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『農産物直売所の野菜は本当に安心安全で美味しいのか、元店員が本気出して考えてみた』

たまたま自宅から遠いスーパーに足を伸ばしてみたら。
地場野菜コーナーがね、出来てたんですよ。

別に地元密着型のスーパーでもなく、全国区の大手スーパーマーケットなのですが。
どうやら地元企業の農産物直売所とコラボしたみたいで『これは誰々さんが作った野菜です』ってPOPと一緒に、色んな種類の野菜が置いてあったんです。

それを見ていたら、私が暗黒時代に勤めていた農産物直売所をちょっと思い出してしまいました。

農産物直売所が台頭してきたのは、ここ10年20年程の話ではないか、と思います。

たぶんそのきっかけになったのは『道の駅』の存在が大きくて、道の駅が観光地化され始めてから、そこで地元のお野菜を売り始めたり、地元の工芸品、伝統品をクローズアップするようになって、「地産地消」って言葉にも、注目が集まるようになったんじゃないかなぁ、と。

今じゃ『ファーマーズマーケット』なんてカッコいい名称で呼ばれるようになって、農産物直売所もずいぶんと地位を確立したなーとテレビなんかを観ると思うわけです。

でもその『農産物直売所』、意外と行ったことない方も多いんじゃないかな?と思うのと、
行ったことがある方も、実際売られているお野菜に“当たり外れ“があるのに気づいた方もいると思います。

そこで農産物直売所で店舗責任者として勤めていた私が、皆さんの知らない裏側の話をご紹介。

食の安全が叫ばれる昨今。
『顔の見える野菜』『農家直売』を売りにしている農産物直売所で販売されている野菜は、
本当に安全で安心で美味しいのか?
ちょっとお話してみたいと思います。

1.そもそも農産物直売所とは

ご存知のない方に軽く説明すると、
農産物直売所とは農家さん(生産者)が直接野菜を卸してくれる小売店のことです。

通常のスーパーで売られている野菜というのは、基本的に市場や農協仕入れです。
まあ、よほど規模の大きいスーパーになるとわかりませんが、大抵市場や農協でまとめて仕入れたり契約して、それを各店舗に配送するんじゃないかと思います。

つまり農家さんが作った野菜がスーパーや小売店に並ぶまでには、農協や市場といういくつかの場所を経由するんですね。
よく「綺麗な野菜じゃないと売れないから、形の悪い野菜は廃棄する」って話を目にすると思いますが、それは農協を通すからです。
ある程度品質を担保された商品(秀品)じゃないと、農協では引き取ってくれないのです。

農協の規格はめちゃくちゃ厳しいです。
ちょっとした傷があってもダメですし、虫食いがあってもダメ。
野菜を入れる袋とか箱にも指定があります。
スーパーに行くと、ほうれん草や小松菜なんかがみんな同じデザインの袋で売ってたりしますが、それは農協が「それに入れて出荷するように」と指示を出しているからなんですね。

では規格外野菜はどうなるでしょうか
秀品でなく、ハネられてしまった野菜はどこに行くのでしょうか。
今は規格外野菜を扱う業者も増えてきましたし、一部スーパーでも規格外野菜を売るところもあるので(いわゆるB品)、昔ほど無駄にならなくなったというか、そちらにそのまま卸す農家さんも多いですが、正直B品は買い叩かれるので、ほとんど利益にはなりません。

その規格外野菜の受け皿になっているのが『農産物直売所』です。

2.規格外野菜の受け皿

廃棄の運命を辿る規格外野菜。
それらを廃棄せずに済んだら。
それが売れたら、農家さんは助かりますよね。
まあ、その分包装の手間はかかりますし、経費もかかりますが、それでも農家さんたちが農産物直売所に卸すのはある理由があります。

それは『価格を自分で決められること』です。

私は直売所の人間だったので農協はそれほど詳しくないですが、農家さんが出荷した野菜が農協、市場、さまざまなものを通っていく以上、そこで必ず中間マージンが発生します。
例え高い値段で野菜が売れても、農協を通せば農家さんに入る金額はその何割かです。

しかし農産物直売所は違います。
農家さんが、自分の思う価格で、野菜を売ってよいのです。
「自分のところの野菜は自信があるから、1袋300円で売る」と思えばそうしたらいいし、
「この野菜は形が悪いから、1袋100円で大量に売り捌いてしまおう」と思うならそのように値をつけて良いのです。

もちろん農産物直売所も商売ですから、商品が売れた金額の何割かは農産物直売所の売上になりますが、農協と比べたら遥かに利益が出ます。
買い叩かれることもなく、自分の決めた値段で売るのですから、もしも売れなかったとしても、ある程度農家さんも納得出来る。

なので、農家さんは規格外野菜をどんどん農産物直売所に出荷するんですね。

ただ、秀品の野菜はまだまだ農協に卸した方が利益が出ます。
農産物直売所だと売れた分の売上のみですが、
農協だと大量でも全部引き取って(正式には違いますが、買い取って)くれますしね。

人気のある農家さんなら大量に持ち込んでも結構売れるんですけど、それでも直売所だと少なからず売れ残りは出ちゃいますからね…。
そうすると結局値下げしたり、廃棄処理しなくてはならないので、直売所も博打なところはあります。

3.今は規格外野菜だけじゃない

最近の若い農家さんに多いのですが、規格外野菜以外の秀品を出す農家さんも増えてます。
農協に依存しない農家さんが増えた、ということですね。

昔は農家といえば農協であり、出来た野菜はまず農協に出荷するのが当たり前というか、それが当然と疑わなかった農家さんが多かったし、農家と農協の繋がりって切っても切れない関係だったんですよね。

田舎だと特に、嫌な話ですが、農協に睨まれたら村八分というか、嫌がらせを受ける農家さんも多かったですし。

でも今は違う。
自ら販路を開拓し、直売所だけじゃなく、地産地消を謳うレストランや、大手スーパーと契約して、農協を通さずに野菜を売る農家さんが増えたのです。
そういった農家さんは、そもそも秀品を農協に卸す必要がないので、出来のいい野菜をそのまま直売所に卸してくれます。

昔は“安かろう悪かろう“も多かった農産物直売所ですが、消費者の目も肥えた今の時代では、それでは生き残っていけないのです。

4.農産物直売所で野菜を買う時のポイントとは

🍅まず売り場を見る

まず、売り場全体を見渡して、パッと目につく場所に置いてある生産者の野菜を見てください。
それは規格外かもしれないですが、間違いなく美味しい野菜が多いです。

農産物直売所にも売れ筋があります。
人気の高い生産者の野菜です。

味が良かったり、規格外であっても品質の良いものを出してくれる農家さんです。

そういう農家さんのお野菜は、店としても早く売れてほしいので(売上を伸ばしてあげたい)、目立つ場所に必ず置きます。
なので、あなたがパッと店を見渡したときに、目につく場所に置いてある野菜はきっと良いものが置いてあるはずです。

🍅POPをよく確認しよう

自分の野菜、商品に力を入れている農家さんは、大抵自分でPOPを作っています。

特に無農薬野菜を売りにしてる農家さんなんかは、そのへんはかなり熱心です。
まあ、無農薬栽培をしている農家さんの年齢層が若いせいもあるかもしれませんが、結構きっちりとしたPOPを作ってます。

お野菜のアピールポイントをしっかり説明できてる農家さんの野菜は美味しいです。

🍅迷ったら偉そうな店員に訊こう

農産物直売所の場合、農家さんと直接やりとりをするのは店の責任者か店長です。
責任者がバイヤーのような役目を果たすので、店にある野菜の味、売り方、新鮮さ、どの生産者がおすすめなのか、そして珍しい野菜の調理の仕方まで、必ず頭に入っているはずです。

同じ野菜でも、さまざまな生産者がいて、どれを選んだらいいのか迷った時は、お店で偉そうに振る舞っている店員に話を訊いてみましょう。

逆に、お客様からの質問にスッと答えられない店員が多い店はヤバイです。
スーパーならまあ、仕方ない部分もありますが、直売所でこれは話になりません。
自分が味も知らないものをテキトーに売っている可能性大。

🍅安すぎるものはよくない

最終的にはこれです。

人気の高い生産者、農家さんが出している物って、やっぱり美味しいんですよ。
そして“美味しいものを作ってる“って自信がある農家さんは、闇雲に安い値段をつけたりしないものです。

自分を安く買い叩くようなことはしないですし、むやみやたらに安い値段をつけて、市場価格を下げる真似もしないんですよね。
だって美味しいし、買ってくれるって自信があるから。

安い値段をつける農家さんって、正直野菜の味もそれなりだな、と私は思います。
家計的には助かるんですけどね。

🍅綺麗な店は正義

古くからある直売所を馬鹿にするわけではありませんが、正直、野菜自体の品質でいうとやはり新規参入の店舗の方が力は入ってます。

中には農協レベルの秀品しか取り扱わない店舗もあるってよく聞きますし。
たぶん道の駅レベルになると、特にそうだと思います。

なので「ちょっと高くてもいいから、普段スーパーでは買えない野菜、味の良い野菜が欲しい」人は、道の駅やまだ出来て新しい農産物直売所に行けばいいと思いますし、
逆に「とにかく安くてそれなりに良い野菜が欲しい」人は、昔ながらの直売所がおすすめです。

5.『本当に安心安全なのか?』

これはもう正直「人による」です。
農産物直売所に野菜を出す農家さんには、とてもいろいろな人がいます。

昔からの専業でやっていて、ずっとその野菜を作り続けてきたベテラン農家さん。
数年前から始めたばかりだけど“良い野菜を作りたい“って情熱に溢れた若手の農家さん。
無農薬栽培や、自分なりのこだわりを持って、採算度外視で野菜を育てる農家さん。
野菜作りは趣味だけど、お小遣い稼ぎになればいいや、と、家庭菜園レベルの野菜を出荷する農家ですらない人。
余った野菜が無駄にならなければそれでいいと考えている農家さん。

まあ、本当に色々です。

農薬云々を抜きにして、身も蓋もないことを言ってしまえば、おそらく1番安心で安全なのは農協の野菜じゃないでしょうか。
だってしっかりとした規格で決められているわけですから。

そもそもよく言われる『安心で安全な野菜』ってなんでしょうか。
無農薬ですか?減農薬ですか?それとも国内生産ですか?

先程述べたように、農産物直売所に野菜を卸す農家さんにも色々いるわけです。

専業農家もいれば、兼業農家もいる。
そもそも農家ですらない人も。
独学で勉強して、独自の野菜作りをしている人もいるでしょう。

あからさまにヤバイ野菜(傷んでるとか)は直売所の人間としても、信用を失いたくないので売りませんが、でも、使われてる農薬の量とかはわからないわけですよね。

生産者の審査基準の厳しい直売所はわかりませんが、そんな審査なんかろくすっぽない直売所もあるわけですから。

市場流通している品が全て信用できるわけではありませんが、だからといって直売所が信用出来るかと言われたら、私は首を傾げたくなります。

6.美味しい野菜を作る農家さんを探そう

少なくとも直売所に売っている野菜は、産地偽装だけはやりようがないというか、大抵が地元の農家さんなのですから、その点では安心は担保されていると思います。

あとは“自分にとって信用出来る生産者を探すこと“だと思うんですね。

安心安全はとりあえずおいといて。
いつでも美味しい野菜を出してくれている生産者さんを見つけること。
その人の出している野菜なら、絶対美味しいから安心して食べられる!と思える生産者さんを探し出すこと。

せっかく名前と顔が見える状態で売っているんですから。
「いつ買ってもこの人の野菜は美味しいなあ」って思える農家さんを見つけることが出来れば、
それが1番幸せなんじゃないかなって私は思うし、きっと農産物直売所の面白いところも、そこなんじゃないかなって思います。

毎日口にする食べ物だからこそ、
自分自身が納得出来るものを買いたい。

農産物直売所が台頭してきた背景には、そう思う消費者が増えたという一面もあるのでしょう。

色々なものの価格が高騰して、それなのに未だに買い叩かれる野菜があって。
農家さんも大変なご苦労をされていると思いますが、昔直売所に携わっていた人間として、農家さんには頑張って欲しいと心から応援しています。

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