余白を青春にくれたあの人を、思い出せないの

私は絵を描くのが好きな子供だったので、美術の時間はだいたい楽しく過ごしていたと思うのですけど、特に印象に残っているのが、中学生の頃に出た課題「皿絵」です。

皿絵というのは、素焼きと言うのかな、ざらざらした白いお皿に絵を描いていくというもの。つるつるじゃなかったから陶器じゃないですね。
絵は自由に描いていいのではなく、学校が用意した名画のサンプルの中から好きなものを選んで模写することになっていました。どうしても、ということであれば好きな絵でも良かったみたいだけど、名画かそれっぽいものじゃないとダメだったんじゃなかろうか。どうしても、と希望してクリスチャン・ラッセンの絵を選んだ子がいた気がするけど、私が「どうしても手塚治虫がいい、名画だ」と言い張ってもたぶんNGだったんじゃないかな。

なので課題はまず、模写する名画を選ぶところから始まります。結構大量にサンプルがあった気がするし、惹かれる絵も何枚もあったろうと思うのだけど、わりと迷わずに決めた気がする。何故なら、そのサンプルの中にはうさぎの絵が含まれていたからです。私は物心つく前からうさぎが大好きなのですね。

それは日本画で、茶色のうさぎと黒のうさぎの2羽と、絵の上部に椿かなんかとその葉(うろ覚え)が少し描かれた、日本画らしく余白の多いシンプルな絵でした。作者ははっきり覚えておらず、それが今回この記事を書いた理由なのですが、とりあえずそれは後回しにして話を進めます。


サンプルを参考に皿に名画を模写する、と書くととても単純な課題ですし実際単純なのですが、私はこの課題にとんでもない労力を費やしました。ええ、とてもよく覚えてます。

私がこの絵を選んだのはとにかくうさぎが好きだからでした(笑)。だからうさぎを描くのはとても楽しかったし、模写そのものも面白かった。絵の上達において模写は重要な役目を担っているのではないかと思います。もちろん全員に言えることではないでしょうけど。

この繊細な日本画を何とかして皿に再現してやろうと、14歳の私は情熱を燃やしまくりました。うさぎの表情などの線とか形だけでなく、毛の色のにじんだ感じといった、色の付け方そのものも再現しようと必死になったのです。中学校で使う水彩絵の具で、皿に…。

まあ、無理ですよね(汗)。それっぽくはなるかもしれないけど無理。絵の上手い子なら出来たかもしれないけど私程度じゃ無理。
何が大変だったかって、背景でした。うさぎと椿?以外はほとんど余白。元々は掛軸だったのか、それっぽい色の背景と独特のにじんだ感じを皿に再現しようと、私は必死にそれっぽい茶色とグレーをパレットに作って、延々と、延々と塗っていました。しかし、いくら塗ってもそれっぽい色にはならないし、それっぽいぼかしも再現できない。ただの背景だから塗ってて楽しいものでもない。でも再現したい。再現しよう。絶対再現してやる。

美術の時間内に描き上げられなかった生徒は確か居残って仕上げることになっていましたが、私は美術・漫画研究部だったのをいいことに、部活をやってるつもりで延々と塗っていました。背景を。しかし、いくら頑張っても納得の行く再現はできないまま提出することになったんじゃないかと思います。無理だってば、最初から(笑)。でも諦めたくなかったんだよねえ…。


苦労の甲斐あってか、私の皿絵は学校を代表して何かの展覧会に出されたはず。中1の時に静物デッサンも選ばれたはずだから、美術が得意な子が同じ学年にあんまりいなかったんじゃないかと思います。私はそこそこ描けるけど、あくまでも「そこそこ」で、才能のある子と比べるとやっぱり雲泥の差でしたし。
色数の多い絵や、細かく描き込まれた風景画かなんかにすれば良かったなあ、とちょっと後悔もしたのですけど、日本画の繊細さみたいなものを身をもって体感できて、いい経験だったんじゃないかなあ。私は余白も埋めてしまいたくなるタイプなので、余白を活かす手法を学べたと言いましょうか。

皿絵そのものは実家の床の間に飾ってたはず。美術の時間に描いた作品なんて今となっては思い入れのないものばかりだけど、あれだけはこれからも大切に持っておきたい。探しに行きたいんだけど果たして見つかるのやら←遠い目


で、ようやく本題です。
実は、あんなに執念を燃やして再現しようとした名画なのに、私は絵のタイトルも作者の名前も忘れてしまったんですよ、なんと(汗)。

タイトルは完全に失念しましたが、私の記憶の中にある作者名は「横山大観」でした。しかし、横山大観がうさぎの絵なんて描いてたの?という話を聞いたり、横山大観で検索しても該当の絵が見つからなかったりするのでどんどん自信がなくなってきて、間違って覚えてる可能性も高いな、と現在では考えております…。画集などをきちんと調べたらどこかに手がかりはあるんでしょうけどね。

違う作者かな、と何人か日本画の大家にあたってみたりもしたのですけど、やっぱりあのうさぎの絵は見つからず。絵のタイトルを覚えていれば見つかったかもしれないけど、たぶん背景に椿が描いてあった(わさわさ描いてあったのではなくささやかだったはず)、くらいの記憶しかない…。うさぎの耳の中はピンクに塗ってあった気がする。たぶん。
検索して見つけた、奥村土牛さん(これまで存じ上げなかったのだけど)の黒いうさぎの絵が、おなかのあたりの色のにじませ方が似てるなあと思ったんだけど、似てるなあとは思うけど同一人物かどうかは何とも言えない。要するにわかりません。私の記憶ももう曖昧ですしね…。


皿絵で余白に目覚めた私は、確か卒業前に美術の授業に作ったサイン帳(同級生に寄せ書きしてもらうアナログ時代のアレです)の表紙のデザインを、ほとんど描き込まずにものすごくシンプルにしてみました。窓の絵とサイン帳の名前だけにしたんです。
一応、コンセプトとしては、

赤い夕焼けが見える学校の窓枠=夏
窓枠に置かれた青い絵の具=春
サイン帳そのものの色である白=秋
サイン帳のタイトルの背景にした黒枠=冬

で、青春・朱夏・白秋・玄冬、で四季を表したつもりだったんですよ。つもりね(笑)。
表紙がシンプル過ぎて、反動で中のデザインはなんかけばけばしいのにしたような気もするわ←意味ねえ…

そんな風に私の中学校生活に強い印象を残した画家を、私ときたら失念してしまったわけですよ。たいへん申し訳ない…。自分でもめっちゃ気になるので(1、2年前から気になっている…)、何とかあの絵に辿り着きたいと思っております。疑問点は徹底的に調べてしまう人間なんですけど(誰かに聞かれてもめちゃくちゃ調べてしまい「えっ、そこまでしなくていいよ」と引かれるレベルで…)これは記憶が曖昧過ぎてネットじゃ難しそうね。
答えに辿り着いた暁には、noteで報告したいと思います(笑)。


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主にフィギュアスケートの話題を熱く語り続けるブログ「うさぎパイナップル」をはてなブログにて更新しております。2016年9月より1000日間毎日更新しておりましたが、現在は原則月・水・金曜日(たまに日曜日)。体験記やイベントレポート、マニアな趣味の話などは基本的にこちらに掲載する予定です。お気軽に遊びに来てくださいね。

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