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紅の言の葉

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四角に収める言葉遊戯
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#ポエム

散り際にこそ美ありき

散り際にこそ美ありき

執着に囚われた男の醜態
出処進退を見誤る愚かさ
屍蝋のようなその振舞い
動揺しては裾を引っ張り
狼狽しては手を離さない
卑劣だ嬌態だ手練手管だ
その言葉のすべて受容し
自らの狡猾と冷酷を認め
汚れ穢れ廃れを確と見た
どれだけ憎まれてもいい
一生涯を以て恨むがいい
契りや縁など陽炎も同然
未来永劫続くもの等無い
此れぞ心を欺いた顛末か
我が目の曇りにすら眩暈
去り際に姿を現した本性
本当は気づいてい

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白露の告白

白露の告白

君の寝室から見える沙羅双樹になる
そんな白昼夢で僕は夢か現か微睡む
君が瞳を閉じた後の真夜中に祈るよ
どうか甘い夢を唇には淡い微笑みを
白が夜を越えるまで僕は此処にいる
朝になれば白露になって消え失せる
何の心配もいらない安心して欲しい
君の白肌は僕が守る傷一つ許さない
僕は毎晩花になり君の寝息を見守る
君の庭の聖なる白き花弁は僕なんだ
だからどうか僕を忘れないで欲しい
君が望む白夜にも必ず連れて

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リコリタ

リコリタ

世の為に献げる血も涙もありゃしません
他が為に此の命を献上するなど罰当たり
人の役に立ちたいなど微塵も思いません
他人を幸せにしたいなどお為倒しも上等
他が為より我が為に生きる此の人生です
其の様にして世間が幸福を得る結果顛末
其れを信じられぬのなら其の道を不乱に
我が身を削り歯を擦り美麗な骨粉を墓に

賊塞の祝祭

賊塞の祝祭

煙草は唯の害悪と云うが
悪を悪としか映せぬなら
毒もただ罪と罰の生産物
唯一つの眼鏡しか持たぬ
それ以外は全て悪と評す
その眼鏡が剥奪する微酔
嗜みの粋も貫禄も哀歓も
君の清さには讃歌を贈る

セヴンスターを握り締め
夜の歓楽街で酒瓶を割る
其れは宛ら往年の名男優
特別な夜には葉巻を咥え
攻めを崩さず勝ちを抜き
短かい望みをモノにした
古い男が重ねた生の歴史
時代の趨勢を生で見た瞳
君が世に生を受

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