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中華カレーもまた神戸らしいカレーといえるのかもしれない

先日、精密検査のために休みを取った。
用あって朝から三宮にはいたが、検査は午後からだったのでどこかで時間を潰す必要があった。
あいにくの天気に陰鬱な気分になっていたが、雨はやみそうになく、諦めて車を降り、前から気になっていた元町の喫茶〈ポエム〉に向かった。

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日本最古の喫茶店〈放香堂〉の角を曲がって北へ20mほど。

飴色の天井は喫煙可の証だが、不思議と店内にニオイはない。

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狭い店内にはマンガ本がところせましと並ぶ。

コーヒーを頼み、ふと卓上のポップを見ると、自家製プリンがおいしそう。
慌てて追加でオーダーしたら、コーヒーに間に合った。

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このコーヒー、しっかりくるのにまるでイヤミがなく、うまい。
200円の自家製プリンは素朴を極め、もはや懐かしい母の味。
小さい頃、身体の弱かった僕はよく学校を休んだが、そんな時決まって母が作ってくれたプリンだ。
検査前の、めげる気持ちをこのコーヒーとプリンが救ってくれた。

あっという間に混んできたので、昼食へ。
さらに北へ20mの広東料理〈香美園(こうびえん)〉。

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僕はどの店へ行く時も可能な限り本店を選ぶ。
味も歴史も、そこが本店たる理由があると思うからだ。
この店は「民生支店」とあるが、これが本店。
店主の兄が先に南京町で〈民生〉という店をやっていたから、ここは支店ということにしようかとなっただけらしい。

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店内はスッキリした大衆食堂といった風情。

お目当てはカレー、店の一番人気メニューだ。

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ん? 中国料理店でカレー? 驚くなかれ、これは神戸では常識だ。
明や清の時代、東南アジアに進出した華僑がカレー文化を大陸南部にもたらしたという。
その証拠に神戸でカレーを出す中国料理店は、南部の広東系がほとんどだ。

客席から厨房を見ていたら、中華鍋で肉とタマネギに軽く火を通したところにダシ、カレー粉、片栗粉を入れて、ものの3分ほどでできあがり。
カレーといえば煮込むものという概念をあっさり覆す中華カレー。

サラサラのカレーはあとから辛みが追いかけてくるような中辛。
煮込まれていないタマネギがシャキシャキでうまい。

神戸には、前に紹介した旧オリエンタルホテル系の欧風カレーもある。

地下街にも、名店〈SAVOY〉をはじめカレー店がひしめいている。
先日紹介した、新進気鋭のスパイスカレー店も豊富。

さらに東京と並びインド人の多い街だから、本場インドカレーの店も多い。

そんないろんな出自のカレーがふんだんに揃う激戦区・神戸。
歴史的に神戸には華僑も多く、そのコミュニティで脈々と継承されてきた中華カレーもまた神戸らしいカレーといえるのかもしれない。

(2022/5/15記)

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