記事一覧
7月22日の日記『Your Me』
連休が始まる前に山深い地域へ行って千何百年だかの歴史ある立ち寄り湯に入ってきた。
重い硝子と木の引き戸を開けるとよく使い込まれてつやつやした板間の玄関に桃のコンテナが山と詰まれていた。なまものは入れちゃ駄目なんですけどねと笑いながら言われて何のことかとよく見ると、一番上のコンテナに生きた猫が収まって寝ていた。毛並みが良くて肉質の柔らかそうな猫が起き上がってあくびをした。カメラを向けた途端に毛繕
7月18日の日記『茄子で死ねない』
痛いと思い始めてようやく指を見たらトゲが刺さっていて、茄子だと思った。旬だからと調子に乗った茄子。抜こうとしても、もう皮膚の下に沈んでいてクソと思った。爪で肉を押して出そうとすると、往路をそのまま戻ればいいものを、少し角度をつけて新たにまわりの細胞を壊しているようでさらに痛い。だいたい茄子のトゲがそんなに丈夫なの、変じゃないのか。痛い。トゲの端が出てくる気配はないまま、ただ傷つけられた皮膚から組
もっとみる7月14日の日記 『Ego Emo Ero』
色か恋かの文脈も定まらないうちからあれこれと心尽くしをしてくれた人がいたのだが、その後の連絡を送るのがふいにどうしても怠くなって、嫌いになったわけではない(好きになったわけでもない)が、先方には拒否と受け取られたようだった。
景気づけにプリンを作ろうと思い、φ26cmくらいのでっかいココットを洗い直して蒸し器の所在を確認して、良い卵と牛乳を買った。これからグラニュー糖と少しの水を入れた鍋を火に
5月28日の日記『デバイスで拡張』
吊るした二個の電球の周りを、羽音をジリジリいわせて虫が旋回していた。ダッツの新しいフレーバー「ベリーベリーミルク」のビニルを開けた直後で、自宅に持ち帰るまでに少しやわらかくなったそれを歯ではなく唇で食む。カシスのように赤いのでカシスと思ったが、説明書にはブルーベリーがメインと書いてあった。しかしブルーベリーにも種類があるのだ、青いもの、赤いもの、真球のもの、扁平なもの、甘いもの、酸っぱいもの。ベ
もっとみるラブリーピッピ・アンド・エモ
おしっこを、わたしに向かってかけているのだと言い張る。言われるまで知らなかった。平静の彼も知らないだろう、酒に弱いから。酔いが覚めたらきっと忘れる。
二杯の酒で真っ赤になる好色家の赤ちゃんは、何かのはずみですこぶるむずがる。
「あれもやだこれもやだ…。バゲットで殴るよ」とメッセージで脅せば、
「おちんちんで叩き落すわ」と言い返してくる。彼のそれを思い出してみて、
「そんなリーチないでしょ