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あーちゃろは猫が嫌い!#5「好ハオ」


「あーちゃろさん、また会いましょうね。」

そう言われ、ウチの視界は白くぼやけていった。


――目を開けると、そこには白い天井が見えた。
両脇には聞きなれた声の2人が居た。

「……ここどこ?」
微かな声しか出なかったが、ママとパパは必死にウチに訴えかけた。
「あーちゃん、目が覚めた?!私達が誰だか分かる?」
その眼は涙目というか、めちゃくちゃ泣いてた。

「パパ……ママ……。」
「わかるんだね?良かったぁ……」
パパはほっと胸を撫で下ろした。

「あ、僕先生呼んでくるよ!」
そう言ってパパは急いで先生を呼びに行った。
ママは急いでどこかに電話をかけているようだった。

暫くして先生が来て色々診てくれ、
「良かったです、ひとまずは安心して下さい。ですが油断は大敵なのでくれぐれも絶対安静でお願いします。」
「先生、ありがとうございます。」

先生が戻ろうとした時「うぎゃっ!」と声を上げた。
ウチら三人が不思議に思っているとドタドタと見慣れたギャル二人が走って病室に入ってきた。
多分全力疾走で。

「ちゃろー!!」
りるちゃむとららてゃだった。
相変わらずの五月蝿さが懐かしかった。

「ちゃろ、あんたマジ寝すぎな。」
「ほんまそれー。」
二人は珍しく泣いていた。

「この子達、毎日あーちゃんの様子見に来てくれたのよ。」
「もー、ちゃろママ恥ずかしいからやめてよー!」

そっか、ウチが事故に遭ってからずっと心配してくれてたんだ……

「ウチ、どれくらい寝てた?」
「んー、言うて一ヶ月くらいじゃね?」
「うん、だいたいそんくらいだべ。」
「ガチな話するともっと寝ると思ったしな!3年とか。」
「それ二人で話してたべー。」

一ヶ月、その長さに驚いた。
「一ヶ月……そっか。」

それはちょうどゆずてゃと一緒に過ごした期間と同じくらいだった。
もっと長く感じてたけど、実際はそんなに短かかったのか。
そしてやっぱりあれは現実だったのだと、少しだけ思った。

ガラガラ。
――そのとき病室のドアが開いてもう一人誰かが入ってきた。
「おじゃまします。」
私と同じくらい小さな声で入ってきたのは、

「え?ゆずてゃ……?」

少し恥ずかしそうな様子のガッツリイメチェンしたゆずてゃだった。
メガネはなくなってて、髪もセンターパートになってて明らかにイケメンだった。

「え?ゆずてゃって長谷川柚琉?!」
「ま?!イケメンじゃん!」

「あ、あの、あ、えっと、僕変でしょうか……」

ウチらみんなで首を横に振った。

「僕……やっぱり、帰ります!」
「いやいやいや!帰さねぇからぁ!」
みんな必死にゆずてゃが帰るのを止めた。

「あーちゃん、このイケメンはゆずるくんなの?まさかとは思ってたけど、あーちゃんの彼氏なの?!」
「まさか、そうなのか?!」
「え!ちゃろってゆずてゃと付き合ってたの?!」
「ま?!」

すぐに質問攻めの嵐に会った。

「ちがうよ、彼氏じゃない。それにゆずてゃは女の子なんだよ?」
思わず笑っちゃった。
そりゃそうだよね、どっからどう見ても男子だし。
「え、女?」
「ゆずるくん、本当は女の子なの?!」
「ま?」
「ガチか……」
冗談やめてよと笑っていたところにゆずてゃが
「す、すみません。本当なんです……」
また小さな声で言った。
驚いた様子のみんなは口をあんぐりと開けて魚みたいだった。

「あの、あーちゃろさん。」
ゆずてゃは何か言いたそうにちゃろの方を向いた。
「ん?」
「僕、また会いに来ましたよ。」
「そうだね。約束、守ってくれたね。」

ウチがにっこりするとゆずてゃはほっとしたように笑顔になった。
「目が覚めて本当によかったです。……あ、そうだこれ。」

手から差し出してくれたのはちゃろの好きなピンク色の花束だった。

「あら、それマーガレットとスターチスじゃない?」
ママが花の種類を言った、知っていたことにびっくらポンだった。

「ママ分かるの?」
「うん、だってママ昔花屋さんで働いてたもの。そこでパパと出会ったの。ふふ。」

なるほど。この花はマーガレットとスターチス、あとはかすみ草。らしい。
「これは僕のほんの気持ちです。」
「ありがとう、ゆずてゃ。これ大事に写真撮って待ち受けにする!」

ルンルンなウチを見てママは微笑ましくゆずてゃのことも見ていた。

「なんか、2人だけにした方が良くね?」
ニヤニヤしながらりるちゃむが言ってきた。
「それなぁー。」
ママがギャルっぽく返す。

じゃ、と言ってみんなそそくさと帰ってしまった。

2人きりになったところで暫く沈黙が続いた。
「……あの、あーちゃろさん。」
「ん?何?」
聞き返した途端に思い出した。
そうだ、ウチゆずてゃにキスしたんだった。(まぁ、ほっぺにだけど)

ぼふっと顔が真っ赤になる。
「あの、その……。」
「ちがう!その、いや、ちがくない!」
遮るように返答すると、えぇ?とゆずてゃは困惑していた。

するとゆずてゃがにこにこしていたので、「何?」と聞くと
「もう猫にはならないんですね。」
と冗談を言ってきた。

そう考えると、少しだけ寂しくなった。
「そうだね。」
多分もう、あんな風に一緒に過ごせることも無いんだろうな……

泣きそうになってしまったので、そっぽを向いているとそれを察したゆずてゃが口を開いた。

「……その花束の意味、良かったらあとで調べてみてください。お母さんは気づいたみたいですが、恥ずかしいので僕には聞かないでください。」

なんだなんだ、どういう意味があるんだ……
気になる。なんなら今すぐググりたい。

その時ゆずてゃの耳は真っ赤だった。

「ゆずてゃ」
「なんですか?」
「ゆずてゃのこと、好きです。」

なんですかそれ、とゆずてゃが笑った。

ありがちな話だけど、片思いの人と両思いになってキスしたら元の姿に戻ることができた。
まぁ、普通は王子様がプリンセスにキスするんだけどね。

でも実際のところ、なんであんな事になったのかは謎なままだ。

「急にまた猫になるなんてことないよね……」
「そしたら、また僕が守ります。」

#5 「好ハオ」
~完~

*おまけ小説*
「ギャルにお題出して話し合ってもらった!」

えー、サイトウに変わりまして今回はアベが担当致します。
よろしくお願い致します。

りるちゃむ「え、サイトウっちどうしたん?」
あーちゃろ「あー、コロナじゃね?」

いえ、前回の対談にて無理矢理プリクラに連れてかれたのが怖くなってしまい今回はパスだそうです。

りるちゃむ「えー!サイトウっち会いたかったー。」
ららてゃ「割と楽しみにしてたべ?」
あーちゃろ「あ、そういえばサイトウっちにプリ画送るの忘れてたわ。」
ららてゃ「えー?!絶対それのせいだってー!」
りるちゃむ「ハブられたと思ったんじゃね?サイトウっちマジ哀れ。」
あーちゃろ「マジごめんやん、LINEで謝っとくわ。」

あのー、本題に入りたいのですが……

あーちゃろ「あー、ごめん、今それどころじゃないわ。」
りるちゃむ「うちらの友情の問題だから。ガチだから。」

友情……?
(サイトウさん、かなり震えてましたけど……)

ららてゃ「てかあべっちって彼氏いんの?」

答える義務はありません。

ららてゃ「なんで?気になるー!」
りるちゃむ「本当はいた事ないんじゃね?」
ららてゃ「そう言うりるちゃむも居たことねぇべ?」
りるちゃむ「うるさ、だるっ。マジでやめてナイーブなとこ。」
あーちゃろ「あ!サイトウっちから返事きた!」

どういう返事が来たかは分からないが、三人はまたサイトウと遊ぶことを決めたらしい。
きっと半強制だろう。

ギャル、強えー……

*おまけ小説*
「ギャルにお題出して話し合ってもらった!」
~終わり~

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