ひいらぎ しろ

クソ文芸部の延長

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  • 雨が止んだら

    女子中学生のちょっと変わった日常。

  • 私と彼女

    私は彼女と出会う。その後平和な日々を過ごしていたのも束の間、ある日突然彼女が消え……

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私と彼女 -表-

「おい!居たぞ!!」  どうしよう、見つかった、見つかってしまった。  けれど彼女の居場所はバレていない。  まだ大丈夫、私は彼女を守れる……そう思った。 ――何もない普通すぎる職場で平坦な生活をしていた私は、ある日とある人と出会った。  きっかけはよく行く喫茶店。  いつもの店でのランチの途中、お手洗いに行こうと思い席を立ったのだけれど、女子トイレから出てきた男性に驚き、変な声をあげてしまった。 「ふぁえ!」 「あ、ごめんごめん。よく勘違いされんだけど、一応女ね。ガ

    • あの子の靴下

       昼休みの後の数学の授業、ご飯を食べた後と重なって私は居眠りをしてしまった。 ギー、ギー。 しばらくすると微かに何かを引く音がした後、ガタンッと鳴り「やばっ」と言う声が聞こえたが、目を開ける力は無かった。  声の主は何をしているのだろう。でも誰かは分かっている。この様子からすると、恐らく、いや、確実に羽結だ。  寝ぼけてはいたが、彼女が「ふふふ」とニヤついているのは分かった。  私、何をされるんだろう。嫌だな、でも抵抗が出来ない。  そして私はまた夢の中へ落ちていっ

      • 雨が止んだら -二人だけの教室で-

         私は想像をしない。 なぜなら、その通りにならなかったときが悲しいのを知っているから。  幼い頃の私は、こうなったら素敵だなと妄想し、その想像に耽ることが多々あったが、一度としてそれが現実になった試しはない。  故にいつからだろうか、それをする者は愚かだと思うようになった。  けれどーー  ある日の水曜日、私は少し遅くに学校へ到着した。そのとき、私より先に日比野巡が登校していれば良いと思った。そして自身の席で本を読んでいてほしい。  沢山の経験をしてきて予想と言うもの

        • 雨が止んだら -晴れ女は-

           入梅晴さんは見ていてなかなか面白い。  彼女の生態はこれまでよく分からなかったけれど、最近分かった事をまとめて表すと「変」だ。普段は無口で、素っ気なくて、本当にただのロボットにしか見えないが、ここ最近私たちの努力により彼女の謎は解明されつつある。  最初に雨衣がふざけて行った任務、それは単純明快、尾行であった。バレない様コソコソと尾いていくと彼女はトイレへ入って行き、静かに誰かと通話しているのが分かった。 「そちらの様子は?」 という彼女の問いかけに、ほんの僅かな沈黙

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        私と彼女 -表-

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        • 雨が止んだら
          11本
        • 私と彼女
          12本

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          雨が止んだら -彼女の生態-

           これはごくごく普通の、よくある話である。  ただ我々学生にとってはとても興奮することだ。  それは、校舎に犬が迷い込むという偶然的イベントである。  これは毎年あるわけでは無い。もしかすると、学生の間に出くわさない人もいるかも知れない。それくらいレアなことだと私は考えている。  そう思えば、今こうして突如校舎に現れてくれた犬を見れた我々はラッキーだ。 「巡ちゃん見て!運動場に犬が居るよ!」  現場に突如として現れた犬に気づいた私は、一刻も早く巡ちゃんに知らせねばと大

          雨が止んだら -彼女の生態-

          雨が止んだら -図書室にて-

          「グゴォーーーー……」  一つだけ言っておく、図書室は眠る場所ではない。  しかし私の真横では正しく今大いびきをかいている怪獣がいる。  その爆睡する怪獣を起こそうか迷い、少し考える。周りには迷惑そうにする生徒の視線。  こんなに見られてしまっては起こす他あるまい。 「雨衣、起きて。……起きてってば。」  肩を叩き声を掛けるが、なかなか起きないので今度は目一杯激しく揺すってみた。 「グゥー、グガッ!……うぉっ!あ、なんだ巡ちゃんか。」 「おはよう、雨衣。」  雨衣

          雨が止んだら -図書室にて-

          雨が止んだら -傘がない-

          ……なんてこった、私の傘がない。  確かに朝持ってきた。そしてこの傘立てに立て掛けておいた。けれども無い。 「くー、やられちまったかぁー!」  水無月雨衣、十四歳、下駄箱にて絶望。  今日は午前は快晴、午後から雨の予報だった。それは当たり、なんなら大粒の雨が降り注いでいた。いわゆる土砂降りである。  この中を傘なしで帰れって?そんな話があってたまるかってんでぃ。こちとら律儀にビニール傘を持って来たってぇのによぉ。  日本人はマナーが良いと言われている。現にスマートフ

          雨が止んだら -傘がない-

          雨が止んだら -転校生-

           その日は梅雨の時期には珍しく、澄んだ空が広がっていた。 「巡ちゃん。『クロノスタシスって知ってる?』」  雨衣が急に歌い出した。 「知ってる。」 「えーん、そこは知らないって言ってくれないと!」 「なんでよ。」 「『時計の針が止まって見える現象のことだよ』って歌えないじゃん!」  雨衣はどうやら歌の掛け合いがしたかったらしい。 「はいはい、『ゆらゆら揺れて夢の様で』」 「『ゆらゆら揺れてどうかしてる』そうそう!巡ちゃんやるねぇ!」  とりあえずノっておいた。  今

          雨が止んだら -転校生-

          雨が止んだら -前にもあった-

          ……ん?あ、まただ。  最近多いな。  本当か試してみよう。  ある日のお昼休憩、ご飯を食べている時にそれは起きた。いつもこの感覚の時はその通りにしないが、今日は試してみた。  私がパンを齧る。雨衣がそのパン美味しい?と聞く。私がよく分からないけれど好きだと答える。雨衣はいつもの相槌をしながら今日あった数学の小テストの話を切り出す。  うん、やっぱりそうだ。同じ行動、同じ会話。  私は最近デジャヴが起きるようになった。いつからかは覚えていないが、それは頻繁に起きる。

          雨が止んだら -前にもあった-

          雨が止んだら -隠し事-

          「あー、熱があるわね。早退する?」 「します。」  朝から雨が降っていたある日、雨衣はフラフラとした足取りで保健室に行ったきり帰ってこなかった。 後から先生に「水無月が早退するから荷物を保健室に持って行ってくれ」と頼まれた。  私は言われた通り荷物を持って保健室に向かおうとした。  すると、引き出しから一枚の紙がはらりと落ちた。それは、便箋に入った手紙だった。 「なんだこれ。」 雨衣は私の知らない間に告白でもされたのだろうか。でもそれがここにあるということは、きっと持って

          雨が止んだら -隠し事-

          雨が止んだら -目が悪い-

           私は、目が悪い。 特に雨の日の前日から翌日までは視界が酷くブレる。お陰様で梅雨の時期は結構な頻度で目が悪くなり、近くまで寄らなければ誰か分からない事がしょっちゅうある。  朝、いつも通りの通学路を歩く。  むむむ?あれは何だ。恐らく人だとは思うが……  ほら、またこうなるのだ。  こちらに向かって手を振っている気はするが、誰だかさっぱり分からない。  一歩一歩近づいて確認する。 だが……まだ分からない。 そしてまた一歩と近づく。今度は先ほどよりも大きな一歩。 「

          雨が止んだら -目が悪い-

          雨が止んだら -宿題-

           イヤホンを付けて再生ボタンを押す。 耳には心地よい音楽が流れる。  普段は雨衣も好きな歌手の曲ばかりを聴いているのだが、宿題のときの選曲は違う。どちらかと言えば、クラシックに分類されるだろう。 とある人の作った音色が私を包み込み、心に染み渡る。  私がこの人の曲を知ったのは、実は訃報を見てからだった。生前に彼がどんな曲を作っていたか、何となく気になってユーチューブで適当に探して聴いてみた。 その時は本当にただの好奇心からだった。何の気なしに動画の再生ボタンを押す。 「

          雨が止んだら -宿題-

          雨が止んだら -花火大会-

          チリン、チリン……  風鈴の音と共に私は昼寝から目覚めた。 目覚めたと言っても目が開いたわけではなく、夢から覚めたの方が正しいだろうか。 (ダメだまだ眠い、目が開かない……) 気持ち良くもう一眠りしようとしていると台所から母の声が聞こえてきた。 「雨衣、起きてるの?あんたそろそろ準備しないといけないでしょ?」 え?なに…… あ、そうだ、そうだった。 今日は花火大会で、巡ちゃんとお祭りに行く約束をしていた。 寝ていてうっかり忘れてしまっていた。  待ち合わせは午後六時

          雨が止んだら -花火大会-

          雨が止んだら -ズルをした-

           私はズルをした。  「ズルをした」といっても、大袈裟なものでは無いし、誰でもするような些細なことだ。 例えば、道に落ちていた小銭で駄菓子を買ってしまうとか。 そういう感覚のもの。  誰にも責められはしないけれど、なんだか心の中がモヤついて仕方ないというか、神様はそれを見ていていつか誰かに怒られるような気がする、というか。 「……それで、何をしたんだい?」  誰も居なくなった教室で質問きてきたのは、水無月 雨衣。 彼女は私の親友だ。古くからの親友。付き合いは約十年

          雨が止んだら -ズルをした-

          特別小説「シンデレラがギャルだったら」

          「シンデレラ!シンデレラ!」 「あーっす。」 ウチの名前はシンデレラ。 この屋敷の娘だったけど、ダディが死んで継母に乗っ取られた最悪な主人公。 主人公ってのは分かってる。 だってこんなに相応しい子他に居ないもん。 「シンデレラ!早く掃除をしなさい!ここが汚れてるわ!」 「シンデレラ!お茶の時間よ!早くお茶を持ってきて!」 「シンデレラ!この服汚れてるわ!ちゃんと洗濯したの?」 うざ、だる。 まただよー。 ヒステリー親子。 ちなみにウチには血の繋がってない姉が二人居る。

          特別小説「シンデレラがギャルだったら」

          あーちゃろは猫が嫌い!#5「好ハオ」

          「あーちゃろさん、また会いましょうね。」 そう言われ、ウチの視界は白くぼやけていった。 ――目を開けると、そこには白い天井が見えた。 両脇には聞きなれた声の2人が居た。 「……ここどこ?」 微かな声しか出なかったが、ママとパパは必死にウチに訴えかけた。 「あーちゃん、目が覚めた?!私達が誰だか分かる?」 その眼は涙目というか、めちゃくちゃ泣いてた。 「パパ……ママ……。」 「わかるんだね?良かったぁ……」 パパはほっと胸を撫で下ろした。 「あ、僕先生呼んでくるよ!」

          あーちゃろは猫が嫌い!#5「好ハオ」