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【演劇】【稽古の仕方改革 草の根プロジェクトの検証結果発信_No.0】稽古改革の必要性について

※プロジェクト立ち上げKeynoteの記事内容と重なる部分もありますが、とても大切な事と考えますので、プロジェクトの成果発信の「No.0」として改めてまとめます。

(1)問題提起

◇プロを目指して活動している、もしくはプロまでにはまだ至らない劇団・座組(※注)の稽古は、その殆どがとてもまじめな取り組み方で、かつ十分な稽古ができるようしっかり予定組みされたものだとお見受けしています。
創られる芝居の質の維持・向上が見込め、とてもよい姿勢だと思います。
(※注 その座組の公演に参加する人が演劇活動以外で生活費をまかなう必要がある段階の団体を指しています。)

◇しかし一方で、「成人として必要不可欠」と言っていい生活活動やライフイベント、つまり生計維持の為の仕事や、結婚を経た後の育児・介護等々について、今の稽古のあり方ですと、それらの時間を満足に確保する事が困難な状況にあると感じます。

◇この状況は、端的に言うと「演劇界の危機」であると思います。ワークライフバランスの見地に立った、稽古の仕方改革が切実に必要だと考えます。

(2)現状のマイナス要素(※)

(※もちろんプライベートとの両立ができる稽古を実践されている座組もあると思いますので、業界全体を一括りにして語るつもりはありませんが・・)

◎多くの劇団・座組が、今日普通に採用・運用している稽古の時間設定・スケジューリングが、実は対応できる人が限られるものになっているという実態
↑この事が、様々なマイナス要素の誘因となっていると思われます。結果として、(主に)下記のような状況がかなりの確度で引き起こされ得ます。

◇(たとえ時給のものでも)生計維持の為の労働の必要がある演劇人、つまり多くの演劇人は、稽古の時間と労働のための時間のバッティングの度合いが大きければ大きいほど(たとえ演劇人としての実力があったとしても)、活動から離脱しなくてはいけない危険性が相当高くなる。

◇この状況は、経済学的な見地に立つと、『業界の構造的問題による、有能な人材の流出の常態化』と表現しなくてはいけない事態だと思います。

▼その他、より具体的な考察は、下記の記事の「2-2」にて列記しています。
https://note.com/union_shadows/n/n6eb8fd66e84a

(3)改善により見込まれるメリット

ここで視点を変えて、もし稽古とプライベートのバランスが今より良好なものとなった場合、見込まれるメリットについて考えてみましょう。当Projectとしては、下記の様な事が期待できると思っています。

◇稽古と生計維持の労働のバッティングが減れば、経済的により安定する。結果、肉体的・精神的な余裕が増し、創作活動へのモチベーションの向上や、クリエイティビティの向上が期待できる。

◇演劇活動の継続がより可能な状況が形成され、また、新たに演劇を始めたい人の業界参加のハードルも低くなる。結果として、演劇界のすそ野拡大(≒創る側の人口拡大)が見込める。
▼一般に、ある分野ですそ野拡大が果たされた場合、その分野は成長する可能性が高いです。

◇稽古参加/継続のハードルの低下で、他の芸術分野で才能を発揮している方の演劇界への参画がより可能になる。その流れが本格化すれば、演劇界にこれまでなかったクリエイティビティが創出される事が期待できる。

◇【この点も効果大だと思います】役者にとって状況改善となるだけでなく、脚本家・演出家をはじめ、座組を運営する側の立場の方々にとっての状況も改善する。そうした方の経済的、また精神的・肉体的余裕の増加が期待でき、作・演出の面にも豊かな創造性がもたらされる可能性がある。

(4)具体的な方策

◇ここまで、(1)~(3)のように述べてきましたが、では具体的にどのように稽古を改革できるものでしょうか? 当然湧き上がる疑問だと思います。

◇また、(1)の冒頭でも言及したように、演劇界にとって稽古の質は当然維持・向上されるべきでしょう。稽古の仕方を変えることで演劇の質が下がるようでは、その意義は疑問含みのものとなってしまいます。

◇当プロジェクトではまず、いわゆる集中稽古=昼夜連続の稽古について着目したいと思います。集中稽古は、質の高い芝居創りの為には確かに効果があると思いますが、その反面、該当の期間中は生計維持の仕事の時間を確保する事も、育児・介護等々の生活上必要な対応事項がある方の時間確保も困難にします。

◇現在、多くの座組で採られうるような模擬的な稽古予定を組んで、稽古時間のシフトが可能かどうか、シミュレートを実施しています。シミュレート結果が出次第、「当プロジェクトからの発信_No.1」として発信いたします。

稽古の仕方改革 草の根プロジェクトチーム 森 将和

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