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特別小説「シンデレラがギャルだったら」

「シンデレラ!シンデレラ!」
「あーっす。」

ウチの名前はシンデレラ。
この屋敷の娘だったけど、ダディが死んで継母に乗っ取られた最悪な主人公。

主人公ってのは分かってる。
だってこんなに相応しい子他に居ないもん。

「シンデレラ!早く掃除をしなさい!ここが汚れてるわ!」
「シンデレラ!お茶の時間よ!早くお茶を持ってきて!」
「シンデレラ!この服汚れてるわ!ちゃんと洗濯したの?」

うざ、だる。
まただよー。
ヒステリー親子。
ちなみにウチには血の繋がってない姉が二人居る。
二人ともブス。

「はーい、3秒待って。」

「待てないわよ!ふざけてるの?」
「は?ふざけてねぇし。だいたい毎日家事してるしあんたらの分までご飯とか作ってんだよ?少しは感謝したら?ウチが居なくなったら何もできなくなるくせにどうやったらそんなこと言えるわけ?そういうとこマジでだるい。」

「口答えするんじゃないわよ!」

ビンタされた。
こんなの日常茶飯事だから慣れてる。
でもビンタとかマジでやめてほしい。
自撮り盛れなくなるのガチ勘弁。

その日はイライラしたからパックして寝た。
もちろん、韓国製のやつ。
韓国まじ神。ウチ、美容系のものは全部韓国製にしてるんだよね。

次の日目覚めると、ウチに良い知らせが来た。
ミリヤ歌いながら掃除してると玄関からノックの音が聞こえた。

「ガチだる。今掃除してんだけど、誰?」
ドアを開けると知らない人が立ってた。
「うわ、イケおじ。でもなんの用っすか?今ウチ忙しいんだけど。」

そのイケおじは咳払いをしてウチにこう言った。「国王から招待状です。これを受け取って下さい。」

そこにはこう書かれてた。

“明日、宮殿にてダンスパーティーを行う。
該当する者は以下の通りである。
・国に住んでいる未婚の女性とその家族”

へー。お城でダンスパーティーねぇ。
興味ないや。どうせワルツとか踊るんでしょ?
ナイトプールとかクラブの方が良くね?

「国に住んでいる未婚の女性全てが対象なので、貴女も参加することができますよ。」
「あー、ウチ興味な「王子様もいらっしゃいますよ」
「行くわ。」

その速さ約コンマ二秒だった。

「てかなんで王子が居んの?ナンパ?実はホストとか?」
「いえ、王子の結婚相手を探すためにこの舞踏会は開かれるんです。」
「へー、王子も大変だね。」

「とにかく明日、その招待状を持って舞踏会へ来てくださいね。」
「他のお姉様達もご一緒に。」
「え?なんで知って……」

イケおじは後ろを指さした。
するとブス姉たちがキャッキャと喜んでいた。
「私、王子様と結婚できるのね!」
「違うわ、結婚するのは私よ!」

はぁ、醜い奴らが醜い争いしてるわ。
あんたらが結婚出来るわけ……

「まぁ!なんて良い知らせなのかしら!ドリゼラ、アナスタシア!ドレスを準備しなくちゃ!」
「はい、お母様!」
え?二人だけにドレスを?

「待ってよ、ウチも行くんだが。」
「あなた何を言っているの?」
「ドレスも無いのに行けるわけないじゃない!」
甲高い癪に障る声で笑われた。

「そういう、人を貶す言い方するのモラハラとかになるからガチでやめたほうがいいよ。」
「口答えをするんじゃありません!この小生意気な小娘が!」

無理矢理に部屋へ連れてかれて外から鍵をかけられた。
「は?マジ意味わかんない!だる!出せよ!」

「あなたは舞踏会には行かせません。」
ドアの向こうでニヤリとしてるのが分かった。
「は?クソブスババァ!ふざけんな!」
その瞬間ドアをドカッと蹴られた。

さすがに悔しすぎて泣いた。
メイク崩れたわ。最悪。

でも泣いてる場合じゃない、絶対舞踏会に行ってやる。まずはドレスだな……

「確かクローゼットにママのドレスがあったはず!」
ガサゴソとクローゼットを探すとママのドレスが出てきたけど……
なにこれ……一昔前のキャバドレスじゃね?
「ダサっ……」
てかウチ水色が好きなんだけど、これドピンクじゃん。
これどうすっかなぁ……可愛くしてぇなぁ……。

「やほー!シンデレラ遊びにきたっちゃー。」
「あ、ネズミじゃん。どしたん?」
「いや、マジ先生ダルすぎて学校サボってきた。」
「うげ、こいつらもそうなん?」
「ん?あー、そう。」
そこには10匹くらいのネズミの友達が居た。
正直キモかった。

「あ、そうだ。このダサいキャバドレスどうにかしてくんね?」
「うっわ、クソダサ。これどうしたん?」
「なんか昔ママから貰ったやつ。」
「あー、なーる。」

さすがのネズミでも無理っぽかった。
諦めた方が良いんかなと思ったとき、デザイン科に通ってるネズミがアイディア出してきた。
そのアイディアは良すぎたから、うちらはその通りにリメイクしてった。

――「おお、これ可愛くね?」
「羽ばたいてる!さいこう!」
「シンデレラ、着てみ?着てみー?」
ドキドキでそのドレスを着てみた。

「やばーい!まじ盛れてる可愛い!ハオってる。」
「ま?やったー!ネズミ達サンキュ!ちゅきちゅきラブリーちゃん。」
でも……問題があった。
「こっからどうやって出るべ……」

「あ、それならピッキング得意な子がとっくに開けてくれたよ。」
「あんたらマジでやばいね、色々と。」

こうしてウチは次の日無事に舞踏会へ行く時間に間に合った。

「おいクソババァ!」
振り向けと言わんばかりに叫んだ。
「まぁ、何そのドレスは!」
「待って、これ私のお気に入りのリボンじゃない!盗んだのね!」
「これは私のネックレス!」

あっという間にボロボロにされた。
ガチ萎え。
あんなにネズミ達も頑張ってくれたのに……
「みんなごめん……」
化粧崩れるとかそんなのどうでも良かった。
ウチはコンビニの駐車場で泣いた。

すると、
「は?!あーし妖精なんだが!なんでタダじゃないわけ?!」
と喧嘩腰のギャルが店から出てきて中指立ててた。
「荒れてんなぁ……」
すると、その人はウチに近づいてきた。
「うわ、やばい人に絡まれるわ今日マジついてなーい。」
そうするとそのギャルはウチに尋ねた。
「あんたシンデレラ?なんで泣いてるわけ?」
「別にあんたに関係なくね?ウチの自由じゃん。てかなんでウチの名前……」

その女はウチを鼻で笑った。
「妖精だもん。フェアリーゴットマザーの孫!あんたの妖精!」
「ガチか……だから名前分かる系?」
「名前知ってるし、元彼も知ってる。」
「……最悪。」

そんな会話をしていると妖精がある事を思い出した。
「てかあんた舞踏会行くんしょ?ドレスそれじゃ行けねぇべ。メイクもやばいよ?」
「分かってる、全部ブスババァとブス姉たちのせいだから。」
「あんたさ、あんまり人のことブスとか言わない方がいいよ。」

とりあえず、と言って妖精は魔法をかけた。
まずは駐車場に止まってた動かない軽トラをベンツに変えた。
そんで運転手をGで。(察しろ)
お付きの人を電灯に釣られた蛾で。
「きもっ……でも元が分からなかったら結構いいかも。」
「でしょ?さすがフェアリーゴットマザーの孫ってわけ!」

そういえば、肝心な物を忘れてた。
「妖精っち、ドレスなんだが……」
「あ、忘れてたわ。オッケー任せて。」

そして綺麗な水色のドレスを魔法で着せてくれた。メイクも完璧。
「ありがとう!これで舞踏会行けるわ!」
「あ、ちょっと待って。ヒールは大事だべ。」
そう言って妖精はクリスタルがたくさんついたキラキラのヒールをくれた。
「それ、あげる。あーしからのプレゼント。」
「え、ガチ可愛いありがとう!」
「うん、そんじゃ。行ってきなー!」
「マジありがと!今度パフェ奢る!」

ここで、お決まりの注意を言われた。
夜の十二時を告げるベルが鳴ったら魔法が解けるということ。

「あ、あとあんたはシンデレラって分かんないようにしてあるから。」
「おけみ、あざざ!じゃねー!」
急ぎ足でウチはお城に向けて車を走らせた。

「あいつ大丈夫かな……?」

一方その頃、お城ではダンスパーティーが開かれていた。
ウチは全然間に合わなくて最後に到着した。
中に入るとそこには育ちが良さそうなお嬢様たちがワルツを踊ってたけど、

ウチを見て皆が息を呑んだ。
「誰?あれ……あんな子この国に居たかしら?」
「あの子、どこかで……」
そんな声が聞こえてきた。
フロアに降りると、一人のイケメンが声を掛けてきた。

「一緒に踊っていただけませんか?」
「……いいけど、ワルツは無理。」
「では……」
「クラブミュージックにして。」

イケメンが指をパチンと鳴らすと、DJが現れ聴きなれた洋楽が流れ始めた。

「これでどうです?」
「やるじゃん。」

暫く踊ったあと、二人で会場を抜け出してお城の庭園で色々な話をした。
最近あった良い出来事とか、悪い出来事とか。
「てか、ホントに育ちが良いお坊ちゃまなんだね。ウチとは住む世界が違うやー。」
「お坊ちゃま?」
「明らかに金持ちの人でしょ?」
あぁ、と言ってその人は少し笑った。
「何?言いなよ。」
「いえ、その。僕も恵まれた環境には居ないので分かり合えて嬉しいです。」

「ウチもいつか自由になりたいな。」
「なら、僕と……!」

イケメンが何か言おうとしたところで十二時を告げるベルが鳴った。
「うわ!やば!ウチ帰んないと!!」
「え?なぜ?」
「あ、えっと家門限厳しくてさ!そうだ、王子に会ったらよろしく言っといて!頼むわ!」

ウチはヒールを履いたまま急いで階段を駆け下りた。
その時、片方の靴が脱げてしまった。
「はー?こんなときに!だる!もういいわ!」
片方の靴は諦めてもう片方も脱いで走り去った。

お城が見えなくなった頃には魔法が全部解けていた。
「ギリだわ、危なかったー。」

でも、イケメンと話せて良かった。
王子には会えなかったけど、それはそれでよかったかも。
「僕と……なんて言おうとしたのかな。」

――次の日、ウチは何事も無かったかのようにまたブス達と言い合いをしていた。
宮殿ではウチを探すために大捜査が行われてるとはつよ知らず。

ダンスパーティーに行ってから三日経った頃、大喧嘩をしてまた部屋に閉じ込められた。
「だる、なんなのあいつら。理不尽すぎてクソ腹立つ。」
その時、誰か分からないけれど来客があったようだった。

「あら、お城の方がなんのご用で?」
「実はこの靴の持ち主を探しておりまして、国中こ娘に試して頂いてピッタリ合う方を探し回っているのですが……」
「あら、左様ですか。家には二人の娘が居りましてよ。どちらかには合うはずですわ!」

姉たちは靴を履いてみるも、全然入らなかった。
当たり前だよね、だってウチ足小さいもん。
「他に娘さんは居りませんかな?」
「ええ、この二人だけですわ。」

「待ってよ。」
「……シンデレラ!?どうやって抜け出し、いえ。どこに行っていたの?」
「は?あんたが閉じ込めたんじゃん。」
ピッキング得意な子(ネズミ)と仲良くなっといて良かった。こんなときに役立つとはね。

「娘さんはもう一人居たんですね。王子の命令です。この国のすべての女性にこの靴を試すように、と。」
そしてウチがそのヒールを履いてみると……。
「ピッタリですね!貴女こそ王子が探し求めていた方です!」
「こんなの、偶然ですわ。有り得ない!」
ウチはすかさずもうひとつの靴を出して確固たる証拠を突き出した。

その後、王子に会いにお城へ行った。
正直なんで王子に探されてたのか全然分からなかった。
靴落としましたよー、受け取りには身分証とサインが必要ですー。的な?
まぁいいや。
お城に到着してウチは目が点になった。

「え……ガチか。」
そこに居たのはあの時一緒に踊ってだべりまくったイケメンだった。
「すみません、隠すつもりでは無かったのですが。」
「なにこれ、ドッキリか何か?」
疑い深いウチに対して一生懸命に釈明された。

「貴女の純粋さと、健気な所がとても印象的で忘れられませんでした。よろしければこの僕と結婚して下さい!」

正直一瞬迷った。
王子にはもう興味無かったし、あのイケメンが心の支えになってて、でもそのイケメンが王子だったとは……
でも、これで未来が切り開けるなら。

「はい、よろしくお願いします。」

こうしてウチは王子と結婚した。
まさかの展開すぎて自分でも未だに信じられない。

「あ、シンデレラ。靴を落としているよ。」

「ま?ガチだ。あざー。」

特別小説「シンデレラがギャルだったら」
〜完〜

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