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嬉しいではないか、その1人目に僕を選んでくれて

梅雨の中休みの昨日、僕は再び上洛した。
先日娘のところに行ったばかりというのに。
なぜかこのところ京都づいている。

東本願寺はもうインバウンドに囲まれている

前職の同僚と呑むために京都に足を伸ばしたのだ。
同僚といっても二回りほど若いのだけど。
大学は僕の後輩であり、会社では僕の先輩だった。

前職を僕が辞したのは昨年の6月。
詳しくは書かないが、まぁいろいろあって退職の道を選んだ。
きっと苦悶の表情を浮かべていたはずだ。
昨日呑んだその彼女も、僕と前後して退職をした。

実は彼女とはちょうど1年前に呑む約束をしていた。
職場の日本酒好きの集まりで何度かいっしょに呑んだことはあったが、偶然同時期に辞めるということもあり、一度サシ呑みをしようと。
ところが僕はその6月、病に倒れ、話は流れた。
そしてそろそろというこの3月、再び僕は病に倒れ、また流れた。

それがついにようやく昨日叶ったのだ。
1年越しの、お待たせの呑みとなった。

僕がその会社に入ったばかりの頃、たまたま土曜出勤すると、ガランとしたオフィスに彼女がポツンと1人で仕事していたことがあった。
その日2人でランチを囲んだが、そのとき彼女が言ったのだ。
「やりたいことがあって、ここにずっとはいません」

え、、、
新卒で入社してまだ数年のはずの彼女から、まさかそんな言葉が出てくるとは思いもしなかった。
訊いてはみたが、まだ人に言えるようなものではなくて、とかわされた。

そこから3年が経った。
「やりたいことある言うとったけど、いったい何やったん?」
僕はキャリアコンサルタント的視点で訊いてみた。
彼女が話しながら何か気づけたらいいな、などと思いながら。

「えっと…実は…キャリアコンサルタントという資格があって…」

えーーー!!!!
なんと彼女は数年前に同じ資格を取得していたのだ。
せ、先輩やん。
そして、やりたかったのは働きやすい職場を整備していくことだったのだと真剣な眼差しで語る。
彼女は前の会社では事業部で和気あいあいとやっていたから、まさか管理部を希望していたとは思わず、もうびっくり。

理系の大学院まで出させてもらったのにこんな夢を持って親に申し訳ないんですが、と悲しげな表情を一瞬浮かべたが、今は別の会社の総務で望みどおりの仕事ができているという。
よかった、ホンマによかった、それでえぇやん。

地酒を何杯酌み交わしたか、あれやこれやで盛り上がる京の夏の夜。

彼女のこれからの展望を聞くうち、彼女がポツリと言った。
「こんなに自分の話を人にしたのは今日が初めてです」
嬉しいではないか、その1人目に僕を選んでくれて。
ありがとう、いっぱい聞かせてくれて。

京・八条、うまい酒と肴に話がはずむ

神戸にはなんとか滑り込みセーフで0:30に帰り着いた。
眠い、眠すぎる、いや、楽しくも幸せな時間だった。

(2023/6/24記)

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