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パリの現在を発信するコンテンポラリーアートの拠点 LE CENTQUATRE-PARIS

躍動的なパリのアートセンター

2020年2月〜3月パリ  ロックダウン寸前まで、Cent quatre-Parisのアーティスト イン レジデンスに滞在し、作品制作と10日間の劇場公演を行なってきました。
これまでに無かった、とても刺激的で、パリのアートシーンのエネルギー漲るスペースを紹介します。

パリには数多くの素敵な美術館や劇場がありますが、移民が多く、パリの比較的恵まれていない地域の近くに位置します。19区の104 rue d'Aubervilliersにあるこの文化施設は、問題を抱えた地域に文化と資金を注入し、パリ市の再開発する手段として2008年10月11日に誕生しました。

元来この建物は、1874年に2年間の作業を経て建造された、フランス人建築家ヴィクトール・バルタールの歴史的作品です。建築は当時の工業建築のスタイル(大規模な駅や展示ホールの建築様式)で考案され、ガラスとレンガを使用して鋳鉄のフレームの周りに建設されました。120年以上に渡り、パリ市の葬儀場として運営されていました。
長さは270mを超え、15,848m²の面積に広がり、床の総表面積は36,800m²、そのうち25,000m²が展示スペースを有します。Cent quatre-Parisは、世界中のオーディエンスと、アーティストのためのレジデンス、制作、普及のための巨大文化施設に生まれ変わったという歴史があります。

古いレアール

古いレアール2

ヴィクトール・バルタール((Victor Baltard, 1805年6月9日 - 1874年1月13日)フランスの建築家。 
代表作 パリ中央市場、パリ、1852年から1866年
    サン・ド・ギュータン教会、パリ、1866年
    スクレタン市場、パリ、1866年
上の写真は、1971年、惜しまれながら解体された 『パリ中央市場 』 
12世紀から続いた市民の台所は、1866年、 パリ改造 の一環として鉄骨構造に建て替えられました。19世紀後半、剥き出しの鉄骨構造はフランス各地 で流行しました。

Cent quatre-Parisは、フランスで非常に人気が高く、現代的で挑戦的なプログラムを通じて、劇場、ダンス、サーカス、音楽、ビジュアルアート、パフォーマンス、今日の全ての芸術の提供を可能にしていて、年間600.000人のオーディエンスを対象にしたコンテンツをプログラムしています。

104外観

施設は、一度に5,000人の訪問者を収容できるように設計されて、そこには年間約200人のアーティストが滞在し、制作、発表を行なっています。
ユニークなのは、レストラン、カフェ、書店、6歳未満の子供向けのスペースMaison des Petits、中古品専門のブティック「エマウス(Emaüs)」もあります。エマウスは、失業者たちが結束してつくった大規模なリサイクル団体で、粗大ごみや回収センターに集められた中古品を販売できる状態にして店で売るシステム。パリにはブティックが数軒あり、蚤の市と同じように面白い掘り出し物が見つかる場所として人気です。コミュニティ参加活動や職業体験プログラムを実施しています。

アマチュア芸術家の実践のためのフリースペースもあります。フリースペースには、毎日開館から閉館まで、若者たちが集まり、アートの鑑賞だけでなく、自ら表現者を目指すパフォーマーやダンサー、俳優の卵たちが、所狭しと格好の練習場になっています。
私も休憩中に眺めているだけで、楽しい時間が過ごせました。
他にも、インキュベーターに加わるベンチャー企業にとって、アートとイノベーションの交差点というテーマも掲げていて、実験的イベントも定期的に実施しています。
私が居た2020年3月もVRの若手クリエーターやベンチャー企業の展示会や〝Le BAL〟というクラブイベントを行なっていました。

104ダンス

104展示

104ウォール

Open Wallは、さまざまな言語で書かれた明るいネオンサインを組み合わせて設置されています。Pascale Marthine Tayouが作成したこの作品は、一般市民を招き、Cent quatre-Parisに足を踏み入れ、アートの世界に存在する壮大なものすべてを観察することを目的としています。

104本

Exchange図書館と呼ばれる川俣正のアートワークが常設されています。モバイルライブラリーの擬人化であり、ソーシャルでインタラクティブな体験を目的としています。

Director José-Manuel

104ホセ

フランスのアート界で感じる事は、ディレクターのチカラです。

ディレクターのホセ=マヌエル ゴンサルベスは、2000年代のフランスのアート界の避けられない人物の一人であると云われています。5歳の時にフランスに渡って来たポルトガル人は現在、パリで最も重要なコンテンポラリーアートスペースの一つであるCent quatre-Parisのディレクターです。

2010年からCent quatre-Parisのディレクターに就任し、施設をアート界の注目とオーディエンスの支持を一気に獲得しました。2014年、2015年のNuit Blancheのプロデューサーとして、最近のコンテンポラリー アートサーキットPaysages Bordeaux 2017やLe FresnoyのPanorama 20などの多くの展覧会のキュレーター、アートスタジオのナショナル スタジオ グランド パリエクスプレスの文化プロジェクト、また、ボルドーのカルチャーシーズン中に2019年6月に発売されたコンテンポラリー アートサーキットをキュレーションしました。

彼はCent quatre-Parisについて、こう語っています。
「すべての人に開かれた対話、出会い、発見の場であり、創造のプロセス、制作におけるアートを明らかにすることにより、アートへのアクセス手段を増やすことを目的としています。そこでは多くの活動が行われています。劇場、展示会、音楽、ダンス・・・」


パリを訪れる機会があれば、是非立ち寄ってみて下さい。きっと、アートのエネルギーが感じられる筈です。
周辺には、サン・マルタン運河の北側にあたるウルク運河 やラ・ヴィレット公園があります。55ヘクタールの敷地面積を誇るパリ市内最大の公園です。 広い園内には、欧州最大級の科学博物館、シテ科学産業博物館やパリ管弦楽団の新拠点であるコンサートホール、フィルハーモニー・ド・パリなどの文化施設があり、隣にはシテ・ドゥ・ラ・ミュージックという音楽博物館も併設され、パリ国立高等音楽・舞踊学校コンセルヴァトワールも此処にあります。子供から大人まで楽しめる総合公園です。また、年間を通じて様々なイベントが開催されており、夏のパリの風物詩Cinéma en Plein Air(野外映画祭)もここで行われます。
中国人街、アフリカ人街、インド人街が周辺に点在しているので、多国籍なスーパーやレストラン等、パリのエキゾチックな側面にも出逢えます。

LE CENTQUATRE ♯104 PARIS

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LE CENTQUATRE 公演でのインタビュー映像






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