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ほろ酔い【百合小説】

「お疲れ様です」「お先に失礼します~」
定時になると女性社員はいそいそと帰り支度を始め、男性社員も一週間頑張った自分達をねぎらう為に連れ立って会社をでていく。

「明音ちゃん、今日約束でもあるの?」
由香里も仕事が終わったのかジャケットを羽織り、鞄を持っていた。
「いえ、今日は帰るだけですよ?」

業務外では中々しゃべる機会のない憧れの上司に声をかけられ、明音の声が少し上ずってしまった気がする。
「そしたら一杯付き合ってよ、奢るからさっ」
にこっと笑って明音を誘う由香里。

(そんな笑顔で由香里さんに誘われて断れる人なんかいるわけないじゃないっっ)

高鳴った胸を懸命に落ち着かせて返事を返す。
「喜んでお供させてもらいますね。ふふっ・・・他の子達に焼かれちゃうかもしれませんね」

――たしか一杯って言われた気がする。
『一杯付き合え』なんて、社交辞令のようなもので、どうせ一杯ですむはずなんかない。
お酒に強い由香里はもう何杯目だろうか。すっかり頬を赤く染めた明音がにこにこと胸の内を語り始める迄そう時間はかからなかった。

「ねぇ、由香里さん。聞いてますか?私、由香里さんのことが好きなんですよ。」
「うんうん、ちゃんと聞いてるよ?」
お酒のグラスを傾けながら明音の頭をなでる由香里は『そんなことはとっくに知ってたのに』と囁きながらこめかみにキスを落とす。
「由香里さん、好き。由香里さんも明音のこと好きって思ってくれますか?」
もう一度口付けられると、そのまま由香里の首に抱きついて耳にお返しのキスをする。
「好きじゃなかったら、二人きりでお酒になんか誘わないでしょ」
赤いルージュのついたグラスを置くと明音の頬を包み、唇を唇で封じた。



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