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イギ4


 問題なのはそれが13片のピースに割れていることと、すべての破片を継ぎ合わせた時の完成形が、口が狭く中が広い、一般的な湯呑みよりやや球に近い形になることが、ひとつの湯呑みに同時に起きていることだった。金継ぎはすべての継ぎ目にパテや漆を繰り返し塗り込む。つまり同じ線を外側と内側の両方から何度も世話しなくてはならない。そうでなくてはお茶が漏る。口の直径が腹の最大直径よりも小さい場合、口から筆を入れて内側の継ぎ目に隙間なく漆を塗り込むのは困難に思えた。少しずつ継いでいく方法はないのかと調べるけれど、そのように破片を世話する例は見当たらない。きっと、接着材が乾く間にも破片同士はわずかに広がり離れていくので、なるべく一度に全ピースを貼り合わせたほうが全体の歪みが少なく済むのだろう。考えた末、一辺を残して細かな破片を接着し、大きな二枚にして作業を進めることにした。仕上げまで終えた二枚を最後にはめ合わせたその継ぎ目だけ、狭い口からの内側の塗り込みに骨を折ればいい。少しずつ継ぎ進めるよりは歪みも少ない。


 まず、すべてのかけらに金やすりをかける。接着剤の厚みで全体が膨らまないよう、あらかじめわずかに減算しておくのだ。それから、小麦粉を水で伸ばしたペーストに生漆を練り合わせて接着剤をつくる。麦漆と呼ばれるそれを、かけらの割れた面に塗りべらで薄く均一に塗り込んでいく。時間の経過とともに麦漆が空気と反応して褐色を帯びていくので気が急いた。全ピースを塗り終えて、最初に塗り始めたピースから貼り合わせていく。乾かすうちに互いに離れるのを防ぐため、割れ目を避けてマスキングテープで全体をきつめのぐるぐる巻きにする。
 漆は湿度を得ることで乾燥を始める特性を持つ。麦漆を完全に乾かすため、壊れたオーブンの中に濡れたてぬぐいを敷いて湯呑みを設置した。漆を硬化させるための湿度を保った室(むろ)と呼ばれる箱は、木で作られているものもあれば段ボールなどで自作する人もいるが、オーブンがそれの代わりになるのかどうかはわからなかった。


 横浜中華街の外れにあるひっそりとしたギャラリーで選んだ湯呑みだ。自分の手にいくつかの湯呑みをかわるがわる載せ、それよりもう少し厚ぼったい手のひらを想像して持ち心地を調べ、厚みと重さの好もしい、腹がぽってりとした丸い形のものを購入した。調べてみると作家の風貌が色っぽいので、辻褄が合う気がした。


 五日ほど待って、麦漆はちゃんと硬化していた。マスキングテープを解くと、接着せずに残しておいた辺から湯呑みがぱっくりとふたつに分かれた。他のピース同士はしっかりくっつきあっている。それらの割れ目からはみ出ている麦漆を彫刻刀の平刀で削る。次に、生漆に砥の粉という土を混ぜて錆漆をつくる。これが継ぎ目の隙間を埋めるためのパテ材となる。麦漆はねばねばして扱いにくいが、錆漆はちょうど白和えの衣のようなテクスチャで作業性が良い。細い割れ目の中に点在する空洞をすべて埋めるようにたっぷりと塗り込んでいくので、必要な線の十倍くらいの太さに塗り痕が残って汚くなった。線に響かない箇所だけテレピン油を染み込ませた綿棒で拭き取り、残った余分な錆漆は後から全部削るのでくっついたまま乾燥させる。
 錆漆は二日ほど待つと簡単に乾いた。錆漆の溝からはみ出ている部分を彫刻刀の平刀で削り取る。陶器の表面まで削れるのではと不安になるが、硝子化した釉薬は思いのほか硬く、ちょっとやそっとでは傷つかない。おおかた削り終えてから耐水ペーパーでさらに掃除していく。その作業が特別楽しかった。余分な錆漆が取れると割れ目の線と陶器の面の境目がくっきりと現れる。残った錆漆のラインがそのまま仕上がり線になる。そう思うとわくわくした。


 作業を中断して直りかけの湯呑みをただ眺める時間がたびたびあった。触り心地がやわらかく、それでいて毅然とした陶器だった。肌が「良い」ゆえに、どの金属粉を蒔くかを決めあぐねた。青めの純金、純銀、真鍮を揃えていた。光を反射させにくい消し粉だから、おとなしい風情を殺さないだろうと思った。それでも錆漆の線をすべて金属的なきらめきに変換すると、自信がなくなる。淡いピンクとグレイが解け合わさったようなスモーキーな色合いの肌に、飴化した砂糖の膜が衝撃を得たような微細な貫入が均一に広がっている。この風合いを邪魔したくない。丹念な作業はいつも、それを今が最上の姿であるかのように見せる。作業を進めることは現状の破壊と同じだから、怖いのは当たり前だ。悩んで指に力が入ると、両手で包む湯呑みのまだ接着していない辺同士がカシュカシュザリザリと擦れて鳴った。良い音。これは完成品を受け取るイギには聴くことができない音だ。わたしは唐津焼の湯呑みでお茶を飲んだ経験はないが、この色味には煎茶の翡翠色がよく映えるだろうなと、ふと思った。そこに金が沈んで見えるとしたら趣がある。ひとまずは、内側に金を蒔くつもりで次へ進むことにした。


 時どき湯呑みを持ったままバルコニーに出て煙草を吸った。ビリビリとした感じが肺を覆うようにして漂う。腹のあたりにぴたりと抱えた湯呑みがふいにわたしの体から離れてバルコニーの端まで転がっていったら、と想像してビリビリ…。立ち上がった弾みで落としてしまうかもしれないし。バルコニーの床と手すりの間には隙間がある。ビリビリ、ビリビリ。現実以前に留まっているたくさんのやばいことが空気中に花粉のように浮遊している。それを掻き分けて、湯呑みを伴い家の中に戻った。


 進捗を伝えようか気持ちがうろうろしているところへイギの手が伸びてきた。わたしの腕や頭を拘束して胸を弄んだり、自分の体のどこかにわたしの顔を押し付けたりするのだった。密度の高い肉感が迫る。適度な圧が心地いい。顔を押し付けられたデニムに噛み付こうとして、歯を立てた瞬間に髪を掴まれ引き剥がされた。そういうことをする時のイギの艶やかさ。浴室で、大きなバスタブに水が溜まっていく音がする。いくつかのストーリーがあるのかもしれない。ひとつは彼が端的にバイオレンスを好むこと。それとは別に、何か他の理念または都合。人間の行動は時として、人によってはかなり、複合的だ。イギの思想や事情は湖で、その水面に彼はゆったりと座っている。わたしは水を無視しないけれど、触ることもない。何も知らないのだ。まれに日和って自分との同化を彼に求めるが、わたしの領分はそのようなところにはない気がしている。
 それで、めげずに服の上から爪を立てたら腹を殴られた。肉体は緊張するが、わたしは笑い出しそうになった。
 水の音が、溜まるから溢れるに変化したように聴こえてイギから離れた。蛇口を締めてソファに戻って再びじゃれ合う。彼がマインクラフトアースのプレイ画面を見せようとするので、近寄って覗き込んだ。目の前のテーブルを映し、イギがそこに架空のオブジェクトを据えた。ふと緑色をしたアイコンのポップアップが現れて消えた。「LINEだ…って思ったでしょ」「むかしハプバーで知り合った女だよ」などと彼は言った。


 おごそかに「これ買ったんだけど」と言うので何かと思うと、黒い不透明なビニルの中からローションとコンドームの箱とグリセリン浣腸(十個入り)が出てきた。全部使うの、と冷やかせば、これだけでいいと言って三本のいちじくを持って彼はトイレに入った。ほどなくして出てくるとベッドに横たわり、「おなかいたい…」と儚げに呟いた。グリセリン浣腸は直腸に入れて数分間そのまま待てと説明書きに書かれている。わたしはグリセリン液にすぐに反応するので彼のようにいったんトイレの外に出て我慢できたためしがなく、素直に感心した。
 波が来たらしく、イギがトイレに戻った。わたしはベッドに移り、購入しておいた黒いディルドとピンクのディルド、ラテックスグローブ、イギが持ち込んだコンドームの箱と大きなローションのチューブを枕のそばに並べ、ノンアルコールの除菌シートでひとつひとつ拭き上げた。どぎついショッキングピンク色をしたディルドのマットな肌触りがいい。筋の入った太く長いバナナ状のプラグと、くびれを持ち角度のついた小さめのプラナリア状のプラグ、小さな玉が上下に連続するプラグの三種類の部位がある。下側からは二本のバイブレーターがはめ込まれていて、前方のバナナ状の突起を震わせるものと後方のプラナリアと数珠状の突起を震わせるものに役割が分かれる。今夜はこれをしようと約束していた。わたしがイギを抱くのだ。事前に食事を取りたくないと言うので事後食をこしらえて持ち込んだ。待ち合わせに現れた彼のはにかんだ顔、前日まで出かけていたらしい土地のお土産をくれたのも初めてのことで、事前に薬局まで行くものだから、どうか上手にできるようにと願った。トイレのドアの向こうから、くぐもった声と水圧の強そうなウォシュレットの音が聴こえた。


 爪を切り、爪のふちがなめらかになるようにやすりをかけてトリートメント剤を表面に薄く広げた。
 ようやくトイレから出て来たイギがベッドの上のわたしを見て、何してたの、と訊いた。爪切ってた、の返答に、薄過ぎも厚過ぎもしない唇をきゅっと結んでんっと頷いたのが可愛い。彼はそのまま浴室に入っていった。風呂場の近くを通るとこちらの気配を察してか内側から鍵をかけるので、わたしは取手のボルト溝に爪を差し込んでこっそり開錠した。すかさず再び鍵がかけられたので、意固地になってもう一度鍵を開けようとすると彼も鍵のつまみを掴んで動かない。爪だけで立ち向かって当然負けて研いだばかりの爪が割れた。「今おしり綺麗にしてるんだから入らないで!」と半透明のガラス戸の向こうでイギの声が響いた。わたしは険しくなった爪のラインを整え直しにベッドに戻った。


 やっと体を落ち着けた彼の両脚を開いて尻の谷間に舌を伸ばした。菊状に閉じた穴に舌先の温度を移すようにじっと押し付け、皮膚に気づかれるか気付かれないか程度に表面を動かしていると、やがて皮膚の味が血液の味に変わる瞬間がやってくる。筋肉が緩み、味の変化に伴って粘膜のやわらかさがやってくる。鉄が香り、かすかな塩味を感じる。
 最初に黒く細いディルドを手ずから挿入した。黒い棒が穴に飲み込まれる速度に合わせてイギがゆっくりと息を吐いた。彼の呼吸に馴染むように静かに押したり引いたりした。少しずつ挿入を続けて、七割ほど進んだところで彼がストップをかけた。「なんかねまだおなかいたい気がする」「ここはアレを使うしかない」と言って、鞄から何かの包みを取り出して彼は浴室に向かった。「手伝おっか」と申し出ても、「大丈夫。プロだから」と言って微笑むばかりだった。
 十分ほど物想いに耽っているとイギが戻ってきたので、わたしは黒のディルドを片付けショッキングピンクのディルドを取り出した。後方に生えているプラナリアとパール状の二種類のプラグを自分の前と後ろの穴に挿入してから、前方に大きく伸びた部分をイギの体に埋めていく。気が緩むと自分の穴からプラグが抜けそうだった。全部入りはしたけれど、そこからどう動いたら良いのかまるでわからなかった。擬似ちんちんは中の様子をわたしに伝えてはくれない。どんなふうにイギの腸壁が反応するのか、知らないまま動くための道標を探した。挿入された人は目を瞑ってじっとしている。自らの穴でディルドを締め付けて固定しながら腰を振らねばならないので、あまり大きくは動けそうになかった。振るのではなく、彼の奥に先端を押しつけるイメージで腰を動かしてみた。イギの目が開いてわたしを見上げた。
「気持ちいい?」
 挿れられているのは彼のほうなのに、わたしに気持ちいいかと聞くのだった。髪も髭も黒々と野放図な彼が、歳下の男に色を教えるおねえさんに見えた。
 動くのに疲れたわたしの体が止まり、挿入していたディルドを慎重に抜けばまたたく間に攻守を逆転された。わたしの体をうつ伏せにして、「こっちは初めて」と言ってわたしの前の穴に入ってきた。挿れられた瞬間から背骨のまわりがじんじんとして蕩けるようで、じっとする彼に焦れてわたしの体が揺れた。耳に届くか届かないかのボリュームで、わたしの腰が動いていることを指摘する声が聴こえた時、脳がスパークするような感覚があって咄嗟に喚いたような気がした。後のことは殆ど覚えていないが、わたしの首を絞めて彼は射精した。首を絞め始めてから射精までそれほど時間はかからない。射精するために絞めているのかとも思えるけれど、わたしは彼でないのでわからない。イギの精液の入ったコンドームをその時初めて見た気がしたが、夢かもしれない。
 人心地がついてから事後食をテーブルに広げた。コンソメ仕立てのロールキャベツ、さつまいもご飯、小松菜のアーモンド和え、揚げた鮭と野菜のマリネ、黒舞茸のソテー、人参のラペ。彼は一品一品、自身のふだんの食事や料理の話を交えながらそれらを食べた。芋の好み、アブラナ科の葉野菜の辛味について、鶏団子の配合、不器用なのでロールキャベツは作らないこと、なのに餃子は作るということ。


 いつも照明を落とすか落とさないかでちょっとした攻防がある。真っ暗になってふてくされたイギが、布団にくるまったわたしの胸元に寄ってきた。殆ど肉のないわたしの胸に顔をくっつけ、静かに乳首を口に含んだ。腰がざわつくけれど、彼は口の中でむやみに舌を動かしはせず赤ん坊のように吸い付いたままじっとしていた。わたしはまろやかな気持ちになり、彼の存在を祝福した。しばらくそうして胸を吸って、ふいに口を離した彼は仰向けになって眠った。
 朝は鎖骨から肩にかけてイギの腕が回る感触で目覚めた。抱き返して背中に腕を回すと冷たい。イギの肩の向こうで見えない手首をばたばたさせて布団の端を掴み、彼の背中に引き寄せた。本当は起きているのだろうかと顔を覗き込む。つるりとした頬を眺めながら、わたしは再びうとうととした。
 起きると昼で、明るい部屋に木製のベッドで寝ていて、家具が乱立し、食器棚の向こうには食卓に就いて親しげにコーヒーを飲んでいるイギと知らない人がいた。全裸のはずのわたしは大きめのTシャツを着ていて、洗い場に溜まった皿やコップを片付けると知らない人にひどく感謝された。イギが知らない人の背後に立って、何か名詞を発する。窓の外の家々の向こうにかすかに見える鉄塔を示す言葉のようだった。あの鉄塔が池袋にあって、池袋で待ち合わせをして一緒に南下したのだからここは新宿だと思った。外は晴れていて暖かいので部屋の白い壁がいっそう眩しい。季節を間違えている気がした。
 暗い部屋の布団の中に戻る。また眠っていたのだと理解がやってきた。あたりはまだちゃんと暗い。そばを走る電車の音とイギの寝息が聴こえた。ほっとして胸の内側が熱くなり、布団の中に潜ってフェラチオをした。 


 
 弁柄と呼ばれる酸化鉄顔料に透き漆を少しずつ混ぜながら練りべらで練り上げる。細筆にそれを含ませ錆漆の筋の上に塗っていく。陶器は、硝子のようになめらかには割れない。細かな貫入に沿って小さな突起や揺れやくびれが割れ目の線に不規則に現れる。筆の先をまっすぐに立て、触れるか触れないかの力加減で複雑な線を再現するように漆を載せていく。
 すべての線をなぞり終えたら二日ほど乾かし耐水ペーパーで漆を磨く。やすりがけに用いた水分を拭い、再び弁柄漆を、一度目と同様に塗り込んでから乾かし、同じように磨く。乾くと少し痩せる漆の上に何度も漆を重ねて痩せを補うのだ。


 透き漆の重ね塗りで太らせた線に金属粉を蒔くため、仕上げの漆を塗る。塗り終えたらオーブン室(むろ)で湿度を与えて漆が乾きだすきっかけを作る。粉の蒔き時は漆が半乾きになる頃合い、息を吹きかけて表面が一瞬だけ虹色になるのを見極めるべしと読んだはいいけれど、どこにいくら息を吹きかけても虹は見えなかった。
 虹を無視して、湯呑みの内側にくる線に金を蒔く。ちぎった真綿に金粉をまぶし、線の上でそれをトントンと叩き、そこに散った粉を真綿のふちで集めて線に触れさせるのだ。金属粉を蒔く際、漆が乾きすぎていると粉がうまく載らず、濡れすぎていると漆の中に粉が沈むらしい。蒔いてみると細い線にはうまく金粉が載るものの、太い線に蒔いた金はしばらく経つと真ん中に漆のデミグラスソース色が浮かび、つまりそれが金が沈んだ状態なのだとわかった。金が沈んでも漆は乾くのでいつか金は表面に載るが、そのタイミングまでたびたび金粉を触れさせて確認する必要があるのでより多くの金粉を消費する。
 問題だった内側の線に金を施し終え、まっぷたつになっていた湯呑みの最後の一辺を貼り合わせ、麦漆から始まる全工程をその継ぎ目に繰り返した。
 最後の継ぎ目の内側に金、表側の線のすべてに銀を蒔き終えて全体を見ると、想像と違っていた。マットに仕上がりすぎた銀がどうしても白に見える。透明感のある薄いピンクグレーの釉薬に、白い線が悪目立ちする。しばらく湯呑みを眺めつつ時間の計算をして、蒔いた銀を耐水ペーパーですべて削り落とした。金で仕上げた内側の雰囲気が良いので、表にも金を蒔きたい。イギと次に会う約束がすでにあった。すぐに蒔き直せばギリギリ間に合う。少し夜更かしをして作業を続けた。
 結果としてすべての継ぎ目に純金を蒔くことになった。充分に乾燥の時間を取ってから余分な金粉を落とせば仕上がりは上々で、欲を言えば金粉を選ぶ段階で消し粉ではなく丸粉にすれば良かったと思う。艶の出る丸粉のほうがわずかな凹凸にも素直に陰影が宿って、派手ではない陶器の肌に馴染みが良さそうに思えた。


 自分で和紙を貼って化粧した箱に湯呑みを詰めた。その日の仕事を終え、待ち合わせ場所の途中にある銭湯で汗を流した。湯上りの体をコートで包んで待ち合わせ場所にほど近いカフェに入り、読むつもりでいた本を開いて二頁以上は進まなかった。カウンター席のウィンドウに映った半透明の自分に、その向こうを足早に歩いていく人々が重なっては通り過ぎる。ふと箱の蓋を開けて湯呑みがそこに収まっていることを確認した。待ち合わせ時刻きっかりに到着の知らせを受け取り、席を立った。




ランジェリーが増えます