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10月3日の手紙 ミステリが好きな理由

拝啓

SF の感想を書きましたが、そもそもは推理小説・ミステリが好きな子どもでした。(「鵼の碑」も読んでると書きましたから不思議ではないでしょうが。). 
もちろん、最初に、ハマったのは、シャーロック・ホームズです。子ども心にこんなに面白いものがあるのか?と驚きました。
殺人事件が好きというわけでは、もちろんありません。謎がロジカルに解かれていくところに純粋に驚いたのを覚えています。
シャーロックが、ワトソン相手に客や通行人の身なりから、職業や経歴を当てる様子に、わくわくしました。
小さな事実を積み重ねていって、ひとつの人物や事件のありようを構成するという考え方は、明瞭で筋が通ったもののように感じられました。人間というものがよくわからなかった子どもだったので、ありとあらゆることに疑問があり、疑問からくる不安や不信がありました。自分以外の人間が、何を考え、どうしてそういう行動をするのか、様々な社会のルールに何の意味があるのか、「普通」とか「みんな」とは何を指すのか、そういう常識のほとんどをはっきり教えてくれる大人はいませんでした。大人は、こちらの質問にせいぜい、困惑した顔で見つめ返すくらいです。今考えれば、彼らにとって自明のことを説明するのが難しかったのでしょう。せめてそういってくれれば、よかったのですが…。
一方、本は困惑の顔でこちらを眺めたり、動揺しません。何度開いても同じようにそこで待っていてくれます。「またその質問が…」とうんざりした顔もしません。
そういうわけで、人間がわからない子どもは熱心に読書をすることになったのでした。
特に、シャーロック・ホームズをはじめとする推理小説・ミステリは、人間を理解するための方策をいくつか明示してくれたのだと思います。
ひとつは、人間を観察することで、多くの情報が得られるということです。よく見ることが人間理解に繋がるということは素晴らしい知識でした。シャーロック・ホームズの観察眼に及ぶことはないとしても、相手をよく見ることでわかることは確かにあります。それに混乱した子どもは冷静にさせるのに、「シャーロック・ホームズのようによく見るのだ」というおまじないは効いたのだと思います。言葉だけを聞くのでなく、相手の様子や行動をよく見ること、それだけで、とんちんかんな行動は半分くらいになったはずです。
もうひとつは、情報があり、筋道を立てればある程度、対象を推理できるという事実です。それが事実や真実とは限りませんが、推理ができるということは予想ができるということです。予想ができれば、わからないまま耐える以外のコマンドが使えます。予想に基づく対処ができるのです。「推理する」ことを知ったことで、世界に対処する方法がゼロではないことがわかったのです。
シャーロック・ホームズから、アガサ・クリスティ、エラリー・クイーンまで読んだ記憶があります。エラリー・クイーンは、大人っぽくて読後感がざらざらしていて、わかりにくかったのですぐやめてしまった気がします。それでも、手に取った記憶はあります。きっと色々な推理小説・ミステリを読んでみたくなったのでしょう。日本人作家のものはこの頃は読んでいなかったと思います。
その中でもお気に入りの探偵はもちろん、シャーロック・ホームズでした。挿絵にある、パイプを持って鹿撃ち帽を被ったひょろながい姿を眺めて、シャーロック・ホームズのことだけでなく、行ったことのない英国、そして知らない英国の文化にも思いを馳せていました。霧が深いらしいとか、石畳の街であるとか、女王様がいるとか、そういうことにも興味を持ちました。シャーロック・ホームズとワトソンの間に、深い信頼関係があること、シャーロック・ホームズは優れた人物だがアヘンという悪癖があることなども、子ども心には面白くうつりました。

さて、Audibleで、「三体」シリーズ、伊藤計劃作品、「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を聞いてきました。ここまで全てSFです。またSFがいいかなと思ったのですが、ピンとくるものが見つからず、何度も検索をかけたり、おすすめを眺めたりしました。
結局、おすすめに上がっていた「ストーンサークルの殺人」を選ぶことにしました。
ストーンサークルといえば英国です。
シャーロック・ホームズの世界と同じです。ロンドンと英国北西部はかなりの違いがありますが、英国は英国です。
久しぶりに英国を舞台にした推理小説・ミステリを読むのも、秋にふさわしい気がします。
気温が下がって、ひんやりとした空気になったのも、ぴったりです。
口コミの評価をチェックするとなかなかよろしいというのも決め手です。

ライブラリーに「ストーンサークルの殺人」を入れて、ダウンロードします。
再生ボタン、右側に倒れた三角のボタンをタップします。
「Audible」と涼やかな声と水滴が落ちるような音が響きます。

さあ、この作品はどんな探偵が出てくるのか、そしてどんな事件が起きるのか、
聞き終わったら、感想を書いてみたいと思います。

では


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