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ブックガイド

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2024/10/02ブックガイド スピード・バイブス・パンチライン ラップと漫才、勝つためのしゃべり論

スピード・バイブス・パンチライン ラップと漫才、勝つためのしゃべり論
つやちゃん

人の心を動かすしゃべりとは何か?筆者はそれをスピード・バイブス・パンチラインの三項に分類し、ラップと漫才の膨大な引用によってしゃべくり倒す。本書を話芸向上のための虎の巻だと思って読むと面を食らうことになる。本書はラップゲームや賞レースでしのぎを削り合うスター達のスタイルウォーズ、そういったアレコレを愛のある文章で語

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2024/09/26ブックガイド 手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)

手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)
穂村弘

なんだこれは。ストーリーがあるようで破綻しているようで実はあるような不思議な歌集。内容も良かったが、この本が作られた経緯が凄まじい。あとがきにあるように、これは筆者宛に届いた手紙(591通)からインスパイアを受けて作られた歌集らしい。しかもどうやらその手紙を送っていた手紙魔まみのモデルは、なんと歌人の雪舟えま!知らなかった!とにかく奇天烈で眩しい歌と

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2024/09/24ブックガイド ただしい人類滅亡計画 反出生主義をめぐる物語

ただしい人類滅亡計画 反出生主義をめぐる物語
品田遊

突如この世に生まれた魔王が、10人のカラフルな人間を集め、人類を滅亡させるか生存させるか話し合い、おれを納得させてみろ!というのが大筋の物語。人類の存続がかかってるいるのに非常にポップに話し合いが進むが、産まれてくることがすでに悪だという「反出生主義」が出てくるとシリアスに。滅亡なんてあり得ないという漠然とした価値観を揺らすこの主張。哲学的な

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2024/09/21ブックガイド 花森安治の仕事

花森安治の仕事
酒井寛

字面がカッコ良すぎる、でお馴染みの花森安治の仕事に焦点を当てたエッセイ。庶民の立場を取り、大袈裟じゃなく日本の企業の競争力に甚大なる影響を与えてきた花森御大。そんな彼の生い立ちから、戦中の大政翼賛会時代の事、暮しの手帖を作る事へのこだわりが淡々とした文章で綴られている。筆者自身もジャーナリストであり、花森を尊敬し興味を持っていたということで没後ではあるがペンを取り、この本

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2024/09/14ブックガイド ピアニストに御用心!

ピアニストに御用心!
山下洋輔

ジャズマンもといドンバもといソークメナーズ(糞なめ)もといピアニストの山下洋輔のハチャメチャなエッセイ。最初のセッションリポートからして、大人数人とがきが部屋中を散らかし回る。そしてこれがジャズだ!セッションだ!と言ってのける。キチガイだ。ジャズの話そっちのけで始まる野球の報告も興味深い。「野球だけはビシッとやりてぇよな。だらだらやったら、仕事と同じだ」なんて名言

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2024/09/04ブックガイド ゼッタイ!芥川賞受賞宣言 新感覚文豪ゲームブック

ゼッタイ!芥川賞受賞宣言 新感覚文豪ゲームブック
佐川恭一

ゲームブック童貞をこの本に捧げる。美人読書家を手に入れる為に芥川賞受賞を目指す主人公。その主人公の行動を読者がチョイスしていくというゲームブックスタイル。死にゲーすぎて何度ゲームオーバーになったかわからない。一応トルゥーエンドまで辿り着いので読了とさせていただく。努力だけでは芥川賞は取れない。大事なのは女子との出会いだ。出会いがなければ

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2024/09/02ブックガイド デッドライン

デッドライン
千葉雅也

傑作青春小説と言っても過言ではないかも知れない。物語の主題の、主人公がゲイだとか、卒論に追われるだとか、哲学がどうのこうのはこの際置いておく。なぜならよくわからないから。ただ、この金のある学生生活を謳歌しているという主題とはズレた視点で物語を読むと単純に面白い。小難しいことは脇に置き、テクストの現実に従う。保坂和志のような緩い時間の流れと、映画を撮ったり酒を飲んだり性に奔

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2024/08/29ブックガイド 無銭横町

無銭横町
西村賢太

「てめぇ、この乞食野郎!チリ交まがいの、せこいバタ屋商売をしてやがるくせに、いっぱしの古書店ヅラをしてんじゃねぇよ!どうせこんな場所でのしがない雑本売りじゃ、すぐと惨めに店を畳むことにもなるだろうぜ。借金かかえて首吊って死ね!」名文である。孤高の私小説家、西村賢太の短編集。その表題作の中で、古書店の店主相手にこの暴言が飛び出す。その後、走って逃亡し、この店を二度と利用できない

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2024/08/26ブックガイド 小山田圭吾 炎上の「嘘」東京五輪騒動の知られざる真実

小山田圭吾 炎上の「嘘」東京五輪騒動の知られざる真実
中原一歩

大大大人気ポッドキャスト番組、奇奇怪怪の中でタイタン氏が今年ベストかもと語っていた本作。27年前の雑誌のインタビューが原因で大炎上してしまった小山田圭吾。彼を擁護するためではなく、ただ真実を知りたいということでこの本は書かれている。最終的には当時のインタビュアーに対して胸糞悪くなる、が、それでも彼はやっていない。この本を通じてCor

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2024/08/21ブックガイド エラー

エラー
山下紘加

大食いフードファイト飯テロガールがクイーンになる物語。朝の空腹時に一気読みしたけど、腹が減るどころかもう何も食べれないと思うほど満腹になる。読んでるだけで。サクサク読めるし筋も分かりやすいのに、どことなく不穏が立ち込めていて面白い。プロデューサーとの関係。水着。同級生。不正。彼氏の謎の熱意。徐々に変わっていく主人公の体調。便意。さまざまな不穏な要素は回収されず、意識が切れるよう

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2024/08/20ブックガイド ファイトクラブ

ファイトクラブ
チャック・パラニューク

言わずと知れた、カルト的人気を誇る大傑作映画、の原作。ちなみに映画は未視聴。俺以外に、原作のみにしか触れてない人間はいないんじゃないか。原作厨。殴り合いの中にこそ生がある、と信じて疑わない人間達の破滅とロマンス。社会への不満を口にするより、自分の生きたい生き方を生きてみることを教えてくれる指南書。「人は人にすぎず、出来事は出来事にすぎない」というラインに救

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2024/08/12ブックガイド ふりょの星

ふりょの星
暮田真名

川柳のビッグバン!わかりやすいけど難しい。意味のないことをどんだけかっこよく言うか?いや、それっぽく言うか?それも当てはまらない気がする。強いて言うならブッとんでる。謎の言葉で章立てされていて、最初の章は、OD寿司。絶対シラフじゃない笑 意味わかんないのになぜかグッとくる力技。けっこうヤラレタ。「アサガオに寿司を見せびらかしていい?」「おいしくて強い煙草になりなさい」「おそ

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2024/08/10ブックガイド 暇と退屈の倫理学

暇と退屈の倫理学
國分功一郎

なぜ人間は暇と退屈をしてしまうのか。本書はその原理論から始まり、系譜学、経済史、疎外論、哲学、人間学、そして倫理学と章立てされていて、非常に非常にわかりやすく暇と退屈を紐解いていく。ややこしい名前の哲学者やらなんやらの引用が続くが少しも退屈しない。付箋を貼らずに読んだことを死ぬまで後悔するレベル。人間は不幸を求めている。ウサギ狩りに行く人にウサギを渡すとちょっと嫌な

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2024/08/01ブックガイド ケチる貴方

ケチる貴方
石田夏穂

度を越えた冷え性の持ち主が主人公の「ケチる貴方」脂肪吸引に取り憑かれ、ダウンタイムに至上の喜びを見出してしまった女が主人公の「その周囲、五十八センチ」の二編収録。どちら話も、コンプレックスの解消のために常軌を逸した努力をする様が描かれている。冷え性の主人公が、人の為に行動すると体が温まるシステムに気づき、そこから雑務やらを受け入れられようになる過程の、人の為と見せかけて自分

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