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「えっ、おばあちゃんのお風呂の
 手伝いを男の私がするんですか?」

 もう20年以上も前の話である。
 大学を卒業して、何も知らない
 介護の世界に入った。とりあえ
 ずホームヘルパーの資格を取り
 に行くようにと言われた。資格
 を取るに当たって、座学の他に
 施設実習をこなすことになって
 いて、とある高齢者のデイサー
 ビスセンターに実習をお願いし
 た。その日、高齢者の入浴のサ
 ポートの現場を体験した。
 「じゃあ、お風呂から上がって
 来た人がこの長椅子に並んでい
 くから、とりあえずドライヤー
 で髪を乾かしていってね。」
 優しく熟年スタッフが私に伝え
 た。
 私は裸で椅子に並ぶ女性の高齢
 者達を見て、正直気持ち悪くな
 った。見た目というより、裸の
 女性を普通に男性がお世話して
 いることや、物のように並んで
 手早く服を着せられていくさま
 に、大学時代にアルバイトして
 いた「商品を詰め込む流れ作業」
 を重ねて、異様な世界のように
 感じてしまったのだ。当たり前
 のように高齢者の名前も特には
 教えてもらえない。
 私は違和感を口に出すことがで
 きないまま、実習を終えてしま
 った。

 現在、私が勤める会社のデイサ
 ービスは、同性介助を基本とし、
 お風呂も1人ずつ入ることがで
 きる個浴である。これは私がそ
 うしたのではなく、私自身が採
 用面接を受けた時に確認し、こ
 の場所を選んだだけの話だ。
 その分、1人1人に対するサポー
 トの時間はかかる。でも、人間
 としての尊厳は保たれやすい。
 時々、男性の新人職員が「手が
 空いたので、女性の利用者の入
 浴を手伝わなくていいんですか?」
 と聴いてくることがある。
 その時に、私はいつも実習先で
 の違和感を思い出す。
 「協力して仕事をしようとする
 行動は素晴らしい。ただ一番大
 切にしたいのは、利用してくだ
 さっているお客様達の尊厳だ。
 どれだけ年齢を重ねても羞恥心
 はある。自分がもしデイサービ
 スを利用することになった時の
 気持ちを考えて、ジブンゴトと 
 して考えて欲しい」と伝えてい
 る。出来ないことのサポート
 よりも、尊厳を保つサポート
 を最優先したい。

 先日、以前一緒に働いてくれて
 いた職員と偶然会った。
 新しく選んだ介護施設で色々と
 感じることがあるらしい。
 「以前、一緒に働いていた時に
 学んだ“尊厳を大切にするサポー
 ト”。最初に教えてもらえたこと
 が有難いことだったんだなと今
 になって思います」
 と言ってくれた。
 当たり前だけど、置き去りにし
 てしまうこと。
 私はこれから出会うスタッフ達
 にも「あの時の違和感」を変わ
 らず伝えていきたいと思う。


スタエフの告知です↓

本日12日(水)、19時30分〜。

さぼ姉のふ・き・だ・すラジオに
アシスタントとして参加します。
先月までは収録という形でお1人
で記事についてお喋りされていま
したが、今月からライブ配信とい
う形で、アシスタントと共に会話
形式で記事についてお喋りされます。
毎週水曜日19時30分〜30分程。
私は隔週でアシスタントとして
参加させてもらう予定です。

よかったら気軽に遊びに来てください!
今日は、「夫婦円満の秘訣?」の記事
をベースにお話をお願いしています。

是非、あなたの秘訣も教えてください!


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