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【演劇】【小劇場演劇製作改革 草の根PROJECTの検証結果発信_1.5期_No.2】小劇場界~演劇界の成長のためには、創り手の増加が間違いなく不可欠


(1) はじめに

◇【発信No.1】の内容において、Jリーグの成長の足跡は、小劇場界~演劇界にとって紛れもなく多くの教訓を与えてくれる「教材」たりうる成功事例だという事をお伝えしました。
この点も【発信No.1】で言及していますが、「Jリーグと演劇界は別だよ」と思ってしまうと、得られるものも得られなくなってしまうと考えます。

◇それでは、上記の発想を前提としつつ、具体的にいかなる方法・考え方が小劇場界・演劇界の成長をもたらしうるでしょうか。当プロジェクトはまさにこの点を継続的に考えている訳ですが、
芝居の創り手を積極的に増やす事が非常に有力な方法で、むしろ必須だと考えます。
更に、その為には演劇の創り方に新たな選択肢を加えることが必須だと考えています。
当発信では、この点についてまとめます。

(2) Jリーグ以外でも認められる、創り手増加と観客増加の相関関係

◇下記の表をご覧いただければと思います。こちらは日本の映画館のスクリーン数と入場者数の推移を、2010年代の四つの年度を抽出し比較したものです。

【2010年代】日本の映画館スクリーン数と入場者数の推移
※クリック/タップで拡大表示できます

◇スクリーン数は東日本大震災やコロナ禍の前後で減少した年もあるのですが、2010年代全体でみると、堅調ながら増加傾向が続いていることがわかります。

◇特筆すべきは映画館の入場者数で、スクリーン数の増加と比例して増えています。つまり両者の増加には相関関係があると言えます。

◇Jリーグだけでなく映画業界の成長の実態からみてもやはり明確な部分として、演劇界を成長させ観客数を増やすには、劇団(もしくは演劇ユニットなど)を増やす事、すなわち演劇の創り手を増やす事が必須である、と当プロジェクトは考えます。

(3) 小劇場演劇~演劇の創り手増加のために必要な具体策_まずは考え方

◇創り手の増加と業界拡大は小劇場界~演劇界にとって否が応でも重要な事柄です。近い将来、多くの関係者によって日常的に話され、策が講じられるようになる事を待望しますが、現時点で当プロジェクトが考える具体策をいくつかまとめたいと思います。

◇まず考え方の部分として、大きく分けて2つの方向性をとるべきだと考えています。すなわち下記になります。

  • 小劇場界~演劇界の成長を妨げている要素をかえりみる(マイナス材料の低減)

  • 小劇場界~演劇界成長のためにプラスになる選択肢を増やす(プラス材料の増加)

◇常に整然と二分割できるものでもないとは思いますが、具体策を講じるための方法の整理としては一定以上有効だと考えます。ふまえて、プラス材料・マイナス材料の双方を地道に考え、かつできるだけ多くのアイデアを考えて、その中から有効だと思うものを実行に移すというアプローチが実践的かつ有効だと思っています。

(4) やはり「稽古の仕方改革」が必須では

◇小劇場演劇~演劇の創り手増加のためには、やはり「稽古の仕方改革」が必須だと考えています。例えば、昔から当たり前のように採られている「本番1週間前後前からは昼夜連続稽古」という慣行ですが、本番の週は劇場入りしますので、引き続き昼夜拘束となります。
プロを目指す活動とはいえ、そもそも「約2週間(あるいはそれ以上の期間)、終日生活費のための当座の仕事を休む、あるいはその都度辞める」事ができる人は、社会人全体に占める割合としてどのくらいいるでしょうか。残念ながら、この時点ですでに『演劇創作に関われる人』の母集団をかなり狭めてしまっていると思います。

◇最近のおよそ10年において、世の中の各業界は『働き方改革』を大きく推進させました。アルバイトや派遣の仕事等々で、その変革ぶりと身近に接している方も多いと思います。
『これではこの業界の就業人口は増えないよ』という慣行がかつては散見されたものですが、各業界とも劇的に改善されてきているといっていい状況です。小劇場界~演劇界も、創り手増加のため、また既存の創り手の減少を防ぐためにも、『稽古の仕方改革』が待ったなしではないでしょうか。

(5) 「稽古の仕方改革」を実施することで見込めるマイナス面の低減

◇ 「稽古の仕方改革」は、当プロジェクト第1期のメインテーマでした。そのため、(3)でふれました「創り手増加のために、マイナス材料の低減とプラス材料の増加をはかる」具体例は、第1期プロジェクトの検証結果からおさらい的に紹介させていただきます。
ふまえて、当(5)ではマイナス面の低減についてまとめます。

◇ (4)でもふれました、公演直前期において昼夜連続の拘束期間が長いという状況は、『ワークライフバランス』がうまく取れていない実態であると考えます。 『ワークライフバランス』の改善は多くの業界がすでに取り組み、一定の成果を上げている所で、必須のプロセスだと考えます。
以下URLの、 【発信_No.0】稽古改革の必要性について でまとめています。
https://note.com/union_shadows/n/n59420b711f56

◇昼夜連続の拘束期間が長い事は、当面の生活費を得る機会の減少も意味しますが、現状それは稽古参加者個々の自己責任でやりくりする事になっているかと思われます。
そうした状況のリスクを以下URLの、 【発信_No.2】 にてまとめています。
https://note.com/union_shadows/n/n50409bb4790d

(6) 「稽古の仕方改革」を実施することで見込めるプラス材料の増加

◇「公演直前期に昼夜連続の拘束期間が長い」ことで起こる弊害に対し、当プロジェクトなりのプラス方向の改善策を具体的にまとめた発信が下記になります。数日分の調整によって、総稽古時間は同じままで昼夜連続稽古を一定程度低減することが可能と思われる検証結果が得られています。
【発信_No.1】模擬稽古日程組みによる、稽古の仕方改革の検証
https://note.com/union_shadows/n/nde4dd8f70382

◇ 劇団・座組にもよるとは思いますが、その日自分の出番はないものの稽古には参加している、という状況がままあるように思われます。
そこで、香盤表を転用して稽古参加日の調整が可能か、下記の発信で検証しています。なかなか興味深い好結果が得られています。
【発信_No.4】香盤表を活用して稽古参加の適正配分が可能か検証
https://note.com/union_shadows/n/na2aa67ecfb62

◇また、問題意識の起点は上記【発信_No.4】と近いですが、今度は劇団・座組目線で、稽古参加者のスケジュール都合を極力汲んだ稽古日程組みが可能かを以下発信で検証しています。
もちろん、稽古の質・量を下げない事を前提にした検証になります。
【発信_No.5】https://note.com/union_shadows/n/nc15279d7ac34

(7) 当発信の結びに

◇当プロジェクト(第1.5期)では、引き続き「小劇場演劇~演劇の創り手増加のために何ができるか」は非常に重要な課題の一つとして認識しつつ、小劇場界~演劇界の製作環境の改善につながる新たな選択肢の検証~提案を続けてまいります。

直前の発信(第1.5期 発信_No.1)において、また当発信の(3)でもふれていますが、『小劇場演劇製作改革』のような、前例や決まった形のない事に取り組むためには、その前提として『考え方』を備え持っておくことがあわせて重要だと考えています。
そのため、今後多くのご関係者に当問題を考えていただくための道しるべになればと思い、当プロジェクトがどのような考え方をもってアプローチしているかも記載するものです。


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