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朝の清水寺

 地下鉄の駅から地上へ出て、大通りの脇を歩く。午前8:00前の町はすでに大型トラックや通勤車の往来が活発になっており、歩道にも人や自転車が多かった。しかし大動脈から生える数々の路地に顔を突っ込むと、三重塔がちらりちらりとするあたりに京都の凄みを感じる。

三重塔が一番きれいに見える路地から二寧坂を目指した。産寧坂でもいいのだが、単純に自分が修学旅行の時に通っていなかった二寧坂を上る。

清水寺を目指して上ろうとした瞬間に、一気に静寂に包まれた。地面の上昇のスタートラインを境に、清水のエリアと生活のエリアが分けられる。さらに小さな看板を突き出した古めの建物の路地を抜けると、あるところから一気に日本家屋に挟まれた道になる。

気が付いたら雲一つない晴天になっていた。先ほど蹴上インクラインにいたときは、一切花の開いていない桜並木と廃線路、見事なまでの曇天と散々な光景だったが、二寧坂に入ると早春の日差しが石畳と日本家屋と静寂の中に差していた。まだまだ冬の厳しさを持ちつつも、表面が春の穏やかさにほどけている。それが我々を歓迎してるとは思えないが、無人の伝統とよく調和していた。

ある程度坂を上ると、家々の間から濃いピンクの細い桜がにょろりと出ている場所がある。そこを過ぎて振り返ると、坂と桜、五重の塔がぴたりと視界に収まるのだ。そこにはガチガチの大きなカメラを持ったフォトグラファー集団がすでにいた。さすが目敏い。

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