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世の中には客観的事実などこれっぽっちもない

ある集まりでこんなグラフを目にした。
厚労省が発表した2020年1月~9月の死因別の死亡数を集計し、前年同期と比較したグラフだ。
日経新聞が2/22の記事に載せたものらしい。

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このグラフを見てどう感じるかは人によって大きく違うだろう。
ポジティブ、ネガティブ、さまざまな感想があるに違いない。

このグラフ、毎日目にする感染者数の推移グラフとは視点がまるで異なることは、見てすぐ分かる。
それゆえ、発信側の意図次第で情報なんてどうとでも変えられるものだ、危ない危ない、しっかり客観的に見なければ、と考えるのはたやすい。
たしかに事実をどう見せるかは発信側の恣意であり、意図に合う部分だけ提示される可能性は知っておくべきだ。

しかしそこに留意すれば客観視できたと言っていいのだろうか。

上のグラフで言えば、新型を恐怖の病と見なすか、風邪の一種と見なすかで受け止めはまったく別物となる。
肺炎がここまで激減するほど感染対策しているのに新型はやっぱり抑えられないのかと感じるのか、肺炎をこんなに減らせるなら新型も抑え込めそうだと感じるのか。

情報というものは、受信側のスタンスに大きく左右されるのだ。
受け止めた情報に他人の主観が混じっていることにはすぐ気づけても、それを見る目に自分の主観がフィルターのようにかかっていることにはなかなか気づけない。

物理学には観察者効果という言葉がある。
たとえば、ある物質を観察しようと光を当てたことでその物質が分子レベルで変化してしまう現象などをいう。
事実をただ事実としていささかの改変もなく受け止める機能がないのは、人間だけではないのだ。

世の中には客観的事実などこれっぽっちもない。

(2021/4/29記)

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