗ワインバーのマスター、伊勢で稲をつくってサトナカを売る農民、土とことばを耕す信州のライター。noteで出会った三人による責任編集で2020年の「あの空気」を閉じ込めた、ここでしかよめない作品たちを収録。 ※本編のちょっとし

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        スタバの男女とサラリーマン

          スタバの男女とサラリーマン(コンテスト用再投稿)

          1. その日、近所のスターバックスで仕事のアイディア出しをしていたら、突然僕のすぐ近くから、「えええええーー!!おひさしぶり!」という大声が聞こえてきた。 僕はその時、国道沿いにある広いスタバの窓際に座っていた。そのスタバは勉強や仕事など、なにかしら目的のあるお客さんが比較的多い店だった。そのため普段は静かで、図書館のような雰囲気があった。それだけに、突然の大声に本当に驚いた。 みると、たった今入ってきたばかりのようなおっさんが、先に席に座っている女性に話しかけてい

          スタバの男女とサラリーマン(コンテスト用再投稿)

          申し訳ないのはこっちです

          1. どんなに超絶急いでいても、駅の改札は開かない時は開かない。特にsuicaにお金が入っていない時はなおさらだ。でも人は焦れば焦るほど、当たり前の事実から目を背けがちになる。何かの間違いでは?となんどもセンサーにカードを叩きつけ、貴重な数秒が流れていった。 この日はイラスト持ち込みの営業の日で、時間が迫っていた。その会社はなんども電話してようやくアポの取れたセンスのいい憧れの会社だった。前日から絶対遅刻しないぞと意気込んでいたが、そんな時に限ってなぜか寝坊する。自動

          申し訳ないのはこっちです

          物乞いレッスンの朝

          去年の暮れ、僕は12年住んだ千葉を去り、東京に引っ越した。長く住んだアパートを引き渡すため、ぐちゃぐちゃになった部屋の中を整理していたら、汚いインスタントコーヒーの瓶の底から、小さな南京錠が転がり落ちてきた。 とっくに無くしたものだと思ったのに、なぜここにあるんだろう? 僕の中で10年以上前の夏の朝がブワッと蘇った。 1. それは冷たい夏の日の朝のことだった。僕は変な臭いで目が覚めた。 僕は敷かれた冷たいダンボールの上で、寝袋に包まって寝ていた。一瞬ここがどこだか

          物乞いレッスンの朝

          富士山下山後の平良修の不運の話

          (カラーイラスト以外は3年前にブログに書いたものを再掲しました。) 2013年8月、富士山に登ってきた。メンバーは高校の同級生の男15名。 16日の昼過ぎから登り始め、夕方頃から山小屋で仮眠をとり、夜中に出発して山頂で御来光を拝むという計画だった。 計画は何ヶ月も前から周到に練られたが、そこに想定外のことが起きた。 メンバーの中にイビキがうるさい人が多く、十分な仮眠を採れない人が続出したのだ。そのため、僕も含め、ほぼ徹夜での登山になった人が多かった。 結果、多く

          富士山下山後の平良修の不運の話

          スッポンになった少年

          1. 高校一年の時、情報処理の授業の課題で、ホームページを作ることになった。 ホームページの目的は「東京の小学生に沖縄を紹介するぺージ」。 一班4人編成でページを作ることになったが、僕らの班は皆この授業に対してやる気がなく、なかなか沖縄の何を紹介するのか決まらなかった。そこで、僕は当時死ぬほど川釣りにハマっていたので、川で釣った魚をテキトーに写真に撮ってアップすればいいんじゃないかと提案したところ、それがあっさり通った。かくして、テーマは「沖縄の川魚」に決まった。

          スッポンになった少年

          中央線のワキ臭おじさんと酒臭おじさん

          1. 異変に気がついたのは、ちょうど中央線の青梅特快が水道橋に差し掛かったところだった。何やら香ばしいにおいが鼻につき目が覚めた。 僕はやっちまったか、と思って、慌てて自分のわきを嗅ぐ。 ところが、臭いはしなかった。そうだ、僕は東京駅でガラガラに空いた始発に乗り込んだ後、すぐにワキに男性用デオドラントを、塗って塗って塗りたくったんだった。 実はここ数年、僕は時々臭うワキのニオイに悩まされてきた。 僕のワキは、汗をかいてそのまま放置すると、ムワッとしたニオイを放ち始

          中央線のワキ臭おじさんと酒臭おじさん

          パラダイスに行こう

          1. 17年前の僕は高校のトイレに立って鏡を見る。 南国の湿度でくるくるに渦巻いた前髪。伸びきった襟足。僕の高校時代はだいたいボサボサオタクな髪型だった。一言で言ってダサい。そして、自分でもこの髪型はダサいとよくわかっている。よくわかっているけれど、いきなり髪型を変える勇気もなかった。 周りに「急に垢抜けたな」とか、「高校デビュー?」とか言われると思うとゾッとした。それで結局近所の適当な理容室に入っては、よりダサい髪型に切られてしまい自爆し続けてきた。そんな状態が、

          パラダイスに行こう

          パーティーで、テンション低いといいことなし

          1. 数年前に、東京の友人宅でホームパーティーがあった。僕は、僕にしては早い段階で友人宅に到着し、高校の同級生の男友達やーぼーとおしゃべりをした。 その家には、でっかい赤いソファがあった。合成皮だけど、フカフカで、座ると適度に沈み込む気持ちのよいソファだった。僕はこれに深く座り、正面の大型テレビをぼんやり見ながら缶ビールをすすっていたんだけれど、アルコールの酔いと共に、脳内にシータ波でも出てきたのか、他人の家とは思えないほどくつろいでしまった。頭の中がトロ〜リとして、

          パーティーで、テンション低いといいことなし

          ラーメン店の暗闇の中で

          1 その日の飲み会は壮絶に楽しかった。 相変わらず高校の同級生とつるんで飲んでいたんだけれど、久々に昔話に華が咲き、気分が完全に高校時代に戻った。一般的に、思い出話をする際は過去を実際以上に辛かったものとして捉えたり、逆に美化したりしがちだけれど、その日の僕らの会話はもはや美化を超えた、“超美化”とでも言うべきもので、辛かったこと、苦しかったことなど一瞬たりともありませんでしたと思えるぐらいに浮かれた気分になっていた。 終電で最寄り駅に降り立った時も、その気分は続い

          ラーメン店の暗闇の中で

          アシナガバチが来た

          1 それは暑い暑い夏の日の事だった。 その時僕はものすごい締め切りラッシュに襲われていた。部屋の中で1人缶詰になって作業してたが、よりによってクーラーが壊れてしまい、ベランダへの引き戸と、玄関のドアを少し開け、短パン+タンクトップ姿で、必死になってペンを動かしていた。イラストレーターにとって、締め切りに遅れることは仕事を失うことを意味する。遅れは絶対に許されない。 そんな時に奴はやってきた。 それは大きめのアシナガバチだった。それが急に視界の隅に現れ、パニックにな

          アシナガバチが来た

          消えまくるFF Ⅵ

          僕は中学の時、人並みにゲームをやったけれど、その中で特に思い出に残ったのは、『ファイナルファンタジーⅥ(FFⅥ)』だった。 どのFFもそうだけど、Ⅵは当時としてはとんでもなく綺麗なグラフィックを誇っていて、店頭のデモ動画を初めて見た時はものすごい衝撃を受けた。発売直後は何らかの理由で買えなかったんだけれど、一年後、ちょうど中学一年の時に、ゲームショップで中古のカートリッジを見つけて購入した。やってみると、映像のみならず、素晴らしい音楽やストーリーにグイグイ引きこま

          消えまくるFF Ⅵ

          アクロバティックハナゲサラサラ

          1. その日、何気なく鏡を覗くと、鼻から毛が1本、勢い良く飛び出ていた。 それは気を抜いたら出がちな、いつもの鼻毛とは明らかに違っていた。 鼻の穴から2センチほど長く垂れ下がっていたのだ。 念のため繰り返すけど、飛び出ているだけで、2センチ。 その先端はもう少しで口にかかるところまで伸びていて、僕の呼気を受けて、わずかにサラサラとなびいていた。 これにはさすがに驚かずにはいられなかった。愕然と言ってもいい。この光景に鳥肌が立った。 というのも、その時は夕方。も

          アクロバティックハナゲサラサラ