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【演劇】【稽古の仕方改革 草の根プロジェクトの検証結果発信_No.4】香盤表を活用して稽古参加の適正配分が可能か検証

(1)香盤表とは/当検討のねらい

◇さっそくですが、ずばり本題に入ります。香盤表を活用する事で、稽古に参加する各人の稽古参加の度合いを適正配分化する事はできないものでしょうか?

◇演劇関係者の方は慣れ親しんでいる方も多いかと思いますが、改めて説明させていただきますと、香盤表とは映画などの撮影現場や演劇の公演などで用いられる、現場にいる各担当者が時系列で何を実行するかを仔細に記載したスケジュール/タスク管理表的なツールです。
演劇においてはとりわけ、シーンごとの役者の出はけや、舞台転換・小道具の出し入れをどこで行うかを一表で集約的に確認できるツールとして主に活用されています。

◇香盤表は本番時に使用するツールであるため、一般的には稽古終盤に作成されるものかと思いますが、その特性からすると、各役者の出番の頻度に応じた稽古の参加度合いを調整できるのはないか・・?、という仮説が立てられます。
以降より、香盤表が稽古改革に役立つか、検証してみたいと思います!

(2)模擬香盤表作成の条件

◇まず、検証用の香盤表が必要となりますので、ある有名な戯曲2冊から2つの香盤表を作ることとします。著作権等の関係から、作品名および役名は伏せさせていただきますが、下記を活用いたしました。
◎戯曲A:1980年代に非常に人気を博した団体の代表作の1つ
◎戯曲B:2010年代序盤より、着実な人気と実力で定評のある団体の戯曲


◇上記2つには以下の共通点があり、多くの劇団・座組にとって参考になりうる汎用性のある結果が得られると考え、サンプル戯曲として採用したものです。
◎戯曲に登場する人物が戯曲A=8人、戯曲B=9人と、一演劇作品として平均的な出演者数である
◎どちらもいわゆる「群像劇」的劇構成で、各役者の出番が比較的均衡している(役者毎の出番の差がそれほど大きくない)=小劇場系演劇に多い劇構成


◇上記2戯曲をたたき台として、当プロジェクトからの「成果発信01」で作成した模擬稽古日程のうち、昼夜稽古が一定低減できるという結論をみた【調整後稽古日程】を使い、役者毎の稽古参加頻度を適正配分できないか、検討してみます。次の2つの表が該当の香盤表となります。

(3)『戯曲A』の模擬香盤表

※表の見方の説明は(5)をご参照ください。また、上記表はクリック(タップ)して拡大できます。

(4)『戯曲B』の模擬香盤表

※表の見方の説明は(5)をご参照ください。また、上記表はクリック(タップ)して拡大できます。

(5)模擬香盤表の見方・補足説明

◇まず、各戯曲に対し便宜上均一・均等な区切りをつけるべく、数ページをひとまとまりとした「シーン区切り」を行いました。
(戯曲A:3ページ一区切り、戯曲B:4ページ一区切り)

◇上記の各「シーン区切り」ごとに、どのキャストが出演しているかを色で表示しました。
◎戯曲A:セリフありで登場している場合は黄色、セリフなしでサブ的に登場する場合は青としました。
◎戯曲B:セリフなしで登場というパターンはありませんでしたので、すべて黄色で表示しています。

◇上記までの準備をした上で、更に稽古スケジュール組みのための「所要時間単位」を下記の基準で見積もりました。
◎戯曲A:幕が明記されている戯曲でしたので、各幕のシーン区切り数を「所要時間単位」としました。 例えば第1幕の場合、シーン区切りが11個ありますので、所要時間単位は『11』となります。
◎戯曲B:こちらの戯曲には幕の明記はありませんでしたので、便宜的にシーン区切りを5つごとに分けることとし、所要時間単位が『5』のまとまりを7つ設けました。

◇上記の基準で作成した香盤表をたたき台として、(2)で言及しました【調整後稽古日程】で稽古参加頻度の配分が可能か、検討した結果は次の(6)(7)のとおりとなりました。

(6)戯曲A香盤表で稽古調整を試行

※表の見方の説明は(8)をご参照ください。また、上記表はクリック(タップ)して拡大できます。

(7)戯曲B香盤表で稽古調整を試行

※表の見方の説明は(8)をご参照ください。また、上記表はクリック(タップ)して拡大できます。

(8)結論:香盤表は稽古改革に大いに活用可能!

◇模擬稽古日程をいかなる基準で組んでいるかについての詳細は、当プロジェクトの公式ブログ記事、【稽古の仕方改革 草の根プロジェクトチームの成果発信_No.1】をご参照いただけますと幸いです。

◇その模擬稽古日程において、通し稽古を除く稽古日数は22日あります。5ページで定義した「所要時間単位」ベースで、1回の稽古あたり5単位分(or 5単位前後)の稽古をこなせると想定しました。経験的にも実現可能で妥当なペースではないかと思われます。また、この想定でいけば、通し稽古前に台本をふた回し分稽古する事が十分可能です。加えて、ガイダンスの機会と見込まれる稽古初回や本読みの機会も別に想定しました。詳細は各模擬日程表の「稽古割り当て」の列をご参照ください。
※なお、模擬稽古日程の2か月目15日以降は通し稽古~本番と全員参加の期間ですので表の記載から割愛いたしました。

◇上記の条件で稽古参加頻度を調整してみた結果、戯曲A・戯曲Bともに、キャストによっては稽古参加率を7~20%低減できそうだという結果が得られました。各模擬稽古日程表の最下段「全稽古期間に対する必要参加率」がキャスト別の割合一覧です。出演頻度に差がある戯曲であれば、より顕著な参加率の差の結果が出るでしょう。
・必要参加率の計算式=全稽古期間(当日程では30回)を分母、香盤表反映後の各キャストの必要稽古参加回数を分子として割り算

◇主要なキャスト・出番の多いキャストは至極当然、稽古の参加割合はかなり高いものが求められますが、シーンによって出番に差があるキャストについては、稽古に参加してもその日自分の出るシーンの稽古はなかった、という実態が結構あると思われます。そうした状態が改善されることが見込まれます。

◇香盤表を活用し稽古スケジュールに反映する事で、『その日、どのシーンの稽古をするのか』『ふまえて、どのキャストの稽古参加が必要か』という観点でコントロールする事は十分可能という結論が得られたとも言えそうです。これは、役者だけでなく全ての公演関係者にプラスになると思われます。

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