UT-humanitas

小学魔たちが、本を閉じ、重い腰を上げ、研究室を這い出て、ついに赤門の外へ。東京大学の人…

UT-humanitas

小学魔たちが、本を閉じ、重い腰を上げ、研究室を這い出て、ついに赤門の外へ。東京大学の人文学系大学院生が、自らの研究活動をより多くの人に知ってもらおうと結集し、UT-humanitasを立ち上げました。ジンブンガクを、ジブンゴトに。

マガジン

  • 外国語記事紹介

    英語、フランス語、ロシア語、、、UT-humanitasには、研究のために様々な外国語に習熟したメンバーたちがいます。それぞれの得意言語を生かし、海外のいまを伝える記事を日本語で紹介していくという試みです。

  • 2019駒場祭特集(無料記事)

    2019駒場祭で行った展示『ジブン×ジンブン』の内容を、文章という形で公開していきます!来場された方も来場が叶わなかった方も、ぜひご覧ください。

  • 2019駒場祭特集

    2019駒場祭で行った展示『ジブン×ジンブン』の内容を、文章という形で公開していきます!来場された方も来場が叶わなかった方も、ぜひご覧ください。このマガジン内の記事4本は有料公開となっています(各150円、マガジンとしてまとめ買いの場合は300円)。

記事一覧

ジブン×ジンブン なんでも相談会のお知らせ

こんな悩みはありませんか? 「大学に入ったけど、大学の勉強ってどうやれば良いのか今一つよくわからない…」 「哲学や文学、歴史学などに何となく興味はあるけど、どうい…

UT-humanitas
3年前
4

学振DC体験談(人文学・社会科学の場合)

はじめに 博士課程への進学をめざす人や博士課程の院生の中には、「日本学術振興会特別研究員」(以下学振)への申請を考えている方もいると思います。申請して採択される…

UT-humanitas
3年前
38

イギリスでの年齢差別と定年制度〜英語記事紹介④〜

今回紹介するのは昨年末にイギリスの新聞インディペンデントから出た年齢差別に関するこちらの記事です。 差別と聞くと多くの人は性別や肌の色、国籍に基づいたものを想像…

UT-humanitas
3年前
8

命を守ること、その裏側

久しぶりに晴れたので近所の素敵な小川を眺めながらボーッとベンチに座っていた。すると公園の管理人が近づいてきた。ロックダウンルールの下では外でのエクササイズは許さ…

UT-humanitas
3年前
10

君だって、ハマベミナミと

「ハマベミナミと付き合いてー」 ハマベミナミ。そうだ、浜辺美波。家庭教師をしていた子が口にしてた芸能人だ。TWICEというKPOPアイドルが好きだった彼女は日本人では浜…

UT-humanitas
3年前
18

「枠組み」から歴史を考えるー衣笠太朗『旧ドイツ領全史』感想(part.2)

衣笠太朗『旧ドイツ領全史』(パブリブ、2020年)について、ヨーロッパ史・ロシア史を専攻するメンバーのエッセイを2回に分けてお届けします。第2弾の今回は、本書の扱って…

UT-humanitas
4年前
13

「ドイツ史」ではない歴史―衣笠太朗『旧ドイツ領全史』感想 (part 1)

衣笠太朗『旧ドイツ領全史』(パブリブ、2020年)について、ヨーロッパ史・ロシア史を専攻するメンバーのエッセイを2回に分けてお届けします。第1弾の今回は、とくに近現代…

UT-humanitas
4年前
21

歴史系「芋づる式! 読書MAP」〜UT-humanitas版〜

昨年の秋、岩波新書が企画した「芋づる式!読書MAP」という読書案内をきっかけとして、Twitterでも「#芋づる式読書MAP」というハッシュタグが流行しました。個性あふれるマ…

UT-humanitas
4年前
20

無意識の差別とイギリス教育〜英語記事紹介③〜

Black Lives Matter、この標語がいま世界中を席巻していますね(*1)。知り合いの小学生2人も「ニュースで見た!」と少なからずの関心を寄せていました。 そこで今回はイ…

UT-humanitas
4年前
14

試験中止、コロナ禍のイギリス教育界 〜英語記事紹介②〜

現在日本では「9月入学制度」の必要性が盛んに議論されていますが教育現場の混乱は日本だけではありません。イギリスでも同様に大きな混乱が起こっています。それというの…

UT-humanitas
4年前
15

おかえり、シネマ〜仏語記事紹介②〜

 今回もコロナウイルスに関連する記事をご紹介します。またかよ、という感じかもしれませんが、なし崩し的に元の生活が戻りつつある日本とは違い、感染拡大で至るところ打…

UT-humanitas
4年前
15

パリの制限解除と「道飲み」現象〜仏語記事紹介①〜

 今回は5月22日にフィガロに投稿された上の記事を、説明を加えつつ訳していきます。 仲の良い友人で集まって、グラスを手にテラス席で楽しい時間を過ごすなんてことはま…

UT-humanitas
4年前
14

コロナとイタリアマフィア〜英語記事紹介①〜

今回紹介するのはロックダウンが続くイタリアでマフィアがどのように暗躍しているのかを綴った記事に関する5月6日にYoutubeで公開されたニュース映像です。BBCの記事を元に…

UT-humanitas
4年前
9

ハムスターの国

COVID-19が世界中で猛威をふるい日本中で自粛が続いています。人文学に身を置く者としてこの状況に一石を投じるような記事を、なにか、書きたい、と思いつつもゼミの発表準…

UT-humanitas
4年前
8

テナガザルから、コタキナバルのテングザルへの手紙 〜その3

 連載最終回。  なかなか暑さが和らがないが、そろそろ秋なんだってことは、ツバメの焦りからなんとなく推測できる。きみのところへの帰り支度が始まった合図だ。ここと…

UT-humanitas
4年前
4

テナガザルから、コタキナバルのテングザルへの手紙 〜その2

メンバーのたわむれ創作、連載第2回をお送りします。 「その1」は次のリンクから。  きみの家族構成についてはもう何度か議論している。前にも書いたけど、わたしはひ…

UT-humanitas
4年前
5

ジブン×ジンブン なんでも相談会のお知らせ

こんな悩みはありませんか? 「大学に入ったけど、大学の勉強ってどうやれば良いのか今一つよくわからない…」 「哲学や文学、歴史学などに何となく興味はあるけど、どういうことをやっているのかよくわからない…」 「興味のあるテーマはあるが、進学先をどこにしたら良いのかわからない…」 「英語はもちろん、2外ってどう勉強していけばいいんだろう...」 私たちが力になります!  そんな皆さんのお悩みを、ジブン×ジンブンの大学院生がZOOMでお聞きします! 想定質問集 「~という授業を受

学振DC体験談(人文学・社会科学の場合)

はじめに 博士課程への進学をめざす人や博士課程の院生の中には、「日本学術振興会特別研究員」(以下学振)への申請を考えている方もいると思います。申請して採択されると2年または3年の間月額20万円の研究奨励金に加えて研究費も支給されるため、大学院で研究を行ううえで大きな助けになる制度です。しかし、その分希望者も多いため、例年の採択率は2割前後にとどまっています。 申請の準備を進めるうちに、他の申請者がどう対処したのか知りたくなるちょっとした疑問や不安なども出てくるのではないでしょ

イギリスでの年齢差別と定年制度〜英語記事紹介④〜

今回紹介するのは昨年末にイギリスの新聞インディペンデントから出た年齢差別に関するこちらの記事です。 差別と聞くと多くの人は性別や肌の色、国籍に基づいたものを想像すると思います。しかしこのケースの特徴的な点はそれが年齢を理由とした差別であるということにあります。そしてさらに注目すべきは問題が起きたのがオックスフォード大学という世界最高峰の学術機関であったということです。 年齢差別は英語ではAgeism(エイジズム)やAge Discriminationと呼ばれておりこれまで

命を守ること、その裏側

久しぶりに晴れたので近所の素敵な小川を眺めながらボーッとベンチに座っていた。すると公園の管理人が近づいてきた。ロックダウンルールの下では外でのエクササイズは許されている。ただウォーキングは良いけどベンチに座り続けるのはダメなんだよ。丁寧に、そして同情混じりのやるせない口調でそう言われた。 心の中ではそんなバカなことあるか!と叫んだがイギリスという異国における移民という弱い立場なのでやむなく立ち去った。世のウォーキング信者の歓喜の声とピクニック信者の嘆きの声が聞こえてくる。ど

君だって、ハマベミナミと

「ハマベミナミと付き合いてー」 ハマベミナミ。そうだ、浜辺美波。家庭教師をしていた子が口にしてた芸能人だ。TWICEというKPOPアイドルが好きだった彼女は日本人では浜辺美波が好きだなと言っていたっけ。知らないのと彼女があまりにも驚くので、授業中だけど画像検索で見せてもらった記憶もある。綺麗な顔立ちの人だねと適当な返事をした記憶もある。 「いいね」 「でも俺には無理だな、キラキラした世界じゃないし。お堅い論文書くだけの貧乏文系院生なんか接点も需要もないんだよ」 「なるほど

「枠組み」から歴史を考えるー衣笠太朗『旧ドイツ領全史』感想(part.2)

衣笠太朗『旧ドイツ領全史』(パブリブ、2020年)について、ヨーロッパ史・ロシア史を専攻するメンバーのエッセイを2回に分けてお届けします。第2弾の今回は、本書の扱っているテーマを「枠組み」という視点から考えてみたいと思います。 1.はじめに:なぜ「枠組み」か?  どんなことであれ歴史を書くときに重要になってくるのが「枠組み」です。範囲、と言い換えてもいいかもしれません。要するに、時間(何時代か?)と空間(どこの地域か?)の対象をどこまでにするのか、ということです。もしこの2

「ドイツ史」ではない歴史―衣笠太朗『旧ドイツ領全史』感想 (part 1)

衣笠太朗『旧ドイツ領全史』(パブリブ、2020年)について、ヨーロッパ史・ロシア史を専攻するメンバーのエッセイを2回に分けてお届けします。第1弾の今回は、とくに近現代に注目して、「ドイツ史ではない」旧ドイツ領の歴史について考えてみます。  衣笠太朗『旧ドイツ領全史』(パブリブ、2020年)を読みました。ドイツ史に明るくない私のような読者であっても読みやすいような工夫が随所に施されている!カラーページが充実していて現地に行きたい気持ちがかきたてられる!!図版はさらに充実してい

歴史系「芋づる式! 読書MAP」〜UT-humanitas版〜

昨年の秋、岩波新書が企画した「芋づる式!読書MAP」という読書案内をきっかけとして、Twitterでも「#芋づる式読書MAP」というハッシュタグが流行しました。個性あふれるマップを眺めていると、思いがけない本と出会えたり、その人の頭を覗くような楽しさを味わうことができます。 そこで、今回はUT-humanitasのメンバーも、いくつかの方針を決めてマップを作ってみました。 A. ブックガイド的な性格のものを目指すのではなく、完全に独断と偏見でつくる この方針を課した理由は

無意識の差別とイギリス教育〜英語記事紹介③〜

Black Lives Matter、この標語がいま世界中を席巻していますね(*1)。知り合いの小学生2人も「ニュースで見た!」と少なからずの関心を寄せていました。 そこで今回はイギリスの放送局、Channel 4による3部作ドキュメンタリー「人種差別を終わらせようとした学校」(The School That Tried to End Racism)を紹介します。(最後に人種差別を描くあるコメディも紹介します!) とはいえ3部作を違法視聴するわけにもいかないので、このシリ

試験中止、コロナ禍のイギリス教育界 〜英語記事紹介②〜

現在日本では「9月入学制度」の必要性が盛んに議論されていますが教育現場の混乱は日本だけではありません。イギリスでも同様に大きな混乱が起こっています。それというのも、センター試験のような全国統一試験がコロナの影響で中止されたからです。ここでの最大の問題として、学生たちがどのようにして大学に入るための点数を取ればよいのか、ということがあります。 今回はこの様子をまとめたBBCのこちらの記事を紹介したいと思います。 4月3日の記事のため情報としては古いため、さらに最新の情報が知り

おかえり、シネマ〜仏語記事紹介②〜

 今回もコロナウイルスに関連する記事をご紹介します。またかよ、という感じかもしれませんが、なし崩し的に元の生活が戻りつつある日本とは違い、感染拡大で至るところ打撃を被ったフランス社会はまだまだ回復の途上。コロナの爪痕が払拭されるのはしばらく先でしょう。  6月14日、大統領により制限解除(déconfinement)のフェーズ3移行が発表され、今週月曜からは小中学校、交通機関、娯楽施設が原状復帰に一歩近づいています。  その中でも、今回は映画館をテーマに選びました。3月から

パリの制限解除と「道飲み」現象〜仏語記事紹介①〜

 今回は5月22日にフィガロに投稿された上の記事を、説明を加えつつ訳していきます。 仲の良い友人で集まって、グラスを手にテラス席で楽しい時間を過ごすなんてことはまだまだできない。けれども歩道の上でなら、飲み会は盛り上がりの頂点に。  パリでは5月11日から外出制限の段階的な解除が始まり、街には人が少しずつ出てきているようです。とはいえバーもカフェもレストランも相変わらず閉店中。開業の是非が決まるのは今月末を待たなければなりません。しかしながら、久しぶりに(画面越しではなく

コロナとイタリアマフィア〜英語記事紹介①〜

今回紹介するのはロックダウンが続くイタリアでマフィアがどのように暗躍しているのかを綴った記事に関する5月6日にYoutubeで公開されたニュース映像です。BBCの記事を元にその記者とアナウンサーが議論する形で番組が進行しています。 5月5日の元記事はこちら↓ 実はこのブログを投稿する前に記事の日本語版が出されました... そのため冒頭のニュース映像を以下にまとめました。 –––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

ハムスターの国

COVID-19が世界中で猛威をふるい日本中で自粛が続いています。人文学に身を置く者としてこの状況に一石を投じるような記事を、なにか、書きたい、と思いつつもゼミの発表準備や奨学金申請の準備に追われ気づけば多くの学者が論考を出していました。 われわれ小学魔如きがこの日本の現状を分析したところで良くて二番煎じ程度に過ぎない、そう思っていました。 しかしあるメンバーの何気ない発言が身の回りの小さな変化を分析するきっかけになりました。 ことの始まりは、あるメンバーの知り合いがハム

テナガザルから、コタキナバルのテングザルへの手紙 〜その3

 連載最終回。  なかなか暑さが和らがないが、そろそろ秋なんだってことは、ツバメの焦りからなんとなく推測できる。きみのところへの帰り支度が始まった合図だ。こことそっちとどちらが家なのか知らないけれど。わたしの家はここで、それはこれからもずっと同じだ。でもきみのところになど行きたくない、といえば嘘になる。きみにはたくさんの妻と、川と、それから天敵がいて、気が向けばふらっと独身の群れに入ることだってできる。どこにだって住める。自由ってことだろう。でもね、ここにも、たくさんの食べ

テナガザルから、コタキナバルのテングザルへの手紙 〜その2

メンバーのたわむれ創作、連載第2回をお送りします。 「その1」は次のリンクから。  きみの家族構成についてはもう何度か議論している。前にも書いたけど、わたしはひとりのパートナーと子どもたちと暮らしている。わたしたちはふたりでなわばりの管理をし、ふたりで子育てをする。だけど子育てに関わらないきみは、たくさんの妻と子どもと家族をつくる。さらにその家族が複数集まってさらに大きな群れになることもある。当然パートナーのいないオスもいて、それがまた独身の群れを作る…。いちばんの違いは、