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やってみてだめだったら、辞めていい。

「あなたにとって仕事とはなんですか」と大学4年の就職活動時に聞かれたことがはじまりだった。その時は自分の働きたい会社に合わせて、社会へ貢献していくことや多くの人の役に立つことと言っていた気がする。ただ、当時の私は予め用意した答えを口にしたに過ぎなかったと思う。

遡って高校生のとき。数学の先生が身近にいた大人でとても心に残っている。いつだってにこにこ楽しそうに授業をする。決して普段からにこにこしている訳ではない。計算式を書きながら私たち生徒の方を向いて授業を進めるという中で、彼はなんだか楽しそうでこういう大人になりたいとその時ふわっと思った。

社会に出る前、大学在学中はアルバイトとして働いていた。カフェでコーヒーを淹れ、サンドイッチを作り、接客もした。仕事内容も一緒に働く人もみんな好きだった。たまに店を訪れる本部の人から「働くこと好きなんだね」と言われたことで、私は働くことが好きと認識し、社会人になることへの期待を抱いていたと思う。

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大学卒業後、希望の会社に入社し新生活が始まった。社会人という初めて学生ではない領域に足を踏み入れる。今まで生きてきた世界と同じはずだったのに、私にはとても刺激が強かった。複数のスケジュールが同時に進み、考えながら手を動かし頭の中が常にパンクしていた。徐々にしんどい、つらい、会社に行きたくない、でも行かなければ仕事が…と毎日思うようになり、自分の首をしめるだけしめて、数ヶ月仕事を休むことになった。

仕事を休んで何もしない日々。実家に帰ると、地元に戻らなくて自分のやりたい仕事をしたからこうなったと心ない言葉を浴びて落ち込んだ。その時の私は22歳。自分が思い描いていた社会人とは全く異なり、後何十年もこの生活が続くのかと思うと、とてつもなく長く感じ絶望した。

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それから数ヶ月後、職場復帰した。仕事内容が変わり、一つ一つできることが増え、周りからも頼られるようになり、会社に行きたくないと思うことがいつの間にかなくなっていた。また、職場の人と働くことが心地良いとまで思えるようになっていた。全部周りの人のおかげである。こうしてやっと社会人として楽しく生活できるようになってきた矢先、辞令が出る。予期せぬ出来事だった。


社会人になってから生活も気持ちの振れ幅もジェットコースター並みに激しい。

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転勤して2年経たないうちに仕事を辞めた。他にやりたい仕事があった訳ではないし、次の仕事も決まっていなかった。ただ、自分が苦手だと思う仕事に、成果が見えづらい仕事にどう向き合っていけば良いのか、限界を感じた。

次の仕事に就くまでの数ヶ月、無職のようなフリーターのような生活を送る。入社日まで時間に余裕があったので、宿でアルバイトをしてそこを訪れた人とたくさん話をした。同年代の人もいれば、私より何十年も人生経験を積んでいる人、旅をしている人もいれば、海外に転職して休暇中の人など本当に様々で、それぞれの人生や考え方を知ることができて、言い方は雑だが何してもいいんだなと思うことができた。

転職活動は興味のある仕事を自分で応募する形で進め、最終的に今のところに決めた。前職とは仕事内容も違って、楽しみもあったが漠然とした不安もあり周りの人に相談したところ「やってみてだめだったら、辞めていい」と背中を押され、気が楽になったのを覚えている。そうしようと決めて仕事を始め、もうすぐ一年になる。

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感染症の広がりと自粛期間の長期化により、入社当初から通常通りの仕事はできなかった。社会の情勢に合わせて、何ができるか考えて実行して、私としては落ち着かなかった。でもそれは私だけではなく皆そうで、どんな時も皆でなんとかやってきたような気がする。

先日職場の人に「もうすぐ一年経つけど仕事どう」と聞かれた。「うーん、まあまあかな。いい時もよくない時も、自分ではどうにもできないこともあるし、なんかもやっとしたかんじはあるけど辛くはない」と曖昧に答えた。そうしたら「それが一番いいんじゃないの」と言われて、ジェットコースターのような社会人生活を振り返って少し納得した。

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いま改めて、はたらくってなんだろうと言われたら、生きていくためと答える。現実的な答えでなんの面白みもないが、本心である。なぜ今の仕事なのか、と問われれば興味があるからと答える。働く前と働いてみて、そして数年後答えが変わってくるこの問いはとても考えさせられる。数年後は、今よりも周りを見れるようになって、仕事の先にいる相手や社会のことを考えられるようになれたらと思う。


ここまで読んで頂きありがとうございます。私自身、社会に出てから思うことや悩むこと、この先自分がどこへ進んでいくのかわからなくなることが多くありました。今でもそうです。ただ、今目の前にあることに向き合うことで、確実に少しづつ前へ進んでいけると思っています。これから学校を卒業して社会へ出る人、悩みや色々な思いを抱えている人、一歩踏み出そうとしている人に、「大丈夫」と背中を押せるようなnoteになれば嬉しいです。


#はたらくってなんだろう

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